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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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国際協力の現場から

国際協力の現場から2017/09/06

JCBL:地雷犠牲者ゼロを目指して(続き)


地雷犠牲者ゼロを目指して―条約を支えたサバイバーの軌跡(つづき)

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左から、チャンナレット氏・JCBL現代表の清水・JCBL名誉顧問の北川

『20年経つ今、これからの挑戦について2つお話したいと思います。

 1つ目は、アジア地域における条約未加盟国にどう向き合っていくかということです。東南アジア地域ではカンボジア、タイ、フィリピン、マレーシアなどの国が加盟していますが、まだ加盟していない国が多い地域でもあります。国によっては条約に署名したもののまだ加盟していなかったり、加盟していてもしっかりとした行動が伴っていなかったりするので、ひとつひとつ確認をしていきたいと思います。私たちは、2025年までに全ての目的を達成しようという期限目標を設定しています。(※1)
 2つ目は、障害者の生活の質の向上についてです。カンボジアは農業国として、人々は土地に根差した生活をしていましたが、今は外国に出稼ぎに行く人の数が急増しています。出稼ぎに加え、カンボジア国内に新しくできた韓国や中国の企業に勤める人の数も増えています。町を中心に次々と土地が外国企業に買収され、大きな看板がたくさん立てられ、人々の農地は他の用途に代わっていっています。日本の皆さんが国境を越えて仕事を探しにいくことはおそらくあまりないでしょう。カンボジアに暮らす障害を持った人々が暮らしていくためにはどうすれば良いでしょうか。93~95年頃はアンコールワットやオールドマーケットの周りで障害のある物乞いの人が沢山見られましたが、今は見られません。町の景観に悪いということで政府に排除されました。彼らの生活はこれからどのように立て直したら良いでしょうか。多くのNGOもカンボジアから去り始めています。政府の動きは依然として遅い中、我々はどのような活動をしていけばいいのでしょうか。私は政府に人々の暮らしに向き合うよう訴え続けています。今日はたくさんの学生の方もいらしているので皆さまにお願いしたいことがあります。このような現実を、学校の先生やご両親やお友達に皆さまから是非伝えてほしいです。2025年までに完遂するという目標に向かってまだやらなければならないことが沢山あります。2025年以降も、地雷により障害を負った方やその家族の苦労がなくなるわけではありません。』

 この後は、質疑応答が続きました。
『カンボジアのバリアフリーは都市部でも農村部も足りない部分が沢山あります。農村部は人々の助け合いが強いので、都市部よりもいくらかマシかもしれません。』
『都市部はどんどん発展しているように見えますが、一方で多くの人が土地を失っています。貧しい人や障害を持った人は本当に困ったときに銀行からお金を借ります。しかしお金を返すときにどうやって返せばいいのでしょうか。結局は土地を手放すしかありません。そして手放された土地を外国の企業が買い漁ります。そのような外からくる経済の勢いと厳しい状況にいる人たちの生活のギャップというのはとても耐えがたいものがあります。加速する状況を我々はどう止めたらいいのでしょうか。出稼ぎに行かなければならない人々もいますし、都市部のホテルでは沢山の若いカンボジアの人たちが働いているのが見られます。ただそのホテルはカンボジアに属しているものではなく、外国の資本でできています。これがいまの経済のひとつの姿です。シェムリアップには立派なホテルが沢山建っていますが、それらほとんどがカンボジアには属していません。日本の資本のものもあります。観光客がそこに集まってしまい、カンボジアの人たちにはお金は落ちないという問題もあります。』

 チャンナレット氏はこれまで何度か義足を作った方が良いのではと言われたことがあるそうです。しかし自分自身の生活よりも、カンボジアの子どもたちが大事であり、彼らが十分に食べるものがあるかが最大の関心事であると繰り返し仰っていました。次世代のために自分たちは今もっと頑張らなければいけないのだという強い思いが溢れる講演でした。(幸坂説子)

※1 2014年にマプトで採択された「マプト+15宣言」2025年までに条約で定めたすべての課題を完結させようという目標が謳われている。

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2025年までに最終ゴールにたどり着くためには、締約国の意識と積極的な参加、そしてそれを支える市民社会の関心の維持にかかっている