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国際協力の現場から

国際協力の現場から2017/05/25

JCBL:クラスター爆弾廃絶に向けて―投融資禁止キャンペーン


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 はじめまして。今年4月より、NGO強化支援を受けることになりました、地雷廃絶日本キャンペーン(JCBL)の幸坂です。JCBLは、対人地雷やクラスター爆弾の廃絶を目指して活動しています。

◆クラスター爆弾とは

柔らかい地面の上に落ちると、爆発せずに不発弾になってしまう確率が高い。 写真は米国製の空中投下型クラスター爆弾の子爆弾(BLU-97)撮影:JOHN RODSTEAD

柔らかい地面の上に落ちると、爆発せずに不発弾になってしまう確率が高い。
写真は米国製の空中投下型クラスター爆弾の子爆弾(BLU-97)撮影:JOHN RODSTEAD

 クラスター爆弾は、親爆弾(コンテナー)に数十から数百個の子爆弾が入った爆弾です。コンテナーが上空で開き、中の子爆弾がばら撒かれると、広い場所が一気に爆撃されます。また、爆発せずに不発弾として地上に残る子爆弾も多く、紛争後の生活の再建にも大きな脅威となります。被害者の大多数は市民で、2015年は被害者数のうち97%が一般市民でした。(※1)子爆弾は片手でひろえるほど小さく、様々な形や色をしたものがあるため、特に子どもの興味を惹いてしまいます。近年も、シリアやロシア、サウジアラビアなどが使用したと報告されています。
 JCBLはクラスター爆弾禁止条約(通称オスロ条約)の普遍化や、クラスター爆弾の製造に関わる企業への投融資を禁止するキャンペーンを行っています。今回はこの投融資禁止キャンペーンについてご報告をしたいと思います。

◆クラスター爆弾への投資の実態

2016年6月の改訂版より。158の金融機関が、28億ドルも投融資している!

2016年6月の改訂版より。158の金融機関が、28億ドルも投融資している!

 世界では、158の金融機関が、280億ドル(約2兆8000億円)をクラスター爆弾の製造企業に投融資しています。これは、2016年6月に発表された報告書『クラスター爆弾への世界の投資―共通する責任(※2)』で明らかになっています。この報告書はオランダのNGO、PAX(パックス)が発表したもので、2009年に初版が発行されて以降、約1年おきに改訂されています。クラスター爆弾を製造している企業に、世界の金融機関がどれだけ投資・融資を行っているかについて、詳細な分析が報告されています。

◆日本の金融機関、そして公的年金も投融資しています
 報告書では、クラスター爆弾製造企業に投融資(転換社債の所有・運用、シンジケート・ローン、株式の所有・運用、株券の裏書、社債の裏書など含む)をしている機関を「不名誉リスト(Hall of Shame)」、投融資を禁止している機関を「名誉リスト(Hall of Fame)」、取り組みは進めているものの不十分な機関を「次点リスト(Runners-up)」 として公表しています。
 とても残念なことに、この「不名誉リスト」に日本の金融機関も名を連ねています。メガバンクと呼ばれる大手金融機関です。「名誉リスト」には日本の金融機関は無く、前々回の改訂版からは「次点リスト」に三井住友信託銀行が載っています。
 日本は、2010年8月、クラスター爆弾禁止条約の発効と同時に、締約国となっています。条約の発効直前には三大メガバンクが内規で投融資を禁じました。また、同年10月には全国銀行協会がクラスター爆弾の製造を資金使途とする与信を行なわない旨を発表しました。 「不名誉リスト」入りしている金融機関は、条約と金融機関の責任を、あくまでクラスター爆弾の「製造を資金使途とする与信」と狭義に解釈することによって、クラスター爆弾を製造し続けている企業との関係を継続し、間接的にクラスター爆弾の製造を容認する側に 立ち続けているのです。
 先日は、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がクラスター爆弾製造企業の株式を保有していることも明らかになりました。政府の答弁書には「クラスター爆弾禁止法によってクラスター爆弾の製造・所持等の規制を定めているが、クラスター爆弾禁止法はGPIFがクラスター弾を製造している外国企業の株式を保有することを禁止しているものではない」と書かれています。一方、「諸外国では、特定の企業の株式を公的年金の積立金の運用における投資の対象外とする措置を講じている事例があると承知している」とも書かれています。私たちは、金融機関は選べても、公的年金は選べません。承知するのみではなく、日本の公的年金も投資対象から外す措置をしてほしいものです。

◆JCBLの取り組み
JCBLでは2008年以来、「私のお金、私の責任」というキャンペーンを通じて問題提起を行ってきました。きっかけは、クラスター爆弾を製造している企業に対して投資・融資する金融機関の責任を問う世界的キャンペーン(Stop Explosive Investments)の立ち上げで、JCBLもその一員として日本の金融機関に働きかけてきました。これまで大手金融機関等を対象に行ってきましたが、今後は大手だけではなく、地域の信用金庫や信用組合などにも対象を広げ、さらに活動を深めていく予定です。今年の3月15日にアーユスと共催で開催したシンポジウムでは、預金者である私たち市民が声を上げて活動していくことが、成果を上げるために重要であることを改めて確認しました。

◆『クラスター爆弾への世界の投資―共通する責任』最新版が、5月に東京で発表されました

2016年6月の改訂版の表紙。最新版の発表はもうすぐです!

2016年6月の改訂版の表紙。最新版の発表はもうすぐです!

 前述した報告書『クラスター爆弾への世界の投資―共通する責任』の最新版が、2017年5月23日に発行されました。今回の最新版は、PAXやICBL-CMCの方が来日し、東京で記者会見が行われました。発表に関連して、JCBLでは議員や金融機関に向けた働きかけもしていきます。欧州で広がりが見られるESG投資の流れを日本にも広めるべく、これからも活動に取り組んでいきます。是非ご注目ください。(幸坂説子)

(※1)クラスター爆弾モニター報告2016年版(Cluster munitions monitor 2016)下記のサイトよりダウンロード可能:http://www.the-monitor.org/en-gb/our-research/cluster-munition-monitor.aspx
(※2)正式名称は World Investment in Cluster Munitions—A Shared Responsibility
オランダのNGO「パックス(PAX)」とベルギーのNGO「フェアーフィン(FairFin)」 が2009年以降、随時改訂版を発行している。下記のサイトよりダウンロード可能:

http:// www.stopexplosiveinvestments.org/