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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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国際協力の現場から

国際協力の現場から2022/12/15

シリーズ「光の先に見えるもの」#1 Accept Int.


アーユスが光を当てるNGOや活動現場をご紹介。光の先に見えるものは・・・・?

第1回:アクセプト・インターナショナル 
      「変わるべきなのは私たち」

○アクセプト・インターナショナルとは
 テロや紛争のない世界というビジョンのもと、ソマリア、イエメン、ケニア、インドネシアなど、テロや紛争の影響を強く受けた国々および地域で、いわゆる加害者になった人たち、特にテロリストの脱過激化・社会復帰や、武器を置いて社会に戻り、人生をやり直していくことのサポートを主軸に活動している団体。

 「光の当たらないところに光を」という視点からアクセプト・インターナショナルについて、広報担当である山﨑琢磨さんにお話を伺いました。

●自分事にできないテロリズムの問題 ―光が当たらないところ
― 代表の永井さんのテレビ出演の機会などが増えて、団体の認知度は高まっているように見えます。

(山) テレビに取り上げていただいただけでは、ここまで成長しなかったと思います。組織全体として非常に強くなってきているのは確かで、5年前と比べても驚くほど安定してきています。それは、この2年間アーユスからの支援のもと取り組んできた組織基盤強化の成果だと思っています。代表がひとりだけマスコミに取り上げられても、それを支える基盤がないと受け止めきれません。広報担当としても、インターンやプロボノの方の力を借りてイベントを多数開催して、とにかく発信することを意識してきました。
 また、組織には光が当たってきていますが、取り組んでいる課題にはまだまだ当たっていません。いろいろなところで講演をしても、「どうしても自分事に落とし込めなかった」というコメントをよく頂戴します。そもそも海外の問題だからかもしれませんが、イメージが湧きづらい、当事者意識が出てこなかった、凄いのは分かるけれど何かピンとこなかった、といったコメントもよく頂戴します。伝え方は常に改善し、より賛同を得られるよう工夫していきたいです。

○山﨑琢磨さん
 2016年にひき逃げ事故に遭った際に死を意識し、人生は限りあるものだから有意義に過ごしたいと考えていた時に、代表の永井陽右さんと出会い、アクセプト・インターナショナルに参加するようになった。以来、2021年11月に有給職員になるまでは無給ボランティアで参加。大学在学中は、休学してケニアで1年間暮らしながら活動に関わったこともある。

― 一人の人にスポットが当たって組織が伸びる事はよくありますが、そこに安住しない姿勢は素晴らしいですね。
 当事者意識を持ちづらいというのもわかりますが、誰でも加害者になり得るという意識を持つことは大切だと思います。山﨑さんご自身は、元テロリストなどと話をして、感じることはありますか。

(山) もともとイメージしていたテロリスト像は、武器を片手に好き勝手にやっているものでした。それが実際に接してみて、むしろナイーブな人もいるということを知りました。世の中をどうにかしてよくしたい、家族を守りたい、暮らしを少しでもよくしたいなど、誰しもが思うようなことを思っているのに、手段がテロしかなかったんです。話を重ねるにつれ、相手の表情が柔らかくなるのをみていると、テロリストは悪魔でもなんでもないことがわかります。たとえ感情的には共感できなくても、理性的には共通する部分はとてもあるので、支えたいと思うし、自分自身も一緒に歩めたらなと思います。

― テロリスト=悪みたいな存在が、関係性ができる中で、思いなどを共有できる相手に変わってきたのでしょうか。

(山) 彼らの多くは自分がしてきたことがテロリズムとは考えていなくて、自分の主張を通すための手段として暴力を用いています。特に組織の中間や下部にいる人たちは上層部からうまく言いくるめられていて、それしか手段はないと教えられている。必ずしもそれが絶対ではないことを伝えることは、彼らの気づきにもつながっています。そういうところに、人間として同じ部分を感じるんです。
 もちろん、上手くいかなかった例もあります。生まれ育った環境がテロリストの領内で、父母ともテロリストのシンパでそれしか教え込まれてこなかった人を口説くのは非常に難しかったです。紛争が長期化すればするほど、そういう子どもが増えます。どうにかいち早く平和を取り戻したいと思います。

― ジレンマを感じることはありますか。

(山) ソマリア軍やアフリカ連合が過激派から抜け出したい人たちの投降をサポートしています。ただ、過激派グループから自発的に出てくると報復の対象になるという課題はあります。だからこそ、私たちは、投降後の保護も担っています。
 加えて、武力は使わない方がいいのですが、対話だけではうまくいかない現実もあります。また、投降すると恩赦が与えられて社会に戻ってこられる枠組みはあるんですが、その人がやってきたことを正当化もできません。被害者の感情を考えると複雑な思いを感じることもあります。

● 変わるべきなのは私たち。社会を変えるためにも、光を当てる。

― アクセプトとしては、テロに走らざるを得ない若い人たちの環境を少しでも改善したいという思いから活動されていると思います。こういう活動をもっと多くの人が知る、共感してもらえることで、次のステップに進める可能性などありますか。

(山) あります。世界的にテロの問題に立ち向かう中で、加害者をどう社会復帰に導くかを考えると、変わらないといけないのは私たち日本人を含む受け入れ側の社会だと気づきます。また、武器を取っていた若者がそれを置くことを権利づけられるような国際条約を2031年までに制定することを目標に、今動いています。それを日本から実現させるためには、より多くの方々の力を借りる必要があります。
 私たちは、自分たちの活動を運動だと捉えていて、大きなうねりを国際社会全体に作ることを目標にしていますが、まずは日本の方に知ってもらいたい。そこから、多くの若者が武器を置ける環境を整えることにつながっていくと思います。

●つながりの中で
― アーユスもNGOのひとつですが、他のNGOや他の組織とつながることで広がる可能性を感じることはありますか。

(山) 他の団体からの支えがないとできない仕事だと、謙虚さのアピールではなくて純粋にそう思います。事業を他のNGOと共同するのは、地域や分野の違いで難しいと思いますが、たとえばファンドレイジングへのアドバイスなど、他団体との情報共有に助けられてきました。いろいろなところからの支援があったからこそ、ここまで成長できました。
 先日は、仏教伝道協会のイベントに参加させてもらい、宗教という括りでお話させていただくことがありました。宗教や教育など、いろいろな切り口から関心持ってもらい、関心を持ってもらう人たちの層を厚くできれば、大きな運動になると思います。しっかりと自分たちの軸を持った上で、それをもとに共同関係を大きくしていく必要はあると思います。

― 宗教については一緒に考える場を持ちたいですね。みなさんが活動の中での学びは宗教者も興味があると思います。今後ともご一緒できれば嬉しいです。

 

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1.アーユスは多様なNGO(市民団体)と連携しているために、様々な地域やテーマに対応することができます。

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