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国際協力の現場から

国際協力の現場から2018/01/25

FoE:世界から取り残される日本?!石炭火力発電推進の実態


世界から取り残される日本?!石炭火力発電推進の実態

 2017年11月、COP23(国連気候変動枠組条約締約国会議)の会場では、日本政府の石炭火力発電推進に対する強い批判の声が、各国やNGO等から強く発せられていました。
 国際NGOが気候変動対策に消極的な国に贈る「化石賞」もアジアへの石炭火力発電や原発輸出や国内での石炭火力新増設を理由に受賞、日本のメディアも多数、「脱炭素」に向けて加速する世界の流れと孤立する日本の状況を報じました。

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なぜ、今石炭火力?
 震災後、日本のエネルギーをめぐる状況は大きく変わりました。原子力発電の再稼働は見通しにくくなり、電力システム改革が議論されました。
 この流れの中で電力会社各社や大手の新電力は、競争力を確保するために、安く電気をつくれる発電できる自社の電源を求めるようになります。そこで注目されたのが、天然ガスや石油に比べて安価な石炭火力発電です。
 2016 年から始まった電力小売全面自由化では、多くの新規電力会社が参入し激しい競争が起こるようになりました。各社とも「少しでも安く」販売しようとし、そのために安価な電源が必要となったのです。
 2018年1月現在、日本にはいまだに46基(うち5基はすでに稼働)、原発約20基分(約2000万kW)にも相当する石炭火力発電所の新設計画が日本全国にひしめいています。「高効率」「クリーン」と言われますが、石炭火力発電は最新のものであってもSOx、NOxや水銀、PM2.5を排出し、決してクリーンではありません。周辺地域では大気汚染・健康影響が懸念されます。また温室効果ガス排出も、「高効率」といわれるものでも天然ガスの約2倍です。
 電力自由化で、一般家庭も電力会社を選べるようになりました。しかし良いことばかりではありません。競争が生まれることで、各社とも「少しでも安く」販売しようとし、そのために安価な電源を求めています。そこで、電力システム改革の議論が始まった2012年以降、燃料費が安いとされる石炭火力発電の新規建設計画が相次いでいます。

foe201712_2 2017年10月、FoE Japanは「蘇我⽯炭⽕⼒発電所計画を考える会」とともに、蘇我石炭火力発電所の建設予定地(千葉市蘇我)をめぐり、建設に反対をするアクションを行いました。JFEスチールの敷地内に、中国電力とJFEスチールが出資してあらたに石炭火力発電所を建設する計画です。

 千葉みなと駅近くのポートタワーからは、敷地をよく見渡すことができますが、石炭やスラグなどが覆いなどなく野ざらしに積まれています。近隣のマンションに住む方によれば、風で黒い粉じんが飛んできて、ベランダや窓にたまり、生活にも支障があると言います。千葉市はもともと、川崎製鉄(現JFEスチール)による大気汚染公害が深刻な街でした。粉じん被害の問題が今もある中で、さらに石炭火力発電所を建設するのか?地元の住民グループが声を上げ始めています。
詳細報告はこちら

 東京湾にはほかにも、袖ケ浦市、神奈川県横須賀市にも計画があり、首都圏に住む私たちも他人ごとではありません。

 一方で世界は、脱石炭、気候変動を止めるために省エネ・再生可能エネルギーにシフトする方向に動いています。2016年11月にはパリ協定が発効し、日本も批准しています。パリ協定では、世界の気温上昇を2100年までに2℃未満、できれば1.5℃以下に抑えていくために、いま各国が出している目標を5年ごとに見直して強化することが合意されています。
 仮に日本で40基以上の石炭火力発電所がこれから建設されるとすれば、国際的にも先進国としての責任を放棄することとなってしまいます。電力業界は、「非化石電源」を活用し、発電1kWhあたりの温室効果ガスの排出を天然ガスレベルに抑えていくとしていますが、この「非化石電源」には原子力が含まれます。この大義名分により、原子力の再稼働や40年超の運転も推進されようとしているのです。
 ▼石炭火力問題についてはこちら

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 消費者の「安さ」の選択が、石炭火力建設も原発再稼働も後押ししてしまうかも・・・でもまだ遅くありません。2017年には千葉県市原市での石炭火力建設計画など4つが中止になりました。事業者も、世界の脱石炭の流れや市民の反対で計画を見直さざるをえなくなることは十分に考えられます。電気の選択は、安さだけでなく再エネを重視する電力会社に!
▼パワーシフト・キャンペーン 
 吉田明子(国際環境NGO FoE Japan)