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国際協力の現場から

国際協力の現場から2017/08/28

JCBL:地雷犠牲者ゼロを目指して


地雷犠牲者ゼロを目指して―条約を支えたサバイバーの軌跡

 JCBLは今年で発足20年を迎えました。20周年記念事業として、カンボジアよりトゥン・チャンナレット氏を招聘し、講演を行いました。チャンナレット氏は1982年にタイ・カンボジア国境で地雷を踏み両足を失いました。1993年にカンボジアに戻ると、自らも地雷被害者でありながら、他の地雷被害者のために車いす製作を始め、同時に地雷廃絶運動に参加しました。地雷禁止国際キャンペーン(ICBL)の国際大使として世界各国の要人に地雷廃絶を訴え、1997年にICBLがノーベル平和賞を受賞した際には地雷被害者を代表してメダルを受け取りました。現在もICBL国際大使として世界を飛び回る一方で、カンボジア国内での被害者支援に奔走しています。今回はその講演の内容をご報告いたします。

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カンボジア式の挨拶で講演がスタートしました。カンボジアではお互いの敬意を表する為にこのような挨拶をするそうです。

 『JCBLとはノーベル平和賞やオタワ条約(対人地雷全面禁止条約)の成立前から共に活動してきた縁もありますので、20周年記念のこの機会に講演をすることはとても光栄なことだと思っております。私はICBLの国際大使として活動をしています。ICBL大使にもいくつかタイプがありますが、私は草の根の立場の代表として活動しています。日本政府は1993年から現在に至るまで地雷対策に関する支援をしてくださっています。日本の皆様にとても感謝をしています。

ノーベル賞を97年に受賞して20年が経ち、オタワ条約には現在168ヵ国が加盟しています。しかし全ての国が条約に加盟しているわけではありません。残りの国も含めて全ての国が地雷を禁止していかなければなりません。そうしなければ、前世紀のように多くの人が傷つく可能性があります。地雷、クラスター爆弾、ミサイル、核兵器などの兵器がある中で、私たちがいま頑張らなければ、次の世代の人たちはどのような世の中を迎えることになるでしょうか。私には子供が6人います。私は彼らに何を残すことができるでしょうか。もし皆さんが沢山のお金を持っていたら、あなたは子どもたちに何を残しますか。
ノーベル賞の後、いくつかの国は、地雷対策のお金を支援してくれました。しかしそれは今、どんどん減っています。でも私たちは被害者がゼロになることを目指したいし、目指していかなければならないと感じています。それは決して遠い話ではなく、できるだけ早く、明日にでも明後日にでも達成したいという思いがあります。そのために私たちはもっともっと強い一体感を持って、政府あるいはドナーに訴えかけて被害者をゼロにする力をつけなければなりません。

チャンナレット氏の言葉はとてもパワーがあり、心に残るお話でした。メモをとりながら真剣に聞く来場者の姿も多く見られました。

チャンナレット氏の言葉はとてもパワーがあり、心に残るお話でした。メモをとりながら真剣に聞く来場者の姿も多く見られました。

 日本とカンボジアを比較したいということではありませんが、少しその話をしたいと思います。日本は第二次世界大戦のときに原爆を落とされました。日本は戦後、再建のために努力をしてきました。そして日本の復興はとても速かったです。一方カンボジアは、長い内戦や地雷に悩まされてきました。しかしカンボジア政府はそれをまともに修復できているとは思えません。汚職などの問題も無視できません。ボランティアなど無償で様々な問題に向き合おうとしている人がいる一方、やはり政府要人の汚職の問題があります。1993年に私は難民帰還としてカンボジアに戻りましたが、そのとき以来、問題はなかなか解決されていません。障害者の権利に関する条約があり、それに基づきプログラムが行われていますが、本当にそれを必要としている人に使われるというよりも、その事業に関わる役人のものになってしまうという現実もあります。

 昨夜、私が泊まった日本のホテルの部屋は、トイレもバスルームも全てバリアフリーになっていました。日本では障害者のアクセスがいろんな意味で確保されているのを見て、私は自分の実力を恥ずかしく思いました。カンボジアでも障害者のアクセスに関する様々な議論は聞きますが、ほぼ口だけで終わってしまいます。私は、実際に具体的な行動が必要だと思います。

 JCBLや上井さん(※1)は、何年も前からカンボジアで足を失った被害者のためにバリアフリートイレを支援するプロジェクトを続けています。支援活動は、その方法がとても大事です。単にお金を渡すだけではなく、実際に人々の暮らしを見ながら考えてほしい。JCBLの内海さんや上井さんは実際に現地にきて一緒に活動してくださいました。オタワ条約には貯蔵地雷の廃棄や埋設地雷の除去など様々な規定が盛り込まれておりますが、被害者支援に関してはやはり具体的な行動支援を続けていかなければなりません。これからもできるだけ長く続けていけるよう、みなさんと相談しながら続けていきたいと思っています。』
(※1 リズムネットワーク代表。JCBLのバリアフリートイレプロジェクトを2014年より引き継いでいる)

 講演は、今後の課題について、そして質疑応答へと続きます(続く)。 (幸坂説子)