文字サイズ

特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

会員になるには

国際協力の現場から

国際協力の現場から2018/05/24

FRJ:大阪で難民支援者向けセミナーを開催


大阪で難民支援者向けセミナーを開催しました

639x424

 なんみんフォーラム(FRJ)では、2017年度、東京と大阪で計3回に渡って、難民支援団体向けのセミナーを開催しました。うち、大阪でのセミナーは、大阪に拠点をおくRAFIQ(在日難民との共生ネットワーク )の企画・運営のもと、2017年12月に開催しました。これまでFRJでは、支援現場の様々な課題やテーマを取り上げ、全国の難民支援団体が集まる会議やセミナー、ワークショップなどを運営してきましたが、そのほとんどは都内でのものでした。そのため、関西からの参加者数はどうしても限られていましたが、今回、大阪での開催が実ったことで、より多くの方々の参加が実現しました。具体的には、関西を拠点する難民支援団体関係者や、会員として関わる支援者に加えて、メディア関係者など、総勢20名が参加しました。

 今回の大阪セミナーで取り上げたメインテーマは、難民に関連する制度運用の変化です。全国的に影響を受ける法制度の動きを踏まえながら、関西地域の状況の共有を得ることで、より良い難民支援に向けた情報共有と連携体制の強化を目指しました。

 2015年9月以降、日本の難民認定制度は幾度かに渡って運用が変更されてきており、現在は、正式な審査の前に申請を振り分け、その結果に基づいて難民申請中に、在留・就労制限が進められることなどが法務省より発表されています。日本の難民申請の平均処理期間は3年弱です。その間に、生計を自ら立てることが許されなくなった難民申請者が、民間団体から最低限度の生活を営むだけの生活費を継続的に受給することはほぼ不可能に近く、公的な生活支援金も予算は限られています。いくつかの支援現場からは、セーフティネットから外れてしまう人たちの状況や、保護を必要とする人たちへの悪影響がないのかどうかについて、疑問や懸念があげられています。また、行政不服審査法の改正を受け、2016 年4 月以降の難民不認定処分等に対する不服申立てについては、以前の異議申立て制度ではなく、審査請求制度が適用されることとなり、いくつか変更点が生まれています。このように、ここ数年は法制度面で様々な変更が行われており、個別支援の現場では、より最新の情報に基づいた適切な支援が必要とされ、制度的課題があれば、政策提言に繋げていく必要があります。

173x115173x115

写真左:セミナーの折、RAFIQの事務所「なんみんハウス」も訪問しました。難民や難民申請者の一時宿泊施設(シェルター)でもあり、2016年にオープンしました。写真は玄関の様子。写真右:古くから建つ民家を難民支援に使ってほしいという申し出があり、RAFIQの活動に関わる方々の手作りで改装したそうです。この床も、皆さんで張り替えたもの。小さなお家ではありますが、RAFIQの活動の様子が伝わる空間になっています。地域との交流の場にもしていきたいそうです。

 セミナーでは、制度やその運用変更に関して、全国難民弁護団連絡会議より、統計や制度の実施要領などをもとに、現状や傾向の分析、注意すべき点の指摘がありました。FRJ事務局からも、FRJが全国ネットワークとして、関西地域の支援者と連携していきたい取り組みなどを紹介させていただきました。関西での現状は、RAFIQより共有がありました。多くの難民申請は首都圏に集中していますが、大阪にも一定数の難民が暮らしています。難民申請数が7,586人であった2016年、大阪での申請数は152人でした。難民認定は全27人中3人、人道配慮に基づく在留特別許可を受けた人は全79人中11人でした。RAFIQでは、難民・難民申請者への法的・生活支援を行うほか、地域の資源を生かしたシェルター運営や、関西地域での理解を広げるため活発なイベントやセミナーも定期的に実施しています。収容の長期化や、関西地域の収容施設から長崎県の大村入国管理センターへの移送により、遠隔地にいる難民申請者へ支援をしていく難しさ、中央官庁での運用変更が確かに地方入管での取り扱いにも影響している点など、関西特有の課題や関東と共通する課題の両方が共有され、参加者全体での質疑応答、意見交換が行われました。

 日々、難民一人一人の相談を受け付ける現場にとって、制度上の課題は、利用できる社会資源を少なくすることにもつながり、当事者のニーズや抱えている問題に対して必要なサポートを行うことに困難が生じることは決して少なくありません。しかしその中でも、必要な知識や技術を蓄え、連携体制を十分に整えることによって多様なニーズに対応し、サービスの質を高めることが求められています。セミナー後、参加者からは、制度的な問題点と運用の実態を関東と関西の事例で共有できたことで、今後も支援現場からみた傾向や課題を共有しながら、保護を必要とする人たちへの適切な支援に向けて、必要な連携に取り組んでいく必要性を感じたという声があったほか、特に法的支援に取り組む現場スタッフにとって、モチベーション作りにつながったという評価がありました。

 関西地域での取り組みは、難民一人ひとりと支援者、地域の人たちとの関わりが深く、幅広い年代の人たちが、それぞれの関心や経験、強み、自由に使える時間を活用しながら、繋がりをもって活動されています。ネットワーク団体として、こうした各地での支援活動をバックアップしていけるよう取り組みを続けていくとともに、個別の支援から見えてきた課題を具体的な制度上の課題として整理し、政策決定者に伝えていけるよう努めていきたいと思います。

※本セミナーは、独立行政法人福祉医療機構(WAM)平成29年度社会福祉振興助成により実施いたしました。
※RAFIQの活動等はこちらからご覧いただけます。