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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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国際協力の現場から

国際協力の現場から2022/06/14

ソマリアの刑務所を出所した対象者との関わりと現在


 この2ヶ月間は、3月26日及び4月で複数回の再放送があったNHK「ザ・ヒューマン」や、5月29日放送の日テレ「NNNドキュメント」にて代表の永井を中心に取り上げられたことを機に、これまで活動を届けられていなかった層にリーチすることができ、さまざまな可能性を感じました。今年度はこうしたメディア露出によって繋がることができた全国のアンバサダー(毎月の支援者)の方々を起点に、オフラインでの講演も積極的に行うことで、海外事業、特にソマリアやイエメンでの取り組みを拡大させ憎しみの連鎖を解いていくべく、賛同の輪を広げていく所存です。

 さて今回は、私たちの取り組みを経て刑務所を出所した対象者(アブディカーディル、24歳)との関わりと現在についてお伝えいたします。

 アブディカーディルは1997年生まれ(24歳)の青年です。生まれ故郷がいわゆるテロ組織アル・シャバーブに支配されたために逆らうことができず、19歳で組織に加入しました。本格的な軍事訓練ののち、3年間兵士としてパトロールや戦闘に関わるなかで組織のイデオロギーに賛同する部分あったそうですが、やがてそれが間違っていたことに気づき、勇気を出して組織から投降(脱退)しました。

 通常、自発的な投降者には政府の更生プログラムが提供されることになっていますが、実際には投降したにもかかわらず逮捕され、刑務所で服役するケースも多く、彼もその1人でした。言い渡された刑期は3年と、比較的短い期間ではありますが、憎悪が渦巻く刑務所での生活を強いられました。そうした背景もあり、彼は刑務所内で不満を募らせ、私たちに対しても投げやりな態度を取る場面もありました。しかし一方で、彼には子どもが2人いることから、どうにかして釈放後は自分でお金を稼いで家族を支えたいという想いもありました。そこで、私たちのジョブマネジメント研修では、彼が希望していたバイクタクシーのドライバーになるアイデアを具体的なプランに落とし込んでいきました。テロ組織の思想に触れてきた彼ですが、元々もっている個人的な強い想いに紐づけることは、モチベーションを継続する上でも重要です。

ジョブマネジメント研修を受けるアブディカーディル

 こうして刑務所内でさまざまなプログラムを修了したアブディカーディルは、2022年1月に晴れて釈放を迎えました。身元引受人になったのは彼の母親でしたが、彼女は私たちに感謝を伝えつつも、日本人との縁はここで終わらせるようアブディカーディルに言いました。母親は私たちが外国人であることから警戒していたのですが、アブディカーディルは彼女に対して、私たち日本人は敵ではなく、むしろ「いい外国人」だということを笑顔で説明してくれる場面もありました。

釈放後に新たな人生を歩むアブディカーディルと代表・永井

 こうした出来事などを通じて改めて確信したことは、テロ組織との直接対話ができない中でも、一人一人との対話が糸口になる、ということです。釈放後も定期的にモニタリング・カウンセリングを行うことで関係を継続してきましたが、4月には刑務所内で語っていた夢を実現し、バイクタクシーのドライバーとして首都モガディシュ中を走っています。バイクの購入にあたっては、親戚からの資金援助と、私たちが社会復帰準備金及びその後のフォローアップとして提供した合計600ドルも活用してくれました。

 そして5月には、彼がソマリアのメディアにインタビューされた動画が送られてきました。モガディシュの道路は交通整備がうまくできていないことから渋滞が激しく、舗装されていない道も多々あるためドライバーとしては大変なことが多いという現状と、政府に対してその改善を求める発言をしていました。今まさに1人の責任ある市民としての人生を歩んでいることを象徴しているようでした。

インタビューの様子

 アブディカーディルのように人生をやり直す若者を今後も増やしていくべく、取り組みを進めてまいります。どうぞ引き続き温かいご支援のほど、よろしくお願いいたします。