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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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国際協力の現場から

国際協力の現場から2021/08/31

2021年7-8月活動報告(ピースデポ)


 ピースデポは脱軍備・平和レポートを2カ月ごとに発行していますが、10号ではピースデポの理事の木元茂夫さんに特集記事を書いていただきました。特集のテーマは自衛隊の活動領域が安保法制施行から5年経ってどう拡大したかでした。スケジュール確認や校正の際のやり取りなど、編集者の仕事は大変だと思いました。誤字脱字がないかどうか調べるのも地味で根気が必要ですが、大事な仕事です。これらは全て勉強で、内容に関する知識がつくだけでなく、集中力と忍耐力が養われので、自分を成長させてくれるものと思っています。今回の報告では、特集の記事から私が学んだことを書きます。

 安保法制が施行されたのは2016年3月で、それから5年以上が経ちました。この間、日米軍事一体化が進んでいます。この法律により、自衛隊は外国の艦艇や航空機を護衛する「武器等防護」活動ができるようになりました。防護対象は米国だけでなく、連携する相手は今後拡大される見通しです。2017年5月に海上自衛隊護衛艦は米国の補給艦を初めて防護しました。それ以降、情報収集・警戒監視活動と共同訓練を合わせて、18年には16件、19年には14件、2020年にはさらに増え、25件と、その数は着実に増えました。オーストラリアのみならずフランスやイギリスも東アジアで軍事活動を展開することに意欲を示しているため、今は米国にのみなされている防護活動は、これらの国々にも拡大するでしょう。

 自衛隊の任務が拡大しており、その情報公開の重要性がますます高まっているにもかかわらず、「米軍との関係」の建前で、日時や場所や訓練の具体的な目的などの情報は不公開です。公表されている情報は件数と「情報収集・警戒監視活動」や「共同訓練」といった概要のみで、詳細を防衛省に求めても拒否されるだけでなく、政府による国会報告もありません。なし崩し的に活動が拡大していく懸念があります。

 自衛隊の活動の拡大の背景には、米国と日本が急速に軍事力をつけ、海洋進出を拡大する中国への警戒感を高めていることがあります。2018年の防衛大綱では、「中国は力を背景とした一方的な現状変更を試みる」と、中国を批判しました。しかし、軍事力で対抗すれば、故意であれ偶発的であれ、軍事衝突の可能性が高まるのではないでしょうか。安保法制により、存立危機事態では集団的自衛権が行使されることになりましたが、7月の麻生副総理兼財務相の「台湾で大きな問題が起きると、存立危機事態に関係してくると言ってまったくおかしくない。そうすると、日米で一緒に台湾を防衛しなければならない」の発言は、米中の台湾をめぐる紛争に日本が巻き込まれる危険性を感じさせます。対立がある時こそ、対話の数を増やすことが平和につながるのではないでしょうか。安易に軍事力に頼らず、時間がかかっても外交の可能性を最後まで追及すること、市民が自衛隊の活動についての情報公開を徹底するよう政治に求めることが大事であることを、10号の編集過程で学びました。

ドゥブルー達郎

写真は、「脱軍備・平和レポート」第10号