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国際協力の現場から

国際協力の現場から2017/06/21

JCBL:「クラスター爆弾への世界の投資―共通する責任」最新版報告


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Worldwide Investments in Cluster Munitions-a shared responsibility(クラスター爆弾への世界の投資―共通する責任)第8版

「クラスター爆弾への世界の投資―共通する責任」の最新版(第8版)が、2017年5月23日、世界で同時に発表されました。(報告書については前回の活動報告をご参照ください )

 発表の記者会見は、今回初めて東京で開かれました。報告書を執筆しているオランダのNGO(PAX)とクラスター兵器連合(CMC)より、東京で記者発表をしたいとJCBLに相談があり実現したものです。なぜ日本なのでしょうか。それは、報告書で「不名誉リスト」に挙がった金融機関の数が、クラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)締約国の中で日本が最も多いという、まさに「不名誉」な理由によるものです。

 報告書ではクラスター爆弾製造企業に投資している金融機関を「不名誉リスト(Hall of Shame)」、投融資を禁止している機関を「名誉リスト(Hall of Fame)」、取り組みは進めているものの不十分な機関を「次点リスト(Runners-up)」の3つに分類し公表しています。

◆最新報告書の要点
 調査の対象期間(2013年6月1日~2017年3月17日)において、クラスター爆弾の製造が明らかとなったのは6社(China Aerospace Science and Industry(中国)、Norinco (中国)、Hanwha (韓国)、Poongsan (韓国)、Orbital ATK (米国)、Textron (米国) )です。
 世界で166の金融機関が、延べ310億ドルを上記の6社に投融資していました。金融機関の数が多かった国は、1位米国、2位中国、3位韓国です。166の金融機関の内、オスロ条約の締約国の金融機関は15なのに対し、締約国でない国の金融機関は151に上ることから、条約加盟と金融機関の取り組みには相関関係が認められることが分かります。

◆日本の投融資状況
 日本の金融機関で「不名誉リスト」に名を連ねたのは、第一生命、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、オリックスの4社で、全て米国のOrbital ATK社及びTextron社に対する債権や融資等でした 。
 三菱UFJフィナンシャル・グループはクラスター爆弾製造企業との取引額で世界の7位に入っており、融資額でも3位、投資・銀行業務でも5位に入っています。
「名誉リスト」入りした日本の金融機関はなく、前回に引き続き三井住友信託銀行(SMTB)が「次点リスト」に入りました。SMTBは、クラスター爆弾製造企業を投資対象から除外しているものの、その方針が関連企業である三井住友トラスト・アセットマネジメント及び日興アセットマネジメントに及んでいない点が不十分と指摘されています。

◆報告書発表関連キャンペーン活動
 PAXのMaaike Benese氏とCMCのFiroz Alizada氏の来日中、記者会見以外にも各方面へ働きかけを行いました。
 

中央左がFiroz Alizada氏(CMC),中央右がMaaike Benese氏(撮影:吉田敬三氏)

中央左がFiroz Alizada氏(CMC),中央右がMaaike Benese氏(撮影:吉田敬三氏)

 5月23日の日本外国特派員協会での記者会見には、朝日新聞、佼成新聞、産経新聞、創価学会インターナショナル、東京新聞、毎日新聞、Bloomberg (US)、Pan Orient News ( Middle East)、 SkyTG 24 (Italy)、TV朝日、TBS、NHKの他、日本やドイツのフリーランス記者も含め28名が参加しました。会見の模様は同日の「報道ステーション」(テレビ朝日系列)や夜のTBS系列のニュースで報道された他、翌日から朝日新聞や東京新聞や毎日新聞、ラジオ等で相次いで報じられました。
 翌24日は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と面談をしました。PAXのMaaikeは、最新報告書にGPIFの記載はないものの、次回以降の報告書で「不名誉リスト」に入る可能性がある点を指摘し、国民の年金が国際法で禁止されている兵器の製造に使われることのないよう要請しました。
 24日の午後は、参議院会館で院内集会を開催しました。院内集会は社民党の福島みずほ参議院議員の尽力で実現したもので、当日は民進党の藤田幸久参議院議員や共産党の笠井亮衆議院議員、民進党の辻元清美衆議院議員も参加されました。クラスター爆弾投資禁止をする国内法や規定を日本でも制定できないのかということも含め、規定のある国の事例を紹介しました。会場にはメディアやNGOの方も多く参加されました。

173x115不名誉リストに挙がった日本の金融機関4社について 173x115院内集会の様子
「投融資ヤメテ」と日本語のキャンペーン動画も撮影しました

「投融資ヤメテ」と日本語のキャンペーン動画も撮影しました

 院内集会の後、大手町の大手金融機関の前で、「STOP EXPLOSIVE INVESTMENT」の垂れ幕を掲げて、キャンペーン写真や動画の撮影をしました。
 「投融資ヤメテ」と日本語のキャンペーン動画も撮影しました 翌25日は、外務省の通常兵器室と面談をしました。日本政府には引き続き条約の普遍化への取り組みや、犠牲者支援の継続をするよう要請しました。特に普遍化については、加盟国の少ないアジア・太平洋地域の各国の大使にも積極的に働きかけるよう求めました。
 25日の午後は、金融機関との意見交換会を予定していました。JCBL事務局から約330の金融機関にレターを送り、また、不名誉リスト入りした4社と、不名誉リストには載らなかったもののクラスター爆弾製造企業への投融資が明らかになっている金融機関7社には直接電話をかけましたが、一社からも出席の回答は無く、意見交換会はキャンセルとなりました。とても残念です。みなさんぜひ「私のお金、私の責任」という声ある預金者になって日本の金融機関の意識改革にお力添えください。JCBLは今後も引き続き、投融資禁止キャンペーンに力を入れてまいります!
※「クラスター爆弾への世界の投資―共通する責任」第8版の全文は、こちらよりダウンロードできます。日本語要旨については、JCBLのホームページからご覧ください。