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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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国際協力の現場から

国際協力の現場から2022/01/12

2021年6月より「DRR Project in Yemen」が始動


 DRRプロジェクトは、2018年からソマリアで本格的に開始した事業であり、この度中東のイエメンでも開始する運びとなりました。

 イエメンの混乱のきっかけは2011年の「アラブの春」でした。当時30年以上続いたサレハ政権の退陣を求めてデモが激化。政権崩壊後、民主化への移行が難航し、混乱が続きました。2015年イスラム教シーア派系のフーシ派と呼ばれる反政府勢力が暫定政権に対しクーデターを起こし、混乱が激化。以降、フーシ派とサレハ元大統領勢力、そしてUAEが支援する南部暫定評議会(STC)、「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」など、多数の勢力が内戦をさらに複雑化させています。私たちがこれまで活動してきたソマリアの近隣に位置しています。まさにイエメンは「世界最悪の人道危機」とも呼ばれ、現在も終息のめどが立っていません。武装勢力の支配下にある地域では、特に若者や子どもたちが洗脳や勧誘、仲間からの同調圧力により武装勢力からのリクルート活動の影響を受けやすく、2020年の国連報告書によると、686人の子供が武装グループにより兵士として利用されたと言われています。

 そのような状況の中で、地域社会間の亀裂が生まれ、若者の過激化が進み、憎しみの連鎖が醸成されていきます。その結果、暴力的過激主義組織から投降した後も社会への復帰ができないまま、再び過激化したり、元の武装組織に戻ったりしてしまいます。しかしながら、長期的な視点で見れば、彼らはまさに平和構築と紛争解決のアクターとなりうる存在のはずです。私たちは、現在のイエメンの若者を取り巻く環境に下記3つの問題があると考えています。

①武装勢力から抜け出すことができない

②武装勢力から抜け出せたとしても、社会でやり直すための仕組みやプログラムが欠如しているため若者として社会に復帰できない

③復帰できたとしても、紛争中のため社会側との和解が進まず社会側に受け入れられない

 これらの問題に取り組むため「DRR Project in Yemen」が開始されました。武装勢力から投降した若者と子どもたちに重点を置き、脱過激化と社会復帰、地域社会との和解醸成、雇用に必要な基礎教育とスキルの提供、プログラム達成後の継続的なフォローアップを実施しています。

 イエメンは、ソマリアのように紛争の最前線で支援に対する緊急度が高いにも関わらず、世界から取り残され見捨てられてきました。誰もできていない、やれていない仕事こそ、アクセプトがやるべきだと考え、イエメン事業に取り組むことを決定しました。当初は2025年からプロジェクトを開始する計画でしたが、ソマリアでのプロジェクトが順調に進んでおり、確実に成果を出しつつあるため当初の予定よりも早くイエメンでの事業に着手することとなりました。

 事業内でのコンセプトは「銃ではなく希望を持って未来を作る」です。イエメン事業においてはアクセプト・インターナショナルにとって新しい事業ですが、2021年6月から現在までですでに60名の元戦闘員の受け入れを行なっております。

DDR Project in Yemen 職業訓練の様子