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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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国際協力の現場から

国際協力の現場から2011/05/10

シャプラニール:地域に支えられるドロップインセンター


シャプラニール活動報告

 シャプラニールが「オポロジェヨ・バングラデシュ」という地元NGOとパートナーシップを結び、ダッカのストリートチルドレンの支援事業を開始したのが2000年。そこから10年が経ち、事業開始当初はストリートチルドレンをやっかい者として敵対視していた地域の人たちも今では子どもたちを支援する側になりました。ドロップイン・センター(以下、DIC)で子どもたちが食べる給食用のお米や野菜を、周辺の米問屋や野菜の卸売市場が寄付してくれるのです。また、近隣のスラムに住む人々でさえも、「他人事ではない」と捉えて決して楽ではない生活の中から現金をとりわけて寄付してくれるようになっています。

 ここまでの道のりは決して楽なものではありませんでした。DICや青空学級を続けながら、同時に地域住民の方たちへ地道に、根気強く働きかけることで、ようやく「この子たちは地域に生活する自分たちの子どもと同じだ」という意識を持ってもらえたのです。

 ですが地域の人たちに主体的にDIC運営に携わってもらうという目標は、未だ道半ばにあります。地域住民の中にもNGOを福祉団体のように捉えて任せておけば良いと考える人や、継続的な寄付に抵抗を示す人もあります。また食料品価格が上昇してくると、それに伴って野菜やお米の寄付も減ってきます。地域の継続的な支援者を中心としてファンド管理委員会の設置に向けた取り組みも始まりましたが、設立までには至っていません。10年の歳月を経て地域住民の意識変革という成果を得ることができたのですが、事業運営において地域の人たちの関わりをいかにして引き出していくか、という点で新たな課題に直面しています。

 その反面、予想もしていなかった嬉しい成果も得られました。それはDICの卒業生たちです。10年前DICにやってきたとき8歳だった少年も今では18歳。立派に成長した彼らはオートリキシャのドライバーや縫製工場への勤務、中にはNGOに就職して社会活動を行うなど自分たちの生きる道を見つけ、日々生業に励んでいます。

 昨年夏のラマダン(約1か月の間、日の出から日没まで一切の飲食を断つイスラム教の宗教行事)期間中には卒業生たち30名が一堂に介し、イフタール(ラマダン期間中、日没後最初に摂る食事)パーティという形で「同窓会」を開きました。彼らは卒業後、どこで、どのように暮らしているかについて熱心に話しあっていました。オポロジェヨ・バングラデシュのプロジェクトマネージャーから「現在DICが地域住民の支援を受けつつ運営されている」ということを聞き、「是非自分たちにもそれぞれの分に応じてサポートさせて欲しい」と申し出てくれました。この日、DICの「在校生」が摂ったイフタールの費用を全て賄ってくれたのも卒業生たちです。

 卒業生の中にはDICの子どもたちを自分の妹や弟のように考え、訪問する機会がある度に必ずチョコレートなどのお菓子を持ってくる人もいます。10年という時間の流れが、世代の異なるストリートチルドレンの間に絆を生みました。出来れば地域の人たちとストリートチルドレンとのつながりが今以上に深まり、世代間の絆が続いて欲しい。これがシャプラニールの願いです。(ダッカ駐在員 菅原伸忠)