国際協力の現場から
国際協力の現場から2016/05/11ツイート
FoE:終わらない原発事故
2016年。今年は福島第一原発事故から5年、チェルノブイリ原発事故から30年という節目の年です。世界各地でメモリアル・イベントが開催されています。
福島では、5年たった今も、原発事故は終わっていません。
福島県の県民健康調査によって見つかった小児甲状腺がんは、2015年12月末現在で疑い含めて166人(対象36万人)にのぼっており、100万人に1~2人という通常の割合とくらべて明らかに多発しています。
年間20ミリシーベルトという、放射線管理区域(年間5ミリシーベルト相当)をはるかに越える避難区域の基準は今も変わらず、現在の問題は避難指示の解除と賠償の打ち切りです。2017年3月には帰宅困難区域以外の避難指示が解除され、その翌年には賠償が打ち切られるため、避難生活をしている人たちは、帰還するのか、賠償なしで生活するのかの二択を迫られることになります。避難区域外から「自主避難」している人たちへの各自治体での住宅の無償提供(災害救助法による)も、2017年3月から順次打ち切り(減額)の方向です。
事故から30年後のチェルノブイリ周辺国でも、深刻な状況は続きます。FoE Japanが2015年春に訪れたベラルーシでも、公式には「チェルノブイリ原発事故は収束し、復興・発展している」と語られており、独裁政権のもとで異論を唱えるのが難しい状況です。しかし、心臓疾患やさまざまながん、若者や大人も含めた甲状腺がんや甲状腺の病気など、健康影響は明らかで、多数の人が何らかの病気を抱えています。
今も高濃度に汚染されているきのこやベリー類、肉類などは、伝統的な日常の食事に欠かせない食材であり、慣習や経済状況から、自家栽培や自家採取したものを食べている人も多くいます。この食生活が30年にわたって続けられてきたことを思うと、胸が痛みます。ただ、厳しい状況下でも子どもたちの保養や市民による放射線測定、放射性物質を排出するためのペクチンの提供などが続けられていることは、一筋の希望です。
原発事故から5年の節目の年。健康被害をいかに食い止めるか、避難者や福島の在住者の生活保障をどうするか、そして今後の原発・エネルギー政策をどうするか。再生可能エネルギー社会に転換できるのか。
私たちの前には、まだまだ取り組むべき課題があります。(吉田明子)
●ベラルーシ視察報告書「みらいへのかけはし」―チェルノブイリ原発事故の経験から学ぶ