国際協力の現場から
国際協力の現場から2014/10/27ツイート
ACCESS:ラップやダンスで自己表現、地域の未来を担う若者
ラップソングやダンスで自己表現、地域の未来を担う若者育成
夏にフィリピンを訪れた際、14歳の女の子、ジェイミーがこう話していました。
「私は10歳の時に、タバコを吸い始めました。私が住むコミュニティでは、 吸殻を見つけるのは簡単で、ちょっとした興味で吸い始めたのです。 後になって、(育ての母である)おばあちゃんに見つかり、説得されて辞めました。 今は、青年会のメンバーになり、仲間と充実した日々を過ごせるようになったので、 もうタバコを吸おうとは思いません。 でも、周りには、興味本位でタバコやお酒、ドラッグなどを始めてしまい、 やめられなくなる人がけっこういる。そういう人を増やしたくないから、 周りの人を青年会に誘っています。」
フィリピンでは、都市スラムだけでなく、農村コミュニティにおいても、タバコや酒、ドラッグは簡単に手に入るようになりました。18歳未満の喫煙、飲酒は法律で禁止されており、ドラッグの使用も違法ですが、若者がそうした悪習慣にはまってしまうケースは後を絶ちません。部活動がさかんではないフィリピンでは、13歳以上の若者が思春期の複雑な想いを表現したり、発散したりする機会が非常に限られており、親たちにとって「非行防止」は大きな課題になっています。
アクセスでは、都市スラムと農村コミュニティの両方で、13歳~20歳の若者を対象に、スポーツ、歌、踊り、演劇、絵などに取り組む「青年会」活動を行っています。特に、歌や踊りなどの表現活動では、自分のコミュニティのこと、日々の暮らしの中で自分が感じたり考えたりしていることをモチーフに、自らラップソングを書いたり、振り付けを考えたりする創作活動に取り組んできました。先月は絵の描き方を学ぶワークショップも行い、言葉による表現が苦手なメンバーも、紙と色鉛筆で自分の思いや考えを表現できることを実感しました。
そうした活動の中で、少年・少女たちは少しずつ、自分が置かれている環境を客観視することができるようになっています。また、自分の悩みや葛藤を他者に知ってもらうことができ、なかまから共感を得たり、異なる意見を聞くことで、少し心の重荷を軽くすることができるようです。
農村コミュニティでは、若者たちに「地域のために自分たちにできることは何か」を考える取組みも進め、植樹活動や地域の子どもたちに勉強を教える活動などにも発展しています。
こうして若者たちが安心して心を開ける場をつくり、「地域のために活動する経験」を持ってもらうことで、地域の課題は地域の人々が解決するコミュニティづくりを進めています。(野田沙良)