国際協力の現場から
国際協力の現場から2010/10/24ツイート
シェア:力を発揮した村
力を発揮した村 ーシェアの旧活動地で、自立した活動が継続されています。
現在、シェアはウボンラーチャターニー県ケマラート郡というラオス国境でエイズの活動を行っています。ケマラートに移る前の2007年末までは、同県のウボンラーチャターニー市近郊の農村地域で、HIV陽性者への支援と、地域住民のボランティアによるエイズ予防啓発活動を実施していました。先月、シェアの旧活動地の一つである、フアイカユン村を久しぶりに訪問してきました。
活動開始当初、フアイカユン村の住民は、エイズの正しい知識や情報が十分でなく、強い差別・偏見がありました。シェアがフアイカユン村で住民によるエイズボランティアを育成していった結果、住民自体がエイズに関する予防啓発活動が出来るようにまでになりました。その後、フアイカユン村のエイズボランティアの代表が国レベルで表彰され、優れた社会的な活動をしている村として全国的にも有名になっていきました。
今回は、卒業した学校を訪れたような懐かしい気持ちで、フアイカユン村を久しぶりに訪問しました。シェアの活動終了後、どのように村人だけで活動を継続しているのか、さらにどのように変化し成長しているのか、興味がある反面、少し心配しながら村をまわりました。
実際に村で話を聞き活動を見ていく中で、その心配は無用だったということがすぐにわかりました。驚いたことに、シェアの活動終了後、フアイカユン村はさらに進歩していました。フアイカユン村ではエイズに対する理解が深まったことで差別・偏見も減り、村での受け入れがしっかりしているということで、村の保健センターでHIV陽性者グループが発足したのです。また定期的にエイズキャンペーン等の啓発活動も行われていました。
シェアがフアイカユン村を離れた当時、HIV陽性の方は郡病院まで交通費をかけて抗HIV薬を受け取りに行かねばなりませんでした。しかし村での陽性者グループ発足により、保健センターで毎月1回月例会を行い、その場で抗HIV薬を受け取れるようになったのです。またフアイカユン村の陽性者のリーダーが、村内の体調の悪い陽性者の家庭訪問をすることも活動として加わりました。シェアが活動していた頃に一緒に取り組んでいたワリン郡病院のHIV陽性者グループのサダオワーン、そしてフアイカユン村のエイズボランティアグループ、彼らが保健センターや病院と協力しながら、フアイカユンの陽性者グループを支え、家庭訪問や月例会などのノウハウを伝えています。シェアの活動終了後、新しいシステムを住民と陽性者自ら作り上げ、さらにエイズの活動が進化している姿を見ることができました。
フアイカユン村陽性者グループの代表の方からは、「シェアが土台を作ってくれたから、自分は全く差別にあうこともなく、村人と協力して活動がスムーズにできる。ありがとう」という言葉をいただきました。シェアが作り上げたネットワークがより緊密な関係を持ち、村の資金や資源を活用しながら、お互いに協力してエイズの問題に取り組んでいる。私はこの様子を見ながら、フアイカユン村はまさに自立した活動ができるようになり、さらに世界でのエイズの問題解決のためのヒントを持っていると思いました。シェアの長年の継続した活動の産物として、フアイカユン村がさらに成長するのを、見ていくのがとても楽しみです。(西山美希)