国際協力の現場から
国際協力の現場から2018/06/21ツイート
JCBL:朝鮮半島の地雷について
2018年4月27日、南北首脳会談が開かれ、「朝鮮半島(韓半島)の平和と繁栄、統一のための板門店宣言」が発表されました。この前向きな進展は、世界を驚かせ、平和は可能だと示しました。まだこれから先にやるべきことは残されていますが、朝鮮半島における争いを終結させようという政治的な意志に、アジアの地雷廃絶キャンペーンは共同でメッセージを発表しました。
⇨JCBLプレスリリース『平和的に統一したコリアは地雷なきコリア』
朝鮮半島には沢山の地雷が埋まっています。なかでも朝鮮半島の軍事境界線の南北各2kmに及ぶ非武装中立地帯(DMZ)は、韓国側だけでも100万個の地雷が埋設されていると言われ、その埋設密度は世界一とされています。
韓国政府は北朝鮮からの脅威を理由に、オタワ条約(対人地雷全面禁止条約)に加盟していません。JCBLはオタワ条約の普遍化を進める活動の一環として、韓国地雷対策会議(KCBL)と協力し、韓国政府のオタワ条約加盟を促すための活動を企画推進してきました。
最初の協働事業は2001年の韓国の地雷原調査です。当時、韓国政府はDMZ周辺以外に地雷はないと公言しており、また朝鮮戦争以降一度も地雷被害者に関する調査を実施していませんでした。韓国全土に広がる地雷の実態調査を支援すべく、JCBLは費用の一部を拠出し、理事の清水と目加田も韓国に赴き一部調査に同行しました。調査の結果、韓国にはDMZ周辺以外にも36地域にも地雷原が存在することが判明し、DMZ周辺以外の地雷被害者が少なくとも31名いることが確認されました。翌年のワールドカップ開催予定都市であるソウル、釜山、大邸、仁川、蔚山にも地雷が埋設されていることが明らかになったのです。この事実は韓国で記者発表を行い、日本においても地雷被害者を招きシンポジウムを開催しました。
この調査結果は「韓国には民間人地雷被害者は一人もいないし、DMZ周辺以外には地雷原はない」という韓国政府の見解を撤回させました。新聞等のメディアで報じられた地雷事故だけでも1999~2006年の間に少なくとも民間人60人が被害を受けており、2011年の平和ナヌム会の報告書によると全国的に被害者総数は1000人を越すと言われています。
KCBLが作ったNGO「平和を分かち合う会(Peace Sharing Association)」が2010年に韓国北東部の江原道で行った調査では、地雷被害者はその地域だけで228名もいることが分かり、被害者とその家族の苦しい生活の実態が明らかになりました。手術費などの医療費で財産を失い、あるいは借金を負い貧しい生活を強いられ、被害者の子どもたちの学歴は、122名中92名が中学校卒業以下でした。被害者に過度な医療費の負担がかかるためです。
当時の国家賠償法は、被害から3年以内に被害の申し立てをしなければならないものでしたが、被害者の66%が国家賠償法の存在を知らなかったと言います。また、たくさんの被害者が移住時に管轄部隊と交わした覚書(爆発物による事故に対して異議申し立てをしない)のために賠償請求など考えられなかったと言います。
KCBLは、1960~1970年代に地雷の被害にあった人たちは韓国の安全保障政策の犠牲者でありながら韓国政府によってその存在が隠されてきた人たちであるので、国家はその罪を認め被害者に救済措置をとるべきだと主張を続けてきました。この問題への取り組みは10年以上続けられ、2015年3月、ついに「対人地雷被害者救済法」が施行されました。この特別法では、地雷による負傷者や死者の遺族に対する賠償金支払いなどの経済支援が盛り込まれており、3千人を上回ると予想される地雷被害者とその家族が報償金を受け取るようになりました。
最近の南北朝鮮の緊張緩和の動きに鑑み、KCBLの趙載国(チョウ・ジェイクック)氏を招いて講演会を開催します。東京・大阪2か所で開催します。ぜひお越しください。(幸坂説子)