国際協力の現場から
国際協力の現場から2023/01/23ツイート
更生保護支援部の活動紹介(アクセプト・インターナショナル)
私たちは、海外事業を通じて培った知見やネットワークを活かしながら、2020年より日本国内の課題解決にも取り組んでいます。今回は、その一つである更生保護支援部についてご報告いたします。
1.更生保護支援部の立ち上げ期の活動
更生保護支援部は、2020年11月より事業を立ち上げ、活動しています。当初は、犯罪や非行をした方が社会に戻る際に生活や更生のサポートを行う民間ボランティアである「保護司」に焦点をあて、保護司の高齢化と担い手不足という課題に対し、担い手創出のための勉強会や保護司との座談会の開催、制度に関する調査・提言活動などを行ってきました。担い手増加に向けた勉強会や座談会を実施し、のべ130名の方に参加いただいたほか、実際に参加者の1名が保護司として就任、4名が推薦のための準備にかかることができました。一方、保護司や専門家と協働するなかで、更生保護制度の外にいる非行少年たちの不足を改めて認識し、2022年1月より、非行や犯罪をした若者に対する相談支援を開始しました。
2.現在の活動内容
2023年1月現在で、更生保護支援部は3つの柱で活動をしています。
- 10〜20代の非行・犯罪をした若者に対する相談支援を含む社会定着支援
- 10〜20代の非行・犯罪に繋がる恐れのある若者に対してのアウトリーチ活動および相談支援
- 一般の方を対象とした啓発啓蒙のためのオンラインゼミ
それぞれの取り組みの詳細をご紹介します。
- 10〜20代の非行・犯罪をした若者に対する相談支援を含む社会定着支援
非行や犯罪をする若者の多くは、生活困窮や虐待経験、知的障がいや精神疾患など様々な生きづらさを抱えています。周りの理解や必要な支援を受けることができずに非行や犯罪につながり、そしてそのレッテルが彼らの抱える問題をより悪化させ、社会復帰、社会定着を困難にする悪循環を引き起こしています。私たちは、この負のサイクルを断ち切り、彼らが周りに頼れる人を持ち、社会のなかで犯罪をすることなく生きていくことができるよう、相談支援を含む社会定着支援を実施しています。2022年1月から相談支援を開始し、非行をした少年4名、非行をする恐れのある少年を1名、刑が決まる前の裁判を待っている若者を2名、計7名とそのご家族を支援しています。少年院や保護観察所、区役所や他の支援団体と連携をしながら、彼らの生活を支えています。
- 10〜20代の非行・犯罪に繋がる恐れのある若者に対してのアウトリーチ活動および相談支援
当事業では、非行、犯罪をした若者に対する支援だけではなく、非行・犯罪に繋がる恐れのある若者に対してもアプローチを行なっており、2022年8月より、新宿歌舞伎町での声かけ活動を始めました。
歌舞伎町に通うなかで、左手に多数のリストカットの跡がある子、売春をして生活費を稼いでいる子、実際に数ヶ月前まで少年院にいた子、家に居場所が無くネットカフェで寝泊まりする子など、周りにいる大人から声をかけられ犯罪に巻き込まれる危うさを抱えながら生活をしている若者と多く出会いました。毎回コミュニケーションをとりながら、困った時に連絡ができるよう相談窓口の紹介をしています。2022年8月の開始から2022年12月までの間に、300名を超える若者に声をかけ相談窓口の紹介をすることができました。
- 一般の方を対象とした啓発啓蒙のためのオンラインゼミ
一般の方を対象に更生保護について共に学び、考えるためのオンラインゼミを開催しています。2022年度は現在のところ合計2回開催しており、第1回目は「保護司」をテーマに保護司の方をお招きし、保護司の活動ややりがいなどをお話しいただきました。第2回は、少年院で働く社会福祉士の方をお招きし、少年院の中での生活や支援についてお話を伺いました。のべ70名近くの方にご参加をいただき、実際に非行をした少年や若者に関わる支援者から話を聞くことができる貴重な機会としてご好評をいただいています。第3回は、2月19日に開催を予定しており、少年院、刑務所に入られていたことのある方をお招きし、刑務所の中での処遇や更生までの道のりなどのお話を伺います。近日中に団体ホームページにイベント情報を掲載いたしますので、ぜひご参加ください。
3.今後の展望
2023年度以降に向けて、これまでの事業に加えて新たに居住支援の開始に向けて準備をしています。というのも、刑務所等の出所者が、帰住先を確保できていない状態で刑期満了となり出所せざるをえないことも少なくなく、国からの委託を受けたNPO法人や社会福祉法人がその事業者となる「自立準備ホーム」が設置されたものの、まだその数は不足しているためです。また、これまでに相談支援を実施してきた少年たちの中にも、住み込みで働いていた職場に定着できず、職と住まいを同時に失った少年、家族との折り合いがつかず家庭に居場所がない少年など、「住居」に関する課題が多くありました。そこで、制度内の支援を担いながらも、そういったものからも取り残されてしまう若者に対して私たち独自の居住支援を実施することを決めました。一人でも多くの支援が必要な若者に出会い、彼らが犯罪をすることなく社会に希望を持って生きていくことができるよう、引き続き支援をしてまいります。