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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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国際協力の現場から

国際協力の現場から2023/04/17

未来への挑戦2022─アーユスNGO新人賞受賞者に聞く_3


◎活動の大変さ、楽しさ

司会 次に、実際に活動していて辛いなあと思うこともあると思いますが、NGOに関わる前と後でギャップがあったところなど教えていただけますか。

佐久間 転職する前はプロジェクトベースで働いていたので、場所が東京ではあってもプロジェクトをやるのが主な仕事と思っていましたが、NGOって全て自分たちでやると言うか、事業はもちろん、運営やファンドレイジングまで担当しないといけません。現地事務所があるので、ローカルスタッフの人事とか経理とかまで含みます。前の会社だと、決算やバランスシートづくりは経理の人が全てやっていて自分は事業のところしか見てなかったのが、全てを見ないといけないのはすごく新しかったですし、苦労というか、本当に日々学びながらさせていただいているなと思います。

司会 いろんなところを経験して全体をみるって言うのはNGOで大事だって言う話は、これまでも出ていましたよね。
 そういう日々の苦労もあると思うんですけど、やっぱりNGOにいるっていう事は、社会を良くしたいとか、ここを克服したいとかっていうところがあって、「なんでこうなっちゃったんだろう」という割り切れなさや理不尽さ、時には怒りを感じることもあると思います。「自分が活動する意味はここだよな」って普段思うところはどこですか。

割田 レバノンでは、パレスチナ難民やシリア難民など、元々この国の人でない人たちを支援することの難しさがあります。今、国全体が厳しくなっている中で、レバノン人の中には難民の方々をあまり良く思っていない方もいらっしゃったり、緊張感の高まりが年々増していくのを感じます。やはり生活が厳しくなると、人のあまり良くない部分が見えてきたりということもあって、何ていうか人間のよくない部分を見るのは非常に心苦しかったことはありましたね。そんななかで、教育の活動で子どもたちが楽しそうに勉強していたり、子どもたちから未来に対して希望を持ってるといったことを聞いたりするのは、非常に大きな原動力になります。

司会 ダハルさんはいかがでしょう。10年前に日本にいらして、日本語で仕事をずっとされてきて、そこだけでも本当にすごいなと私なんか思ってしまいます。

ダハル みなさんの話ももちろんその通りで、「全部一人でやらないといけないのか」っていうところは、私も結構感じたことですね。繰り返しになりますが、企業では部署があって、この業務はこの部署に任せようと分担されて、自分がやることだけやればいいんですけど、NGOは全て一から十まで自分でやらないといけません。もちろんそれは自分の経験にもつながりますし、スキルアップにもなりますのですごくいいんですけど、私、日本語すごく苦手なんですけど、日本語で文章を書かないといけないのか、とかそういうところは苦労とまでは言わないんですけど、大変だったことですね。

司会 ダハルさんは応募作文で、「現代の社会における根本的な課題の一つはやはり格差で、自分が暮らしていたところもそうだったんだけど、そういう経済的な貧困とか不十分な教育とか途上国の目に見えるような問題っていうのは、実は日本のような先進国でも存在していることをみんなが理解しなきゃいけない」って書いていらっしゃったんだけれど、変えたいと思うこと、普段の原動力になることはありますか。

ダハル そうですね、格差はネパールやバングラデシュだけでなく、世界中に広がっています。「私たちは50年活動しています」と言ってるんですけど、逆に言えばこの「50周年」って本当に成功なのか失敗なのかということもあり、私たちがその根本的な課題を解決できてないからこそ、問題がここまで続いてきている。逆に言えば、全く何も変わってないわけでもないので、私たちの活動のニーズはまだまだあると思います。私は将来ネパールに帰って活動したいと思っていますが、10年、20年して帰ってから、また「教育は必要ですよ」というところから始めるのかっていったら、それは変わっていてほしいなという期待はあります。あとは同じ人間だから、ある程度の基本の権利だったり、基本のサービスはみんな平等に受けられるようになるといいなあと思いますね。

司会 50年の経験というのはすごく重要、一方でNGOにとっての究極の目的は「自分たちの団体がなくなる世界になってほしい」っていうところでもあると思うんだけど、そこを目指すのはすごく大変ですよね。

ダハル そうですね、ある課題を全部解決して明日解散!ってしたいですよね。

司会 次は、良かった点、活動の中で感じる喜びについてもお伺いしたいと思います。

割田 レバノンでメンタルヘルスサポートをやっていて、事業の途中や終了後に、その対象となった方々に、事業がどれだけ役に立ったのか、正しく行われたかってことをインタビューします。お母さんなど大人の方々とグループでお話をするんですが、難民キャンプは狭いコミュニティなので、自分の悩みなどを打ち明けるとそれが広まってしまうなど、本当に誰もが大変な状況のなかで自分だけが弱音を吐くのは最近はよりできにくくなっています。一方、私は明らかに外国人なので、私にはそういったこともオープンに話せるようで、話をひと通り聞いた後に「あなたと話ができたおかげで、このインタビュー自体がメンタルヘルスのサポートなった」という言葉をいただいた時は、これが自分がここにいる意味なのかな、と思いました。

司会 とても大切な役割ですね。佐久間さんはいかがですか。

佐久間 カンボジアでは現地スタッフやボランティアさんが自治体の方々ともいっしょに活動しているんですが、シェアが活動することで、現地の人の活動の幅が広がっていくのは本当に嬉しいなって思います。シェアのいまの活動は、自治体の方々と一緒に集合村単位での予算を使って、離乳食教室を現地の自立や発展を見据えてやっているんですけども、そこの人達が、予算が取れたとか、その予算を使って離乳食教室ができましたとか、それだけじゃなくてボランティアさんの交通費もそこから出せましたとか、着実に進化していっている姿が聞けるのは、ともに活動していて一番嬉しいと思いますね、いつも。

司会 ダハルさんが、本当によかったなと思ったエピソードはなんですか。

ダハル たくさんあります。入職したのは2022年の2月で、ちょうどオミクロン株が流行ってた時期だったんですね。それで物品寄付を仕分けしにボランティアの方々が事務所にいらっしゃるのを、感染拡大防止のためにいったん停止してたんです。在宅ボランティアという形で皆様の自宅に荷物を送るなどして実施してたんですけど、私がボランティアさんに挨拶のメールを書いたら、一週間後ぐらいに結構素敵な手紙などが送られてきたんですよ。私宛の手紙ですよ。これはもうやっていくしかないですよ。
 あとは、支援物品の管理業務をやってますので、仕分けすることも結構あるんですけど、全国からの活動への想いや共感を手紙に書いて送ってくださるんです。本当にもう疲れが取れるぐらい、その手紙見て一日中幸せだなと思えるぐらい。そこが今の一番のやりがいであり一番良かったって思うところですかね。今日は少し辛いなあと思ったところに、皆様の手紙を見るとじゃあ頑張ろうっていう気持ちになります。そこは一番だと私は思っています。

司会 ダハルさんには、授賞式の時にも大きな花束が届きましたが、日本の中のネパール人コミュニティの中でも期待されているところはあるんですか。

ダハル そうです、ありますね。日本語ができない方々もたくさんいらっしゃいますので、そういった方々への支援など、横のつながりでお互いにサポートするなど皆さん日々求めてることがありますし、自分でもできることをやりたいなと思っています。外国にいるから横のつながりを強めて、みんなで助け合っていかないといけないこともたくさんあるんですね。
 先日の花束は、栃木で青年海外協力隊としてネパールに行かれた方々と一緒に国際文化交流などの活動しているチームから送られてきたものです。本当に私はそれがありがたいなと思って、その感謝の気持ちをすぐに伝えたんですけど、本当にその皆様の協力で今までできているからこそ、一緒に今後ともやっていきたいと思っています。

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