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国際協力の現場から

国際協力の現場から2014/01/24

マイクロファイナンス お母さんたちの金融


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マイクロファイナンス お母さんたちの金融

「マイクロファイナンス」というと、バングラディシュのグラミン銀行や、その創設者でノーベル平和賞受賞者であるムハマド・ユヌス氏を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。グラミン銀行の取り組みの特徴は、5人一組のグループ融資を行うことで、貧しい人々に無担保融資を提供するということ。私たちはこの仕組みを参考に、フィリピンの農村の主婦を主な対象とした金融サービス(融資、貯蓄、保険)を提供しています。

 借りたお金は生計を得るための事業に使うことが条件で、養豚・雑貨店・スイーツの路上販売・木炭の生産・ココナッツの仲買などの事業資金として使われています。

 融資を受けているメンバーは、ローン返済と話し合いのために行うグループミーティングのため、毎週1回は必ず集まります。司会をするのは、それぞれのグループのリーダーです。グループ内の問題はもちろん、家庭や家計、商売、個人的な悩みなど、あらゆることを5人で話し合います。例えば、メンバーの1人が離婚して収入が激減した際には、メンバーで相談して日雇いの仕事を紹介するといったように、5人は協力して日々の苦労を乗り越えています。また、日々の生活の不満を打ち明けあい、率直に話し合うことで信頼も深まっていきます。

 グループリーダーの一人レナリン(24歳)は「以前は活動に参加したりミーティングで司会をしたりするのが恥ずかしかった。でも、今はもう慣れました。」と自信を持った様子で答えてくれました。

 夫の家庭内暴力に苦しみながらも、夫の稼ぎに頼って生活していたあるメンバーは、融資を受けて始めた事業で自分で収入を得られるようになったことで、夫と別れ、子どもたちと共に自立した新たな人生を歩き始めました。

 現在75人のメンバーがいますが、多くは小学校卒か中退で、事務仕事をする機会を持ててこなかった人が大半です。その日の収入をその日のうちに使ってしまうことに慣れていることもあって、現金出納帳でさえつけることができる人はごくわずか。事業経営と言ってもわずかな経験と慣習に基づくものが多く、課題は山積みです

 1人が雑貨店の経営に上手くいくと何人もの人々がそれを真似し出し、客が分散して各店の売り上げが落ちるというような例もでてきました。そこで、2013年からは経営に必要な知識と方法を学ぶ経営力向上セミナーを始めました。将来的には、同業者同士が協力し合って事業を行えるような協同組合を作っていきたいと考えています。

 このように、私たちのマイクロフィナンス事業は、メンバーの女性たちのエンパワメントを進め、「持続可能な地域づくり」の担い手を育成することをめざしています。(野田沙良)