国際協力の現場から
国際協力の現場から2016/03/03ツイート
FoE:いよいよ始まる電力小売全面自由化
いよいよ始まる電力小売全面自由化
2016年4月からいよいよ始まる電力小売全面自由化。その市場規模は8兆円、うち約7.5兆円は、一般家庭です。いまはすべて地域の電力会社に支払われているこのお金、再生可能エネルギーを重視する電力会社にどれだけ、振りかえられるか。 今こそ、市民・消費者が力を発揮するときです。安さだけで選ぶのではなく、環境に配慮した電気、再生可能エネルギーの電気を使いたいという人もたくさんいます。
2016年がスタートしてから、新電力会社の料金メニューが次々と発表され、メディアでも様々な形で報道されています。ただ、今のところ多くは価格やサービスに注目するものです。私たちは本当に、再生可能エネルギーの電気を選べるのでしょうか? 大手の新電力ばかりではなく、地域や市民の再生可能エネルギーを重視するビジョンを持つ電力会社も複数出てきています。ただ、資本力・宣伝力では大手とは圧倒的な差があるため、なかなか私たちのところに情報が伝わってこないかもしれません。そのような電力会社を消費者の声で応援していく必要があります。
◆小売全面自由化への期待と懸念
そもそも、日本のエネルギー政策は、2014年のエネルギー基本計画、2015年の長期エネルギー需給見通しで示されているように、原発・石炭火力を重視するものです(2030年に原発20〜22%、石炭火力26%)。
2015年12月のCOP21パリ会議では、すでに多くの被害をもたらしている気候変動を止めていく必要性が世界で合意されました。日本の原発・石炭火力推進(=省エネ、再エネは不十分)の方向は、この合意にもまったく逆行するものです。
一方で、電力小売全面自由化で、価格競争が起きるため、「価格が安い」とされている石炭火力発電所の新規建設計画が、ここ5年で非常に増えています。気候ネットワークの「石炭火力発電所ウォッチ」によれば、現在47基、2250万キロワット(原発20基分以上!)の計画があり、これらがすべて建設されれば「2030年に石炭26%」の量さえも超えてしまいます。
電力業界も自主的に「温暖化対策」を行うことになっていますが、その内容は、石炭火力発電を新増設する一方で、海外からのクレジット購入や「非化石電源」で相殺しようというものです。「非化石電源」とは再生可能エネルギーだけでなく原発も含むものです。小売全面自由化で「安さ」ばかりが追求されると、原発と石炭火力への流れをさらに加速してしまうことが懸念されます。
だからこそ、大きな構造を変えていくためには、持続可能な社会をつくるビジョンをもって省エネルギー、再生可能エネルギーを重視する電力会社を後押ししていく必要があるのです。
◆再生可能エネルギーを重視する電力会社とは?
では、「自然エネルギーを重視する」電力会社とはどのようなものでしょうか?注目すべきポイントをまとめました。
1.電源構成や環境負荷、などの情報を一般消費者にわかるように開示していること
2.再生可能エネルギーの発電設備(FITを含む)からの調達を中心とすること
3.原子力発電所や石炭火力発電所からの調達はしないこと(常時バックアップ分は除く)
4.地域や市民による再生可能エネルギー発電設備を重視している
5.大手電力会社と資本関係がないこと(子会社や主要株主でない)
これらの5つのポイントを満たすよう、鋭意準備中の電力会社が、少数ながらも現れています。そこで、そのような電力会社の情報を可視化し、後押しするために、消費者団体や環境団体でパワーシフト・キャンペーンを立ち上げました(2015年3月)。
◆具体的にどういう電力会社があるの?
経済産業省に小売電気事業として申請をした電力会社は、300者以上(申請中を含む)であり、電力取引監視等委員会のウェブサイトで、登録事業者のリストを見ることができます。ただ、このリストや会社のウェブサイトの内容だけでは、会社の姿勢や現状など、必ずしも十分に知ることはできません。そこで、キャンペーンは、特に自治体系、生協系、再生可能エネルギー事業を母体とするところなどに注目し、訪問ヒアリングを行っています。キャンペーンの重視する「5つのポイント」にそった方針を相互に確認できたところについて、「苦労していること」や「将来のビジョン」も含めてウェブサイトで紹介しています。2016年2月現在12社、ほかにも注目しているところが複数あり、今後追加していきます。 パワーシフト・キャンペーン「電力会社紹介」
◆実際にはどこに乗り換えればいいの?
ただ、4月からすぐに切り替え可能な「自然エネルギー電力会社」は非常に少数かもしれません。それでもまずは、「少しでもベターなところ」を一度検討してみませんか。情報を精査して、次善の電力会社に切り替え、その次にさらにパワーシフトな電力会社に切り替える選択肢もあります。
その場合は、下記のような点をチェックしましょう。
1. どんな電源から電気を調達しているか。
2. 会社のビジョンや理念がわかりやすく書かれているか。
3. 石炭火力発電の新設・増設計画がないかどうか。
4. 親会社や提携会社はあるかどうか、それはどこか。
5. 消費者への情報提供は適切か
これらに注目して検討しつつ、パワーシフトな電力会社の申し込み開始を待ちましょう。
切り替えのプロセスは、新たな電力会社に申し込み⇒その電力会社から地域の電力会社に連絡⇒地域の電力会社がスマートメーターを設置(無料)⇒手続きが整い次第供給開始となります。
状況はどんどん変わっていきます。数ヶ月で、選択肢も大きく増えてくるでしょう。
多くの市民が、早く再生可能エネルギーの電気を使いたいと心待ちにしています。今すぐに申し込みできるところが多くないのはもどかしいところです。「再生可能エネルギー電気を買いたい」というあなたは、まずは「パワーシフト宣言」にご登録ください。メールで最新情報をお送りします。
いずれにしても、私たちが電気料金の支払いを通じて意思表示し、未来をつくっていくことができる大きなチャンスです。「安い」とされる石炭や原発の電気流れていく恐れも念頭に置いて注意しながら、再生可能エネルギーを重視する電力会社を応援していきましょう!(吉田明子)