国際協力の現場から
国際協力の現場から2014/03/28ツイート
APLA:インドネシアで原発について考えるセミナー
インドネシアで原発について考えるセミナーを開催
東日本大震災から3年を迎える2014年3月、APLAの関連会社であるATJのひとつの顔であるエコシュリンプの産地・インドネシアの東ジャワで、生産者と一緒に原発について考えるセミナーを開催しました。
実は、インドネシアでは1980年代から原発建設計画があります。市民による反対運動やアジア通過危機の影響などもあって中断されたものの、近年その計画が再浮上、政府は、2025年までに4基の原発を建設する計画を発表しています。そのもっとも有力な建設候補地は、ジャワ島中部のムリア半島ですが、地元住民の根強い反対もあり、現在まで計画は進んでいません(当初の計画では、2010年着工、2016年運転開始)。あまり知られていませんが、日本からの原発輸出、つまり日本政府・企業の資金や技術などによってインドネシアに原発が建設される可能性は小さくありません。
そして、建設予定地の中には、エコシュリンプの産地であるシドアルジョやグレシックの対岸に浮かぶマドゥラ島の名前もあがっているのです。
東日本大震災と福島第一原発事故から3年。二本松有機農業研究会のみなさんやバナナ募金の届け先の幼稚園・保育園など、福島とのつながりをつくってきたAPLAだからこそ、いまもまだ何も解決していない原発事故のことやその影響について、エコシュリンプの生産者とATINA社の仲間に共有し、インドネシアの原発建設計画について一緒に考える機会にしたいとセミナーを開催することになりました。
エビを養殖する生産者たちが20人ほど集まった昼の部のプログラムは、
・福島第一原発事故の概要とその影響についてのプレゼン
・3月8日に劇場公開となった映画『遺言 原発さえなければ』の予告編を上映(インドネシア語で説明)
・インドネシアの原発建設計画や市民による反対運動についてのプレゼン
・質疑応答
というように進みましたが、東北からバリ島に自主避難をされている方が急きょ参加してくださることになり、当時の様子や今の想いなどをシェアしてもらうという盛り沢山の内容になりました。
以下、参加者から出た質問や意見を一部ご紹介します。
・豊かな天然資源があるインドネシアが、なぜ原発を建設しようとしているのか?
・日本では、原発建設前にどんな運動がある(あった)のか?そこから自分たちも学びたいと思うので、おしえてほしい。
・ラピンドの熱泥噴出事故(注)にも、沢山の被害・環境への影響が出て、エビの収穫量にも影響があった。福島第一原発から漏れ出ている放射能は海にも広がっているというし、海には境界線はないから心配だ。
・原発の問題は、日本だけの問題ではない。自分も反原発運動を支持する。
・被害を受けた住民への補償はどうなっているのか?
前述の通り、エコシュリンプの生産者・加工労働者たちにインドネシアでも建設計画のある原発の恐ろしさを知ってもらうことが今回のセミナーの大きな目的だったのですが、放射能汚染の問題などのことを考えてみても、世界に対しても大きな迷惑をかけていることを改めて痛感した次第です。それでもなお、「安全性は確保されている」「コントロールされている」などと言って、国内の原発の再稼働やインドネシアを含む各国へ原発輸出を目論む政府や企業の動きを、わたしたちは許すことはできないという思いを強く持ち直しました。(野川未央)
注:2006年5月、シドアルジョで天然ガスを試掘していたラピンド・ブランタス社の作業現場で熱泥が噴出した事故。その熱泥が周囲の村々に広がり、広大な地域で、家屋や工場、田畑などが泥で埋まりました。2014年3月現在も、まだ熱泥の噴出は止まっていません。