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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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平和人権/アジア

平和人権/アジア2026/05/14

タイ・カンボジア国境地域での緊急支援


2025年末から激化したタイ・カンボジア国境地域での武力紛争により、64万人を超す人々が避難する事態となりました。アーユスは、NGOのシェア=国際保健協力市民の会(以下、シェア)が実施した緊急避難民支援に協力。シェアからの、3月末までの活動の報告です。

紛争の影響と広がる避難生活

2025年7月以降、カンボジア北部の国境地帯では武力衝突が発生し、多くの住民が突然の避難を余儀なくされました。停戦合意がなされる場面もありましたが、12月には再び戦闘が激化し、影響は北西部の広い地域へと拡大しました。ピーク時には64万人以上が避難を強いられ、家や仕事、日常の暮らしを失う事態に。さらに、空爆音やドローンの飛行による継続的な恐怖にさらされ、深刻なストレスも抱えていました。

シェアが2017年から子どもの栄養改善活動を実施していたプレアビヒア州では、約3万6千人が避難。多くが親族宅やパゴダ(仏教寺院)に身を寄せ、過密な環境の中で不安定な避難生活を続けていました。道路の遮断や市場機能の停滞により、食料や生活必需品の入手は困難に。公的支援も十分とは言えず、NGOなど外部からの継続した支援も届いていませんでした。

緊急物資の配布と保健・衛生支援

避難民の方々へ支援物資を配っているシェアのスタッフ

シェアは現地で10年近くにわたり活動を行っていたことから、これまで築いてきた州当局をはじめ関係機関との信頼関係をもとに、治安状況や避難民の状況、求められている支援について情報を収集しました。そのうえで、特に支援が届きにくい世帯を優先し、避難世帯への緊急物資配布を実施しました。

配布したのは、米や食用油、現地の人たちの食卓に欠かせない数種類の調味料、洗剤など、1世帯が約1週間生活できる基本的な物資です。1セットあたり約2,000円の支援が、避難生活を支える大きな助けとなりました。

支援物資の受け取りを待つ避難者の方々

特に、親戚宅に避難している世帯が多い地域は、これまで支援対象から漏れやすかったため、シェアの支援に対して感謝の声が多く聞かれました。

また、物資配布とあわせて、保健・衛生に関する啓発活動も実施しました。避難所では給水設備やトイレの数が限られ、粉じんや寒暖差の影響で体調を崩す人も少なくありません。特に子どもたちの衛生状態や、女性のプライバシー確保など、見えにくい課題も浮かび上がっており、基本的な健康維持のための情報提供を行いました。

避難者の声と、支え合いの力——これからに向けて

避難所の様子

避難生活は長期化しており、「収穫ができず収入がない」「支援だけでは食料が足りない」といった切実な声も聞かれました。一方で、避難者同士が助け合いながら生活する様子も多く見られました。家族が離れ離れになりながらも懸命に日々を支え、周囲の人々と支え合いながら前向きに過ごそうとされていました。

また、物資配布の際には、多くの避難者が自主的に運搬を手伝ってくださり、混乱もなく円滑に活動を実施することができました。厳しい状況の中でも互いに支え合う地域の力強さが感じられました。

今回の支援は、命と健康、そして人としての尊厳を守るための緊急的な取り組みです。同時に、「自分たちは見守られている」という安心感を届け、現地の人々にとって大きな心の支えとなることができました。


現在、紛争はひとまずの落ち着きを見せ、シェアの緊急支援は3月末をもっていったん終了しました。壊された生活の再建が始まる一方で、まだ帰還できない人もいます。シェアは今後も現地での活動を続けていかれます。

事業名:国境地域避難住民に対する緊急物資配布事業
実施団体:特定非営利活動法人 シェア=国際保健協力市民の会