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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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国際協力の現場から

国際協力の現場から2020/05/11

ピースデポ:2020年3月~4月活動報告


 2020年3月から4月は、年度末ということもありNPO法人登録や助成金に関する報告書類作成の仕事があった。また『イアブック』の出版を3月に終えたため、6月出版予定の『アルマナック』の記事執筆・編集作業が本格化した。4月からは新型コロナウイルス感染拡大をうけ、勤務体制の変更などがあった。

 

『イアブック「核軍縮・平和2019」』の出版

 核兵器や軍縮に関する2018年の出来事やそれに関連する条約や声明文などの1次資料をまとめた資料年鑑『イアブック「核軍縮・平和2019」』を3月上旬に出版した。出版後は会員や関係先への広報活動を実施し、販売を進めている。

  • イアブックの目次等については緑風出版HPを参照:
  • http://www.ryokufu.com/isbn978-4-8461-2005-4n.html 
  • ご注文はピースデポに連絡いただくか、緑風出版または全国の書店からご注文いただけます。

 

『脱軍備・平和レポート』第2号の発行

 『脱軍備・平和レポート』第2号を4月1日に発行した。第2号の特集は「実現の迫るAI・ロボット兵器」。AI(人工知能)の発展により、AIを搭載したロボット兵器の登場が現実味を帯びている。市民や科学者の間では、AIに人命を奪う判断を任せて良いのか、その場合の責任は誰が負うのかといった、新しい争点が生まれている。国連では人間が命令しなくてもAI の判断で自律的に動く兵器を「自律型致死兵器システム」(Lethal Autonomous Weapon Systems: LAWS)と呼んでいる。2014年から特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の枠組みで、規制に向けた議論が行われてきた。

 完全に自律した兵器はまだ存在していないが、米国、ロシア、中国、フランス、イスラエル、韓国などが開発中だ。AI 兵器の自律化が実現すれば、火薬、核兵器に次ぐ軍事上の「第3 の革命」になるといわれ、戦争の様相を大きく変える可能性がある。ヒューマン・ライツ・ウォッチは2012 年の報告書で、今後30 年以内に完全自律型の殺人ロボットが開発されると予想している。

 LAWS の使用は、AI の判断が正確であることを前提にすれば、戦場で恐怖や興奮、復讐心などに左右されて判断を誤る人間の兵士に比べ、市民への誤爆が減るなど、むしろ人道的であるとの考え方もある。他方、LAWS に対する懸念としては、AI に人命を奪う判断をさせて良いのかという倫理的・道義的な問題が大きな争点となっている。AI が人命を奪う判断をした場合、責任の所在があいまいになる。AI の判断による違法行為に対して誰も責任を取らなくなれば、違反者を罰することで違法行為を防いできた国際人道法が機能しなくなる恐れがある。

 また、戦争へのハードルが下がるのではないかという懸念がある。LAWS を使用すれば自軍の兵士が死傷する可能性が下がるため、為政者は戦争開始の判断をしやすくなる。LAWS は機械である以上、故障や誤作動を起こす可能性もある。さらに、AI が人間に反乱を起こす事態を懸念する科学者もいる。

 本特集ではLAWS開発の現状や規制に向けた議論を整理するとともに、日本の自衛隊も含め各国の軍によるAI導入に向けた動きや、科学者や企業の中にはLAWS開発やAIの軍事利用に反対する動きが広がっていることを紹介した。

 時事的な話題を解説する「トピックス」では、核不拡散条約(NPT)が発効50周年を迎えたこと、核戦争や気候変動による地球滅亡を警告する「終末時計」が地球滅亡まで残り100秒を示したこと、トランプ大統領がイスラエル有利に偏った中東和平案を発表したこと、マクロン仏大統領がフランスの核戦力の存在意義を強調する演説を行ったこと、米海軍が低威力核弾頭を戦略原潜に配備したことを取り上げた。

 第2号では新しい試みとして、「平和を考えるための映画ガイド」というコーナーを設けた。本コーナーでは、戦争に限らず広く平和を考えるきっかけとなる映画作品を、最新作や過去の作品の中から紹介する。今回はタイカ・ワイティティ監督の『ジョジョ・ラビット』(2019年)と、モフセン・マフマルバフ監督の『カンダハール』(2001年)を取り上げた。

※『脱軍備・平和レポート』を読むにはピースデポにご入会いただくか、連絡をいただければ会員以外にも1冊300円で販売いたします。

4月1日発行の『脱軍備・平和レポート』第2号

 

『ピース・アルマナック2020』出版に向けた取り組み

 『イアブック「核軍縮・平和2019」』の出版を終えた3月からは、『ピース・アルマナック2020』の出版に向けた作業が本格化した。『ピース・アルマナック』は、これまでの『イアブック』に代わり発行する資料年鑑である。核兵器や軍縮に関する1次資料の提供という目的は引継ぎつつ、デザインや構成の一新を図っている。

 ピースデポ内で解説・論考の執筆、資料の翻訳、紙面の編集といった作業を分担して進めながら、出版社とのやり取りなどを進めている。『ピース・アルマナック2020』は6月中に出版の予定である。

『ピース・アルマナック』の版下作成や校正作業が急ピッチで進んでいる

 

朝鮮半島の非核化合意履行監視プロジェクト

 4月24日に監視報告22号「国内産業の自立発展が『正面突破戦』の実態であり、非核化の焦点が米国の敵視政策の撤回であることに変わりはない」を発行した(https://nonukes-northeast-asia-peacedepot.blogspot.com/2020/04/no22.html)。金正恩委員長は昨年末の朝鮮労働党中央委員会総会で「正面突破」というキーワードを繰り返した。日本では金正恩が演説で「北朝鮮が保有することになる新しい戦略兵器を世界は遠からず目撃することになる」と述べたことが注目されたが、「正面突破」を宣言した金正恩の演説の要旨は、米国政府が北朝鮮に対する敵視政策を撤回することは当面ないとの前提で、「自力更生」や「自給自足」によって国際社会による厳しい制裁を「正面突破」し、社会主義を発展させようということであり、演説はその実現ために各産業部門が取り組むべき課題に力点が置かれている。本稿では北朝鮮が掲げた「正面突破」の実態を解説した。

 

その他

 年度末に合わせ、横浜市へのNPO活動報告や横浜市の助成金「よこはま夢ファンド」の報告に必要な資料集めや書類作成に取り組んだ。

 3月には、「フォーラム平和・人権・環境」からの委託事業として、「平和軍縮時評」への掲載記事「新型核兵器運搬システムの開発へ邁進するロシア」(http://www.peace-forum.com/p-da/200229.html)を執筆した。核軍縮への道は険しさを増しており、その一端が、ロシアが開発する新型核兵器運搬システムを誇示している姿に示されている。ロシアは2018年と2019年の年次教書演説において、米国のミサイル防衛システムを打ち破ることを目指して開発中の複数の核・ミサイル兵器を公表した。本稿ではロシアがころまでに開発を公表した6つの新型核兵器運搬システムについて、米国の研究機関の報告書を基に開設した。

 4月下旬にニューヨークで開催されるNPT再検討会議への参加に向け、3月には日本・韓国・米国のNGOとの交渉や、米国入国のためのビザ取得手続きを行った。しかし新型コロナウイルス感染拡大により、NPT再検討会議は延期されることが決まった。

 3月下旬から日本でも新型コロナウイルス感染の拡大が深刻化し、外出自粛や在宅勤務が呼びかけられるようになった。ピースデポでも4月上旬に在宅勤務の導入を議論し、4月8日から交代制在宅勤務体制となった。職員同士の接触や通勤時のリスクを最小限にするため、事務所には交代で一人ずつ出勤することになる。会議はオンラインで実施するため、以前から利用していたオンライン会議システム「Zoom」を本格的に導入した。交代制在宅勤務体制は5月6日までの予定で開始したが、感染拡大の現状を鑑み5月15日まで続けることし、その後も状況を見て延長の可能性がある。

報告:4月30日 森山拓也