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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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国際協力の現場から

国際協力の現場から2018/11/30

移住連:外国人移住者って誰?


 はじめまして。移住者と連帯する全国ネットワーク専従の崔洙連(チェスウヨン)と申します。アーユスの枝木さんからブレークスルー支援事業報告の機会をいただきましたので、移住連が実施している移住者の権利キャンペーン2020「―ここにいる koko ni iru―」について紹介させていただきます。

 いきなりですが、みなさんは移住者を取り巻く状況についてご存知でしょうか。最近では今国会で議論されている「新たな外国人材の受入れ」が話題になっていますね。メディアでも報道されているように、この入管法改定の議論では、これが移民政策か否かの攻防、また伴って、受け入れる外国人は「移民」か否かの議論が繰り広げられています。
こうした議論からは、そもそも日本に暮らす外国人移住者がいなかったような印象を受けてしまいそうですが、果たして本当にそうなのでしょうか。その答えはNOです。この社会にはずっと前から外国人移住者が暮らしていて、もうこの社会の一部になっています(この私のように!笑)。

 本題である事業報告の前に、少し背景説明をしましょう。
 日本に暮らす外国人が増え始めたのは1980年代からです。その頃はバブル経済にみえるような好景気のなか、人手不足になった日本に出稼ぎにきたり、国際結婚などによって日本に暮らす外国人の数が増え始めました。その頃は、オーバーステイの非正規滞在者として在留する外国人が多かったのが特徴です。
 そのバブル経済がはじけた後は、オーバーステイに対する取り締まりが強化され、非正規滞在者の数が減らされていきました。それに代るように受け入れられたのが、戦前にブラジルやペルーに出稼ぎに行っていた日本人の子孫である日系中南米人でした。この日系の方々が、非正規滞在者に代わって日本の産業を下支えする労働者として活躍してくれたのです。
 その後2008年にアメリカでリーマン・ショックが起こった際には、日本への影響も大きく、多くの日系人が職を失うなどの事態となり、在留数を減らしていきました。ここで日系人にとって代わって技能実習制度による実習生の数が増え始めたのです(こちら制度も90年代から制度の変遷がありますが、長くなりますのでここでは割愛します)。この技能実習制度下で起きている、賃金未払い、労働災害、パワハラ・セクハラ、強制帰国などの問題は皆さんも耳にしたことがあるのではないでしょうか。

 このように日本は80年代から、さまざまな形で外国人を受け入れてきました。2018年6月現在での日本に定住する外国人は256万人に達しています。こうした方々の存在なしにはもう私たちの生活は成り立たないほど(コンビニのお弁当製造やクリーニング、食卓を彩る野菜やこれからの季節においしい牡蛎、和食に欠かせない鰹節、災害からの復興や東京オリパラ開催に向けた建設需要などなど、挙げ始めたらキリがありません!)。また、今では学校の教室を見渡せば多くの外国ルーツの子どもや若者がいます。こうしたところから分かるように、移住者は既に共に暮らす社会の一員として「ここにいる」のです。

 その中で、移住者を取り巻く課題のすそ野も広がっています。外国にルーツを持つ子ども・若者の言語や教育、進学、就職などの問題や、国際結婚などをきっかけとした移住女性のDVの問題、そして移住者の高齢化も起きています。しかし80年代から日本政府の方針は移住者の入国・在留「管理」が中心となっており、30年間進展していません。日本に暮らす移住者をサポートするような制度は未整備のままです。こうした状況は、多文化共生社会の実現に向け、支援や権利を保障するような制度整備の必要性を如実に表しています。
 また、これまでの説明で気づいた方もいるかもしれませんが、今に至るまで日本政府は正式に「外国人労働者」として外国人を受け入れてはきませんでした。80年代からの変遷を説明したように、非正規滞在、日系人、そして技能実習生や留学生など、「労働者」として公式に受け入れず、さまざまな建前をつけて受け入れてきたために、その様相も複雑化し、問題も拡大・深化しています。こうした課題が積み重なっていく中で、日本政府は、これらの解決を前に「新たな外国人材受入れ」へと舵を切ったのです。

 次回は、このような状況の中で80年代から活動している私たちのブレークスルーである事業移住者の権利キャンペーン2020「―ここにいる koko ni iru―」についてご紹介いたします! (崔洙連)