国際協力の現場から
国際協力の現場から2018/03/02ツイート
FoE:世論が重要、意見を出そう!「エネルギー基本計画」見直し
2017年8月からスタートした国の「エネルギー基本計画」見直しの議論が本格化しています。経済産業省の審議会「基本政策分科会」で主な議論が、また並行して、新たに設置された「エネルギー情勢懇談会」(同8月30日開始)で、2050年を見据えた議論を行いながら、2018年夏頃までにエネルギー基本計画を見直すとされています。
原子力優遇のゆがんだ議論
2つの会議では、まずここ数年間で起こっている変化を確認、その後再エネや省エネ、原子力、化石燃料といったテーマごとに議論が行われています。大きな問題は、いまだに「資源の乏しいわが国」という表現が繰り返され、原発事故の被害状況や原子力のコストについては過小評価のデータが使われ、原子力は3E(環境、経済、安定供給)に優れる、という前提のもとに議論が行われていることです。
さらに、審議会の委員は産業界や原子力や化石燃料に関係する研究機関のメンバーが多数であり、消費者・市民の立場を代表する委員がごく少数です。
そのため現在の議論は、「原子力のリスクについて国民にどう説明し理解を得ていくか」「再エネも進めるが限界があるため、原子力も維持する必要がある」「何もしなければ脱原発に向かってしまうためが、維持するための対策を取るべきではないか」といった方向なのです。
福島第一原発事故による被害・リスクの顕在化とともに電力自由化による競争によって、原子力は民間企業が経済合理性に基づいて維持推進できる電源ではないことが明らかになっています。だからこそ国の主導と国による支援が必要だということで、電力業界や一部の産業界からは、エネルギー基本計画に原発の新増設・リプレースをも書き込むべきという声が上がっています。
私たちが向かうべき方向
原発は事故のリスクがはかり知れないだけでなく、平常運転時にも放射能汚染や被ばく労働を伴います。東電福島第一原発事故の被害・苦悩はいまだ続いています。また、パリ協定を受けて脱石炭・再生可能エネルギー社会へと向かう世界の動きに逆行し、40基以上もの石炭火力発電新設計画を抱えていることも大きな問題です。
しかし日本でも、現実は変化しています。震災を契機に省エネの取り組みは進み、照明や空調の高効率化も進んでいます。建築物の断熱や効率化の分野では今後さらに大きな余地があります。エネルギー消費量は2011年以降すでに減少に転じています。また2014年以降は、原発がほとんど稼働していないにも関わらずCO2排出量も減少しています。省エネルギーと再生可能エネルギーの進展がその理由です。
再生可能エネルギーは、2012年の固定価格買取制度の導入で大きく伸びています。大企業主導のプロジェクトも多いものの、注目すべきは自治体や市民、地元企業など、地域が主体となっているプロジェクトです。再エネは地域分散型エネルギー社会への転換の大きなカギを握っており、持続可能性と地域主導を重視して進めれば、もはや日本は「資源に乏しい」どころか、各地にゆたかな資源と可能性があふれているのです。
市民の意見は反映されるのか?
世論調査などでは「脱原発」「再稼働反対」の声が推進を大きく上回り、 簡単に原発推進に転換できるものではありません。このことは審議会でも課題として挙げられています。この声を無視できないようさらに大きくしていく必要があります。2018年1月9日より、資源エネルギー庁でも意見募集がはじまりました。ぜひここにも、一つでも多くの声を届けましょう。
FoE Japanからも2月28日、脱原発を前提としたエネルギー政策への転換を求め意見を提出しました。
3月から4月にかけて、取りまとめがされ、その後パブリックコメントにかかる見通しです。しかしパブコメだけでなく、「全国で意見聴取会などの開催」も求めていきます。(吉田明子)
▼FoE Japan「エネルギー基本計画見直しに関する意見」
▼エネルギー政策に関する「意見箱」
▼エネルギー基本計画緊急署名「原発ゼロで日本の未来を切り拓く」 ★今すぐ署名する(Change.org)
▼参考資料などはこちら