国際協力の現場から
国際協力の現場から2016/12/27ツイート
FoE:パリ協定発効と日本のエネルギー政策
2016年11月4日、気候変動防止の新しい枠組み、パリ協定が発効しました。パリ協定は、2015年12月、COP21パリ会議にて先進国、途上国の参加で合意されました。これまで先進国と途上国の立場には大きな隔たりがある中での、「歴史的な合意」には、
・気温上昇を2℃未満、できれば1.5℃までに抑えることをめざす
・今世紀後半には、温室効果ガスの排出を実質ゼロに
・気候変動の「損失と被害」に今後対策を取っていくことも書き込まれる
・5年ごとに目標を見直しし、より厳しいものにしていく
など、前進といえるものでした。
しかしながら、現在各国が提出している削減目標では、世界の平均気温の3度以上上昇は避けられません。その時に、被害影響を受けるのは、アジアやアフリカ、中南米の途上国です。
●日本の気候変動・エネルギー政策
日本の削減目標と政策はどうでしょうか。2015年7月に日本が国連に提出した目標は、2030年に、2005年比で26%削減(1990年比では18%削減)というものです。先進国各国が1990年比で30~50%という水準で提出しているなか、不十分なものです。今後より厳しい目標への改善が急務です。
以下、その内容を見ていきましょう。
1)産業界や電力業界に規制せず、「国民運動」を強調
排出量が多く社会の根幹にかかわる産業部門・エネルギー部門については「自主的取り組み」に任せているのに対し、業務部門・家庭部門については「4割削減が必要」とし、「国民運動の強化」を強調しており、非常にアンバランスです。こまめな省エネや節電はすでに以前から取り組まれています。
2)世界の流れに逆行して石炭火力発電の新増設を容認している
電力システム改革、小売全面自由化が決まった2013年以降、「より安い」電源確保のために、石炭火力発電所の新増設計画が相次いでいます。2016年12月現在48基(うち1基はすでに発電開始)にものぼり、合計設備容量は2280万kW(原発20基分相当)です。仮にこれらがすべて稼働すれば、さらに厳しい削減が求められるパリ協定の合意に全く逆行してしまいます。これに対し、排出総量の規制はなく、電力業界は「非化石電源」の活用でkWhあたりの排出量を抑えるという自主目標を掲げるにとどまっています。
3)「温暖化対策」を原子力発電推進の隠れ蓑としている
日本の温暖化対策では、原子力発電の活用が一つの大きな柱として掲げられています。「非化石電源活用」の大義名分で原発の再稼働や40年超の運転も推進されています。しかしながら、原発は万一の事故のリスクが甚大であることから、当然用いるべきではありません。
4)なぜ温暖化対策が必要か、Climate Justiceの視点が必要
そもそも、なぜ温暖化対策が必要なのか。実際にもう起き始めている被害を食い止めることを大前提とすべきです。
●国際的な責任を果たし、持続可能な社会に向かうために・・
現在の日本のエネルギー政策の方向性は、パリ協定の合意にまったく反しています。現在各国は、遅くとも2020年までに、2050年に向けた長期目標を提出することとなっています。日本でも経済産業省と環境省で議論が行われ、今年度中にはなんらかのとりまとめが行われる見込みです。また、2017年度はエネルギー基本計画の見直しが予定されています。抜本的な見直しに向けて、市民から声を上げることも必要です。(吉田明子)