国際協力の現場から
国際協力の現場から2013/06/13ツイート
AAN:「未来の水利用のあり方」を考えるワークショップ
「未来の水利用のあり方」を考えるワークショップを東京・宮崎で開催
アジア砒素ネットワーク(AAN))は地下水に砒素汚染があり、行政単独では安全な水供給が難しいガンジス流域で、コミュニティ主体の水供給支援という貴重な経験をしてきました。
この経験を整理すれば、もっと広い地域で有効活用できるのではないか。深刻な課題が近年表面化する日本でも役立つ部分があるのではないか。こう考えて、2月のガンジス流域3ヶ国のワークショップに続き、5月に東京、6月に宮崎で、未来の水の利用のあり方を考えるワークショップを開催しました。議論の前後に、地下水保全運動を支援している応用地質研究会メンバー、生物浄化法の普及に取り組む中本信忠氏、水道局元技術者(AAN理事)が報告をしました。
ワークショップは「未来にわたって誰もが安全な水を安定的に得るうえで、あなたが感じる不安や問題意識は何ですか」という質問から始めました。初めは「日本の水問題なんて思いつかない」と悩む人もいましたが、専門家の報告とガンジス・ワークショップの成果を参考にしてもらったところ、様々な視点が出され、議論は盛り上がりました。
問題点として、水質汚染、水資源の保全、情報不足、水道システム、老朽化する施設の維持管理、利用者の意識、民間委託化などがあげられました。特に東京では放射性物質の汚染と断水時の水確保に触れる方が多く、3.11の影響がうかがえました。
これらのワークショップ活動の結果、AANの「未来の水利用に向けての提言」は以下のようにまとめることができました。
1. 生存権の一部として水供給は今後も行政が責任を持つ
2. 環境負荷が少ない水源と浄化方法を選択する
3. 災害時に備え、複数のルートで水が確保できる強靭なコミュニティを増やす
4. 1~3の実現のためにも水源保全に一層努める
ガンジス流域の経験を活かし、今後は国内で「未来の水利用」に向けての問題提起、啓発活動、適正技術(生物浄化法や地下水利用等)の紹介、およびコミュニティの支援等、徐々に取り組んでいきたいと考えています。(石山民子)