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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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平和人権/アジア

平和人権/アジア2016/12/13

“テロの時代”それでも私が国際協力を続ける理由


過酷な児童労働からの解放へ。バングラデシュの少女たちに教育を!

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2016年7月、バングラデシュ首都ダッカで起きた人質テロ

日本人7名を含む20名の人質が命を落としたこの事件は、44年間にわたりバングラデシュで活動を続ける私たちにとっても大きな衝撃でした。この事件の予兆は、2015年9月に援助機関スタッフのイタリア人男性が、10月に農業技術支援をしていた日本人男性がISを名乗る武装組織に殺害されたときに始まりました。私たちはこれらの事件を機に「自分たちNGOもターゲットになり得る」と確信し、当時ダッカ事務所長だった私ともう一人の駐在員は細心の注意をもって行動していました。不穏な空気が漂う中、ついに事件は起きてしまいました。

 

なぜ、私たちは現地で活動を続けるのか

事件発生後、シャプラニール内では駐在員を退避させたほうがいいのではないかという意見もありました。バングラデシュでの活動継続の是非についても議論をしました。しかし、私は活動継続を主張しました。

理由の一つは、事件の背景が明らかになっていない状況で一度でも帰国してしまえば、100%安全と言えない状況下でバングラデシュに戻るきっかけを掴めず、二度と日本人職員が戻れなくなるであろうということが直感的に分かったためです。とにかく自分はバングラデシュに残り、ダッカ事務所の安全管理体制の確立に着手すると決めました。事件当日はイード休暇(バングラデシュで年に2回ある長期休暇)の真っ最中だったため「休暇明けにスタッフに自分の姿を見せ、安心させなければ」とも思いました。後に休み明けに事務所に集まったスタッフの泣き出しそうな顔を見て、その決断は正しかったと感じました。

また、バングラデシュから撤退すべきでないもう一つの理由として、シャプラニールが2006年から進めている、バングラデシュに33万人存在するといわれる家事使用人として従事する少女たちを支援するためのプロジェクトへの影響があげられます。貧困を理由に親に他人の家に送られ、家事をして働く少女たちの労働環境は過酷です。食事の準備、片付け、掃除、洗濯、買い物から子どもの世話に朝から晩まで追われ、学校に行く時間もありません。外から見えにくい労働環境のため、バングラデシュの最低賃金の十分の一という少ない賃金で働かされていたり、雇用主からの暴力やレイプ、死亡事件といった深刻な事件も起きています。このように、子どもという弱い立場にあることから、教育の機会や子どもの権利を奪われるだけでなく、生命の危機にさらされる悲惨な状況下にあります。私たちはこれまで、少女たちの過酷な状況を改善すべく、ヘルプセンターを運営しています。このヘルプセンターでは、少女たちが基礎教育や職業訓練を受けることができます。2015年度末までにのべ836人が教育の機会を得ています。

このプロジェクトには、私が大切にしている「原点」があります。アジアを旅した時に見た、身分や貧しさから、自分の努力だけでは将来を選択できない子どもたちの姿。『全ての人が持つ豊かな可能性が開花する社会』を実現する一助になりたい、その想いが民間企業から国際協力の世界に飛び込むきっかけとなりました。バングラデシュの少女たちが教育、職業訓練を受けることで、家事使用人以外の未来の選択肢を見つけて欲しい。格差や不公平が広がる中、この支援を今やめるわけにはいかないという私の強い意志が、シャプラニールの意思決定を後押したのかもしれません。最終的に、シャプラニールの危機対応マニュアルの改訂や、ダッカ事務所日本人駐在員の行動指針を見直し、安全対策を行ったうえで、会としての活動の継続が決定されました。

 

そして、クラウドファンディングへの挑戦

現在、私が呼びかけ人となり、さらに多くの少女たちが自分自身で人生の選択肢を選べるように、家事使用人に代わる仕事や夢を想像できるように、ダッカ市内に新たなヘルプセンターを運営するためのクラウドファンディングに挑戦しています。私たちの活動に共感していただけましたら、ぜひこの取り組みについてご協力いただけますよう、心よりお願い申し上げます。

ヘルプセンターに通う少女の表情や声のトーン、センターの先生への甘え方には少女一人一人の状況が如実に表れます。雇用主や保護者との対話の中では彼らもまた何かしら問題を抱えていることが分かったり、正論をぶつけるだけでは物事が進んでいかない現実を知ることができます。私は現場の声、肌感をこれからも大切にしたいと思うのです。私はこれからも、こういった現場のリアリティを基にした政府や行政への働きかけをしていきます。そして、何より私たちが出会えていない少女たちがまだたくさんいます。少しでも多くの少女たちとセンターで出会い、そしてその出会いを活かして社会を変えていきたいと思います。

(藤﨑文子)

 

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■藤﨑文子(ふじさきゆきこ)プロフィール

シャプラニール前バングラデシュ・ダッカ事務所長。山口県山口市生まれ。卒業後、新卒で大手自動車メーカーに就職するが、インドで目にした児童労働の現実が忘れられず、国際協力の現場へ転職。バングラデシュ駐在は6年半、うち2012年から2016年までの4年間バングラデシュ・ダッカ事務所長を務め、2016年8月よりシャプラニール東京事務所海外グループチーフに就任。シャプラニールの海外活動を統括する。

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【特定非営利活動法人シャプラニール=市民による海外協力の会とは】

シャプラニールは、バングラデシュの言葉ベンガル語で「睡蓮の家」という意味を持つ、1972年に創立された海外協力団体(NGO)です。バングラデシュやネパール、インドといった南アジアで、主に児童労働削減や地域防災活動、フェアトレード活動を行っています。外務大臣特別表彰(89年)、毎日国際交流賞(93年)、朝日社会福祉賞(05年)、沖縄平和賞(12年)、エクセレントNPO大賞(14年)受賞、日本パートナーシップ大賞優秀賞(15年)受賞。

【ウェブサイト】 https://www.shaplaneer.org/

 

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■クラウドファンディング概要

「過酷な児童労働からの解放へ。バングラデシュの少女たちに教育を!」

【目的】バングラデシュの少女たちを児童労働から解放し、教育を届けるためヘルプセンターを設立します。

【必要な支援金】310万円

【期限】12月20日(火)23:00時まで

【プロジェクト詳細ページ】https://goo.gl/ACVlvV

【問い合わせ】

特定非営利活動法人シャプラニール=市民による海外協力の会 担当:勝井、須藤、柳下、藤﨑

〒169-8611 東京都新宿区西早稲田2-3-1 早稲田奉仕園内

TEL:03-3202-7863  E-mail:info@shaplaneer.org

 

※ クラウドファンディングは、インターネットを通じて不特定多数の人から資金を集める仕組みのことです。一定期間の間に、目的の資金が集まった時点でプロジェクトが成立します。期日までに目的の資金が集まらなければプロジェクトは成立しません。

※ 現金・口座振込でのご寄付は、シャプラニール東京事務所で受け付けております。詳しくは上記問合せ先へご連絡ください。

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