国際協力の現場から
国際協力の現場から2016/11/17ツイート
FRJ:収容を最終手段へ。
収容を最終手段へ。それぞれの庇護希望者が適切な保護を受けられるように。
難民の収容を防ぐ取り組みアップデート — 海外ゲストを招聘しました
10月末に、入管収容の海外専門家を日本に招聘しました。9月のコラム「難民の収容を防ぐ —なんみんフォーラムの取り組み」に引き続き、この「収容」に関するFRJの活動のアップデートをしたいと思います。
9月のコラムでは、日本に逃れてくる難民の中には、庇護を求め、難民認定を待っている間に法務省入国管理局の施設に収容されてしまう人もいること、また、不必要な入管収容を減らすための国際的取組み「収容代替措置(Alternatives to Detention : ATD)」が世界的に広がっていることについて触れました。収容代替措置の各国での法制化と実施は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)も推進しているものです。UNHCRは、2014年より、庇護申請者、難民、そして無国籍者の収容の廃止を訴える世界的戦略「Global Strategy Beyond Detention」を打ち出し、子どもに対する収容をやめ、収容代替措置が法制化され、実際に実行にされること、そして収容を避けられない場合には収容所における環境が国際基準を満たすものであることを保障するよう呼びかけています。FRJは、各国での収容代替措置の導入に向け国際的に活動しているオーストラリアのネットワーク団体、国際拘禁連盟(IDC)と協力・連携し、日本での収容代替措置の発展に取り組んでいます。先月10月末には、UNHCR、日本弁護士会(日弁連)と協力し、IDCを含む海外からゲストを招きアドボカシーにも取り組みました。
背景・目的
空港での庇護希望者を対象に、日本で収容代替措置が導入されたのは、2012年のことです。その前年の2011年、法務省、日本弁護士連合会(日弁連)、FRJ、IDC、UNHCRは、収容代替措置に関する日本で初めての円卓会議を開催しました。今回の海外ゲストの招聘は、そのフォローアップとして企画されたものです。収容代替措置に関する最新の知見、他国の良い先例を通して、日本での収容代替措置の関心を高め、発展に向けた議論を深めることが目的です。
来日した海外専門家のご紹介
今回、2011年にも来日した国際拘禁連盟(IDC)に加えて、米国国土安全保障省移民関税執行局(ICE)や、FRJも加盟するアジア太平洋難民の権利ネットワーク(APPRN)からも関係者を招聘しました。
ICEは、近年、収容政策の見直しに着手し、収容者の削減に取り組んできました。収容を最終手段とし、また収容代替措置を行う場合であればどのように実施すれば良いのかを判断するために、収容前にリスク、ニーズ、脆弱性などを特定できるよう、スクリーニングツールの開発にも取り組んだ経験があります。また、収容代替措置の1つとして、家族ケースについて、コミュニティに暮らすオプションを維持しながら、当事者が包括的なケース・マネジメントサービスにアクセスできるプログラムも提供しています。対象者は、妊婦、乳児を養育している母親、幼児と暮らす家族、その他特別なニーズを抱えている家族など脆弱性をもつケースです。このプログラムを担当するICEの擁護事業課の次長および政策アナリスト、また米国のATD全体を担当する収容代替措置課の係長の3名が来日しました。
また、IDCからは代表およびアジア太平洋地域担当、APPRNからは事務局長および事務局次長が参加しました。IDCは、2015年に最新の研究成果をまとめた”There are Alternatives”を更新し、収容代替措置が世界にもたらす恩恵と良い実践、収容代替措置実施に向けた必要なガイダンスを示しています。また、UNHCRと共同で、個人の脆弱性を特定し、対応していくためのスクリーニングツールを開発し、今年2016年に発表しています(参照: UNHCR and IDC (2016), Vulnerability Screening Tool – Identifying and addressing vulnerability: a tool for asylum and migration systems )。日本に限らず、入国管理上の理由から収容される人々の中には、無国籍者、紛争や自然災害のために帰国できない人、さらに女性、高齢者、疾患のある人なども含まれ、庇護希望者や人身売買の被害者も含まれています。このような特別な保護を必要とする可能性のある人たちを特定するには、必要なツールとオペレーションを開発し、個々のニーズや脆弱性を知ること、また収容を回避し、最も適切な措置と保護を評価していく必要があります。
来日中のプログラム
2日間という短い期間でしたが、主に下記のプログラムを実施しました。
• 東京入国管理局の訪問
• ATDに関する研究会
• 国会議員との入管収容に関する会議
収容代替措置に関する研究会は、UNHCR、日本弁護士会(日弁連)、FRJの共催で実施し、30名ほどが参加しました。UNHCR、海外ゲスト、法務省がそれぞれ登壇し、国際的および地域的な取り組みを踏まえながら、日米の収容代替措置に関する取り組みに関しての知見を共有し、議論を深めました。研究会に先立ち、海外ゲストは東京入国管理局も訪問し、収容場の運営について説明を受け、実際に施設内を見学しました。一連のプログラムは、LUSHジャパンの助成により実施されたものです。
加えて、上記プログラム終了後には、海外ゲストは10月28日に開かれた2016年度第1回難民支援者全国会議にも参加しました。本会議は、独立行政法人福祉医療機構(WAM)による助成事業の一貫として、認定NPO法人難民支援協会(JAR)が主催したもので、FRJは運営を担当しました。当日は、長崎より支援関係者を招いての長期収容施設である大村入国管理センターでの活動報告や、収容代替措置に関するワークショップ、収容代替措置の対象となったケースや脆弱性の高いケースなど具体例をもとに個別支援の在り方を考える分科会、また熊本の震災における外国人被災者支援に関する講演会など、入管収容や個別支援、そして災害時の緊急支援まで、幅広いテーマを取り扱いました。
10月28日朝に行われた国会議員との会議の様子。入管収容に特化して会議をもったのは初めて。超党派6名の議員のご参加をいただき、非常に多くのご意見・ご質問をいただきました。 | 難民支援者全国会議の様子。難民支援に関わる弁護士、NGO、企業など、国内外の支援関係者50名ほどが集まりました。 |
プログラムを終えて
日本における空港での庇護希望者を対象にした収容代替措置は、国際社会でも評価を得ているものであり、今後もアジア地域で日本がどのように収容問題への取り組みの先駆的役割を果たしていくことが出来るのかが注目されています。その中で、今回5年ぶりのフォローアップが実現したこと、また、政策や実務に携わる方々を交えて、これまでの日本の成果と課題を共有し、最新の各国の知見を得ることが出来たことは重要な意義を持ったと考えています。同時に、今後に向けては、支援関係者間においても、具体的な支援のあり方や、より良い官民連携に向けた体制作りに努めていく必要があります。 これからも、FRJは、必要な社会資源の活用や民間の支援ネットワークを強化しながら、より良い難民保護に向けて、こうした官民連携の取り組みを進めていきます。 (なんみんフォーラム事務局)