国際協力の現場から
国際協力の現場から2016/09/27ツイート
PLAS:1人の思いが強固で行動を伴うビジョンとなる
今回のレポートでは、プラス事務局長の小島が米国ボストンにてフェローとして参加している女性リーダー育成プログラム「JWLI (Japanese Women’s Leadership Initiative)」についてお伝えします。
JWLIは、「日本社会に良い社会変革をもたらす活動を実践する女性リーダーの育成」を目的にした、日本女性を対象とするフェローシッププログラムです。公募で選ばれたフェローは、ボストンに拠点を持つNPOを訪問しながら米国での非営利組織のマネジメント事例を学び、また、アメリカでの社会起業家研修でトップ10に選ばれた、シモンズカレッジ経営大学院での管理職女性を対象にしたリーダーシップ研修(SLW:Strategic Leadership for Women)に参加しながら、アメリカにおける社会貢献の在り方と、女性のリーダーシップについて学ぶ4週間です。詳細はこちらのページ。
昨週に参加したSLWでは、NASAやフィデリティ証券、マスミューチュアル生命など大手企業から参加した女性管理職25名と共に、組織の中でリーダーシップを発揮しながら良い変革を起こすために求められるリーダーシップを行動様式に落とし込み、ワークショップや寸劇、課題図書など様々なアクティビティを通して学びました。
(pic2)研修の様子。一方的なレクチャーではなく、ディスカッションがメイン。
大手企業の管理職を念頭に置いた研修ではありましたが、NGOで組織を率いる自分にとっても学びが多い1週間でした。事前に個々人が所属する組織のメンバー10名前後に依頼した、『LPI360°』(Leadershipに関する360度評価。上司や部下・同僚や仕事上で関連する人など各方面の人が被評価者を評価する手法)の結果をもとに、グループでディスカッションしたり、コーチングを受けたりすることで、リーダーとしての自分の強み・弱み、社会的成果を出すために求められている自分の役割や可能性を鮮明に認識することができました。
オンラインでPLASスタッフ、理事、インターン、ボランティア8名に依頼した評価をまとめた『LPI360°』 | リーダーとして必要な5つの行動様式について評価をもらいました。NGOの中でこうした多面評価を取り入れる団体は少ないようですが、個々のスタッフ育成につながるツールだと実感。 |
「ビジョンと女性」というセッションでは、米国においても女性が組織の中でリーダーシップを発揮するのを阻む見えない圧力によって昇進を妨げられたリ、子育てとの両立が難しくキャリアを諦める経験をクラスメートの多くが経験していたことを知りました。米国の主要な上場企業では役員層のうち女性は約20%、日本では約3%、数字の大小はありますが、「ガラスの天井問題」は日米において共通の課題なのだと感じました。一方で、日本の外務とJANICが共同で調査・発行した『数字でみるNGO 2016』によると、日本のNGOの代表職のうち40%が女性です。こうした視点でとらえると、日本のNGO業界は女性がリーダーシップを発揮しながら、社会課題の解決に取り組むことができるフィールドなのではないかと改めて感じました。
SLWでは、成果を最大化するためのチームビルディングの手法について、ワークショップを通して体験・議論し、組織のフェーズや外部環境、メンバーの能力やモチベーションなど様々な要因を考慮しながら、最適なリーダーシップ行動は何かを議論するセッションもあり、自団体に当てはめながら、「一人ひとりの強みを活かすにはどんな基盤やコミュニケーションが必要だろうか」と深く考えました。
最後に、組織において「ビジョン」がいかに重要かについて議論するセッションに参加。多くの人を動かすビジョンは、どのように形成され、伝播し、社会を変えていくのか。個人の純粋な思いから生まれたビジョンが、やがて社会を変えた事例を西アフリカ・リベリアのドキュメンタリー映画(『Pray the Devil Back to Hell』(邦題:『内戦を終わらせた女たち~リベリア~』)を通して学びました。(*長きに渡ったリベリア内戦の中で、女性たちの静かな抵抗が和平を実現した道のりを描いた作品。)
「平和に暮らしたい」という一人の女性から生まれた願いが、「子どもたちが平和に生きられる社会をつくりたい」というリベリア女性にとって共通のビジョンへと変わり、宗教や年代を超えて多様な人々を巻きこむ過程でより強固で行動を伴うビジョンとなり、変化の原動力となった事例から、PLASのミッション・ビジョンの在り方や、私自身のリーダーシップについて多くの示唆を得ました。
「ビジョン、ミッション」が活動の基盤となり、実現したい社会像を掲げ、多様なステークホルダーを巻きこみ、社会的成果を求められるNGOの現場にこそ、こうしたリーダーシップ研修が機能するのではないかと考えています。