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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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国際協力の現場から

国際協力の現場から2016/05/16

FRJ:アメリカ視察へ参加してきました!


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サンディエゴでのシンポジウムの様子

より良い難民の社会統合に向けて
 米国での難民受け入れに関する現地視察への参加

 はじめまして。今年4月より、NGO組織強化支援を受けることになりました、なんみんフォーラム(FRJ)の檜山です。
 4月初頭の約1週間、米国での難民受け入れに関する現地視察に参加してきました。今回は、そのご報告をしたいと思います。この視察は、日米韓による難民の社会統合に関する優れた取り組みを共有するプロジェクトの一環として、認定NPO法人難民支援協会(JAR)が主催したもので、国際交流基金日米センターの助成を受けています。視察には、日本のNGOから3名、韓国のNGOから4名が参加し、米国カリフォルニア州サンディエゴ、テキサス州フェニックスの2都市を訪問しました。

◆日米韓それぞれの難民受け入れ状況

 日本も韓国も、難民条約に批准し、難民認定制度を制定している国です。また現在どちらも、ミャンマー出身の第三国定住難民を受け入れています。迫害により母国を逃れた難民の中には、最初に避難した国で、十分な保護を受けられない人がいます。そうした難民を第三国が受け入れることを「第三国定住」と呼びます。日本は、アジアで初めて第三国定住プログラムを実施した国で、これまで、23家族109名のミャンマー難民を受け入れてきました。韓国は、日本に次いでアジアで二番目に第三国定住プログラムを開始し、昨年2015年にミャンマー難民4家族、22人を受け入れました。一方、米国は毎年5万人以上の第三国定住難民を受け入れてきており、2015年の年間受入数は世界最大です。政府、自治体、難民支援NGOなど多様なステークホルダーが連携しながら、受け入れる難民の選定や入国前後の研修、定住支援が実施されています。第三国定住の他にも、自力で米国まで逃れ、個別に難民として認定される人もいますが、その数も2014年は2万人を越えています(日本では、2014年は5000人が難民申請し認定は11人、2015年は7586人が難民申請し認定は27人でした)。

◆受け入れられた難民のその後は?

フェニックスのNGOによる難民へのオリエンテーションの様子。出身国や民族は様々。英語を解さない難民へは、専属の通訳が寄り添う。

フェニックスのNGOによる難民へのオリエンテーションの様子。出身国や民族は様々。英語を解さない難民へは、専属の通訳が寄り添う。

 難民にとって、迫害から逃れ保護を受けることができたとしても、異国の地でゼロベースから生活基盤を築いていくことは決して容易ではありません。今回の視察では、サンディエゴとフェニックスの両方で、国際救援委員会(International Rescue Committee(IRC))などの難民支援NGOを訪ねました。実際の活動現場を視察し、特に第三国定住難民に対して、どのような定住支援が行われているのか、各担当者などからも話を伺いました。
 米国の第三国定住難民への支援の最大目標は、できる限り早期に難民の自立を実現することとされています。米国到着後、最初の30〜90日の間、生活必需品や住居、生活費などが支給されますが、同時に、その後の生活の自立に向けて、NGOよって、個々の難民の就業経験やスキルに応じた就労先のマッチングも計られます。就業訓練などに加えて、英語教育や文化的オリエンテーション、適切な金銭管理のレクチャーなど、様々なプログラムが提供されます。

サンディエゴのコミュニティガーデンの様子。難民が自由に植物を育てることが出来る。農業に関心がある難民は、試作にも取り組める。

サンディエゴのコミュニティガーデンの様子。難民が自由に植物を育てることが出来る。農業に関心がある難民は、試作にも取り組める。

 各NGOでは、政府予算だけでなく、自己資金や現物による補完も行いながら、定住プログラムを開発、実施しています。州によって公的支援やリソースが少しずつ異なるほか、NGOによっても細かなオペレーションやプログラムが異なります。プログラムの実際の実施は、職員だけでなく、多くのボランティアや民間企業、地域コミュニティに支えられています。何より難民の背景をもつ人々が、定住プログラムに従事する通訳やケースマネジャーとして、生き生きと働いている様子も非常に印象的でした。彼らの貢献によって、NGOは何カ国語もの言語で、サービスを提供することが出来るのです。

 

◆今後の取り組みに向けて

フェニックスでの会合の様子。FRJからは、日本の難民支援NGOのネットワークとしての役割や活動を発表しました。

フェニックスでの会合の様子。FRJからは、日本の難民支援NGOのネットワークとしての役割や活動を発表しました。

 視察の間、サンディエゴでは公開シンポジウムも開催。日米韓での取り組みを共有し、会場一体となり議論を深めました。フェニックスでは、関係者が集い、日米韓それぞれの取組みを共有したほか、難民の就労に関するパネルトークも開かれ、雇用主なども登壇し、盛んな意見交換が行われました。日韓に比べ、米国の難民受け入れは、規模感はもちろん、定住する難民や受け入れ社会自身の多様性が確かに大きく異なります。しかし、初めから全てが備わっていたわけではなく、社会全体で受け入れに取り組み、難民もその一員となっていくことで、リソースを増やし、より良いプログラム運営に繋げていることが分かります。今後もFRJは、米国・韓国とのパートナーシップを更に強化しながら、日本のNGOのネットワークとして、日本社会全体への働きかけ、日本の難民受け入れ関する多様なステークホルダーの恊働・対話づくりに取り組み、より良い政策や制度設計に繋げていきます。(檜山怜美)