国際協力の現場から
国際協力の現場から2019/01/23ツイート
FRJ:「難民に関するグローバル・コンパクト」が採択されました
新年明けましておめでとうございます。昨年のこととなりますが、12月17日午前(ニューヨーク時間)、国連総会の本会議で「難民に関するグローバル・コンパクト」(GCR, Global Compact on Refugees)が採択されました。GCRとは、どのような文書であり、今後何が期待されるのでしょうか。そして、日本にとってどのような意義をもつのでしょうか。
紛争や暴力、迫害などにより世界中で移動を余儀なくされる人の数は年々増加し、その数は2017年末時点で6,850万人にのぼっています。一方、難民のうち85%は発展途上国に避難をしており、特定の周辺国ばかりに負担が偏っているというのが現状です。GCRはこれらの問題への対応するために、2016年に国連総会にて開かれた「難民と移民に関する国連サミット」の成果文書である「ニューヨーク宣言」に基づき、約2年をかけて策定されてきた国際的な文書です。2017年以降、スイス・ジュネーブにて具体的な内容についての議論が行われ、6回にわたる公式討議の後に2018年7月に最終文書が確定。この公式討議には、FRJの加盟団体である難民支援協会を含む、いくつかの日本のNGOもオブザーバーとして参加してきました。第73回国連総会に提出された最終文書は、11月13日に第三委員会で採択(賛成176、反対1、棄権3)されました。それを受けて、12月17日の本会議において投票が実施され、米国に続いてハンガリーの2カ国が反対票を投じたものの、181か国の圧倒的多数の賛成で採択されました(棄権:3か国)。今後、4 年に1回の国連加盟国の閣僚級会合(さらにその中間年に、高級事務レベル会合)において、GCRの目標達成に向けた、各国・地域の誓約や貢献が確認されることになっています。
GCRには、法的拘束力はありませんが、FRJでは、先進国や周辺国の枠を越えて、世界の大多数の国が賛成した難民支援の指針として、非常に重要な意義を持つと考えています。日本でも、留学生を含む第三国としての受入れ拡充、難民認定状況の改善や、難民申請者の保護と自立の向上、それに関わるアクターの多様化などもGRFで示される、日本の具体的な貢献として挙げられるべきでしょう。記念すべき第1回目のGRFは、今年12月に開かれる予定です。
確かに、GCRは国家間で合意した文書ですが、国家だけではなく社会全体による難民受け入れの責任分担が必要であるとする、「社会全体でのアプローチ(whole of society approach)」が導入されている点も重要です。人道・開発に関する組織や自治体、企業、市民社会や教育機関、スポーツ・文化活動など、これまで以上に多様なアクターの参画により、留学生としての受け入れやプライベート(コミュニティ)・スポンサーシップ(民間主導による受け入れ)といった、難民問題の解決への新しい道が各模索されることが各国に期待されています。FRJは、そのいちアクターとして、難民当事者の方々や、多様なステークホルダーと連携し、難民がより安心して暮らせる社会を目指して引き続き活動を行ってまいります。
合わせて、ご覧ください。
・ FRJプレスリリース:「難民に関するグローバル・コンパクト」が採択されました
・ GFR採択関する 国連総会プレスリリース(英語)
・ GFR採択関する国連難民高等弁務官事務所( UNHCR)プレスリリース(日本語)
・ 採択された「難民に関するグローバル・コンパクト」の本文(英語)
(なんみんフォーラム事務局 檜山怜美)