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国際協力の現場から

国際協力の現場から2016/02/26

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悲しい気持ちと、でも強くならなきゃという気持ちと

史跡訪問の様子

史跡訪問の様子

 2015年12月、フィリピンの農村の若者たち(13~18歳)のためのスタディツアーを実施しました。首都マニラを訪れ、歴史的な名所や博物館を訪れると同時に、都市スラムも訪問し、フィリピン社会の現実を知ってもらうためのツアーです。
 日本で暮らす私たちの多くが、ホームレスの人々の暮らしをよく知らないように、フィリピンの農村の人々の多くも、都市スラムでの暮らしぶりをよく知りません。若者の多くが働き口を求めて村を出ていきますが、仕事に恵まれず都市スラムに行きつくケースが少なくないのが現実です。このスタディツアーは、若者たちの将来設計のヒントにしてもらうこと、そして農村と都市の若者たちの交流を深めることを目的として、毎年実施しています。
 受け入れ側となったのは、マニラ市トンド地区のスラムに暮らす若者たちでした。受け入れを担ってくれた若者に、その感想を尋ねてみました。

「トンドの住人は悪人で怠け者だ、という噂をニュースやラジオで聴いている人もいる。でも、今回彼らには、自分の目でトンドを見てもらえた。本当は、家族のために、みんな一生懸命。現実の姿を見てもらえるので、訪問してもらって良かった。」

「今日来てくれた若者たちは、自分たちと同じように、社会を変えたいと思い、一生堅命勉強し団結している青年たちだと思った。」

「本当のことを言えば、訪問者の国籍関わらず、誰かが自分たちの場所に来る度に、変な気持がしていた。悲しい気持ちと、でも強くならなきゃという、まぜこぜな気持ち。自分たちの状況を見て、可哀想がられた時は傷ついた。それから、表情や動作から、トンドにいるのが嫌そうな様子だったときも。歩きまわって、状況を見ても何もしない訪問者もいる。私たちは『変化を起こしたい』ので、自分たちの様々な話を共有して、訪問者が状況を理解して、行動に移すための手助けをしていることをとても誇りに思う。私たちは訪問者に何も期待はしないけれど、ただ、みんなの生活が良くなるよう、何か変化を起こしてもらいたい。」

 最後のコメントは、深く私に胸に突き刺さってきました。これは、スタディツアーを企画する側、そして参加する側の両方にとって、非常に重いメッセージです。「貧困」や「スラム」を見世物にしてしまっていないか?自らの学びや成長のためだけに、人々の暮らしを消費していないか?常にこのことを自らに問いかけながら活動することを、あらためて突き付けられた瞬間でした。