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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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国際協力の現場から

国際協力の現場から2020/10/29

Nangoc:コロナ禍に脅かされるアジアの市民社会と私たち


オンライン勉強会「コロナ禍に脅かされるアジアの市民社会と私たち」

 2020年10月3日(土)オンライン勉強会「コロナ禍に脅かされるアジアの市民社会と私たち」を開催しました。

フィリピンの市民社会の現状
 最初に登壇したのは、国際環境NGO FoE Japan 委託研究員の波多江 秀枝さんが「フィリピンの市民社会の現状」というテーマでお話いただきました。コロナ禍でとられたフィリピン政府の戒厳令のような措置、その下でも続く人権・環境活動家への人権侵害特に政治的殺害について語られました。

フィリピン事例 - 麻薬撲滅作戦による不当な殺害
 2番目には、当センターの代表理事の中島 隆宏が「ある村長の死-麻薬撲滅作成による不当な殺害」と題して、アジア保健研修所(AHI)の元研修生ナプサさんの夫の殺害について事例を紹介しました。彼が村長になる前の20年間、汚職が蔓延していた村議会において汚職撤廃運動を進め、観光開発で住む家や森や漁場を奪われようとする先住民や漁民の土地権利の擁護のために裁判で先頭に立って彼らの声を代弁していました。また麻薬撲滅キャンペーンでは麻薬の利用者は更生し社会復帰できると信じて法の下での裁きを受けるべきという独自のキャンペーンを展開していました。そのような村長が麻薬売人の容疑をかけられた部下を擁護して不当に殺害されたのでした。コロナ禍を理由に警察や行政は真相究明のための再捜査をしようとしません。弱いものの立場に立ち、環境や人権を守ることを優先した村長が政治的殺害されたことは明らかです。

スリランカの市民社会の現状
 3番目はスリランカの全国漁民連合の代表であるハーマン・クマラさんでした。スリランカでは昨年11月に誕生した新大統領のもとで強権政治がコロナ禍を理由に市民社会に影響力を及ぼしています。新型コロナウイルスの危機は、軍がこれまでで最も大きな影響を政治に及ぼすことを許すこととなり、その結果、市民活動家、ジャーナリストたちの逮捕や国外へ逃れる事例が多発しています。

日本の市民社会の状況
 4番目は当センターの代表理事でNANCIS共同代表の八木 巌が、「緊急事態宣言と自粛警察」というテーマで日本の政府、行政が外出や営業の自粛要請をする中で、政府ではなく市民自らが市民社会スペースをせばめている事例が紹介されました。

 当センターにとって初めてのオンライン講座は、スリランカのNGOワーカーと、また、東京のFoE Japanの波多江さんとも結び、参加者も遠くはスリランカ、東京などからもあり、大学生を中心にした参加者40名余を得て、日本も含めコロナ禍で市民社会スペースが狭隘化していることが理解されたと思います。4人のスピーカーのお話のあと、「コロナ禍を利用して市民の声を押しつぶすという政府や行政の圧力、また、つぶされて当然という市民の支持をどう打破するか?」という参加者からの問いかけは異なる3つの国の市民社会への共通のチャレンジでした。
                  (名古屋NGOセンター政策提言委員・代表理事 中島 隆宏)