国際協力の現場から
国際協力の現場から2023/04/17ツイート
未来への挑戦2022─アーユスNGO新人賞受賞者に聞く_1
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アーユス設立20周年の記念として2013年に創設された「アーユス賞」、その中のひとつ「NGO新人賞」は、さまざまな国際協力のかたちがある中でも、とりわけ「NGO」という組織に身をおいて関わり始めた人たちを応援するものです。
2022年度は初めて、新人賞の皆さんをアーユスだけが応援するのではなく、もっとたくさんの人に応援してほしいという思いからクラウドファンディングで賞金を募りました。過去の受賞者や関係NGOの仲間たち、そしてアーユスの支援者など、「未来に挑戦する人たちにエールを送りたい」と共感してくれた方、九十名以上からご寄付をいただきました、本当にありがとうございます。今回の新人賞は国際協力のこれからに期待するみんなからの賞だという思いでトークを開催しました。
まずは、授賞式の雰囲気を味わっていただきたく、当日の新人賞受賞者のスピーチをご覧ください。
◎自己紹介:現場・バックオフィス・ファンドレイジング
司会 ではみなさん、自己紹介と活動紹介からお願いします。
割田 パレスチナ子どものキャンペーンのレバノン駐在員の割田元輝と申します。現在、レバノンでは教育と保健事業を実施しています。教育事業ではレバノンで暮らすパレスチナ難民とシリア難民の子どもたちに対する幼児教育と学習支援活動を行っています。レバノンでは、難民の子どもたちの教育へのアクセスが非常に限られており、特に幼児教育に関してはほとんど公的な場がなくて、NGOなどが担っている状況です。一方で小学校に上がる前にアラビア語の基礎や数字の知識、読み書きなどを学ばなければ小学校に入ってから勉強についていけません。そうした基本的な能力の習得を目的として幼児教育を行っています。
学習支援では、学校教育についていくのに苦労を感じている子どもたちのために、放課後の補習クラスをおこなっています。小学校1-3年生に相当する年代の子どもたちを対象に、パレスチナ難民キャンプの中で開催しています。
また保健事業では、こうした危機的状態が続きますと、子どもの歯の健康に対する意識が薄れて後回しになるので、キャンプ内で子どものための歯科クリニックの運営を行っています。加えて、度重なる苦難や長引く難民生活の中でどんどん悪化していく難民の方々のこころの問題に対する啓発活動、ケアを行う児童精神科支援と心理社会的サポートを行っています。他にも、2020年8月にベイルート港で起きた爆発事故によって障害を負ってしまった方々のリハビリテーション支援や、2020年以降は、COVID-19の啓発活動やそれに伴う衛生用品の配布なども広く行ってきました。他にも多くありますが、主にこういった形で現在レバノンでは活動していますね。
司会 活動が多岐にわたりますが、どんなメンバーが関わっていますか。
割田 私と日本人のスタッフがもう一人いて、あとはパレスチナ人のローカルスタッフが2人。ほかには、難民キャンプの中にセンターを持っている提携団体のスタッフが数十人関わっています。
ダハル シャプラニール市民による海外協力の会でファンドレイジングを担当しています、ダハル・スディプと申します。ネパール出身で、2013年に日本に留学のために来て、2022年の2月にシャプラニールに入職しました。ネパールの大学で農村開発を研究し、その後どこか海外に行きたいなと思って日本の大学で学んで、その後社会人としての経験が足りないなと思って一般企業で三年間ほど働いて、シャプラニールに入職しました。ファンドレイジングでは、「ステナイ生活」という主に全国の皆様から送られてきた物品寄付の管理をしています。
シャプラニールは、今年50周年を迎えた団体で、市民の立場からできる国際協力、市民の立場から貧困のない社会を目指して活動しています。シャプラニールとは、ベンガル語で「睡蓮の家」という意味なんですが、今現在は、ネパールとバングラデシュと日本の三つの国で活動を行っています。主な活動は、南アジアの子どもの明日を守る活動と災害に強い地域づくりの活動、その社会からの孤立を防ぐ活動として日本国内で在住外国人の交流事業や生活支援などの活動を行っています。その他にも、市民が国際協力に参加できるよう、物品寄付やクラフトリンクというフェアトレードの活動なども実施しております。
佐久間 こんばんは、シェア=国際保健協力市民の会の海外事業部でカンボジア事業を担当しております。私がシェアに入職したのは2019年8月です。
私は大学で国際関係を学んだ後に一般企業とその後開発コンサルタントで数年間仕事をして、ちょうど担当していたプロジェクトの終了と共にご縁があってシェアにお世話になっています。また、仕事をしながら公衆衛生学の修士号(MPH)を取得しました。
シェアはカンボジアで30年以上の歴史がありますが、私が現在担当している事業は、2017年からカンボジア北部のプレアビヒア州というところでの、母子保健と栄養改善のプロジェクトです。2017年から子どもの栄養改善支援1000日アプローチプロジェクトと、来月からはコミュニティにおける栄養改善のプロジェクトがまさに走り出すところです。カンボジアの農村部では、子どもの30%が慢性的な栄養不良という現状があり、シェアは特に農村部の子どもたちのアウトリーチによる乳幼児検診の実施や離乳食教室の支援を行っています。今、栄養が世界的にも注目されていて、お母さんのお腹にやどった妊娠期からの千日間つまり2歳になるまでの期間が、人間の脳や臓器などに成人後も影響するとても大切な時期であるため、栄養をしっかり取ることが推奨されています。子どもたちが健やかに成長できるよう、そこにフォーカスした活動を行っています。現地に日本人駐在員とローカルスタッフがいて、私自身は主に東京事務所でバックオフィスのような形で事業を支えています。