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平和人権/アジア

平和人権/アジア2016/09/07

相互理解と友情を育む日朝市民交流


 好転の兆しが見えない厳しい日朝関係が続く中、今年も8月23日から30日まで「南北コリアと日本のともだち展」(以下、ともだち展)の訪問団の一員として平壌を訪問しました。ちょうど「200日戦闘(生産性向上のため住民を動員する運動)」の真っ直中で、市内各地にスローガンが掲げられ、至る所で建設ラッシュが起きていました。また、24日には弾道ミサイルの発射実験があって、翌日の労働新聞には一面で大きく「発射実験成功」の記事が掲載されましたが、平壌市内は特に何の変化もなくいつもの日常が続いているような印象をうけました。

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  今回の訪問の目的は、毎年続いている現地小学校での絵画交流と5回目を迎える日朝大学生交流を成功裏に終わらせること。それぞれの交流プログラムがうまくいって、相互理解がさらに進み、新たに芽生えた友情がその後の市民交流にいい形で引き継がれることが期待されました。細かい点での行き違いや立場の違いを改めて認識させられる場面もありましたが、全体を通して友好的な雰囲気の中で交流が進み、双方にとって実りの多い交流になったものと思います。

 絵画交流は「ともだち展」と15年以上の交流がある平壌市大同江区域にあるルンラ小学校で行われ、ともだち展関係者の指導のもと、同じ時期に訪問した日本の朝鮮学校の生徒とルンラ小の生徒が一緒に凧作りを行いました。製作した凧はルンラ小の校庭で日本の大学生も一緒になって揚げられました。最初はなかなか上手く揚がりませんでしたが、みんな必死に走ったおかげで幾つかは短い時間でしたがきれいに揚がりました。澄んだ青空が広がる平壌の空に様々な思いを持って揚げられた凧を見ていると、それが遠く日本の子どもたちまで届けばいいのにと思わずにはいられませんでした。この凧揚げ製作は、同じく「ともだち展」と親交のあるチャンギョン小学校でも行われ、これらの凧の数々は、来年2月に東京都内で開催される絵画展をはじめ、大阪や福岡等で行われるイベントでも展示される予定です。

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  一方、日朝大学生交流は今回で5回目を迎えましたが、今年は平壌外国語大学民族語日本語学科の5年生(最上級生)11名と日本の大学生8名の交流になりました。そのうち、平壌外大生の5名と日本人学生4名は2度目の参加であったため、はじめから打ち解けた雰囲気で会話が弾む場面も見られ、大学生交流が双方の中で少しずつ定着してきていることを実感することとなりました。

 今回の大学生交流では、平壌の新名所でもある中央動物園とイルカ館に行って、ガイドの説明を平壌外大生が日本語に通訳して日本の学生に伝えるという光景が見られ、外大生は日本語能力が格段に向上したように感じられました。日本の学生も通訳された日本語のおかしい部分を指摘するなど協力的で、こうしたやりとりから互いの距離がぐっと縮まったように思われます。

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 大学生交流は半日ずつ計3日間行われましたが、最終日は平壌の郊外にある名勝竜岳山のふもとでワークショップを実施。話したテーマは「今回の交流を通じて学んだこと」「将来の夢」。ポストイットにそれぞれが思い思いに書いて模造紙に貼っていくという作業で、朝鮮側の学生からは、「祖国統一のために働きたい」「ジャーナリストになりたい」「朝日国交正常化のために努力する」などの意見が出され、国の方針に従って自分が行うべき事を明確に意識している印象を受けました。双方とも「もっと交流したい」「また会いたい」という思いが強く、さまざまな制約ある中でいかに大学生交流の時間を増やし、交流の内容をより発展的なものにしていけるか、今後に向けての課題も見えてきたように感じました。

 今回の訪問団の人たちと接した平壌の人たちはみな日本人に対してよい印象を持ったことと思います。日本の人たちも平壌の人たちの気配りや温かいもてなしに触れて、政治体制や価値観は違えど、同じ人間として国境を越えた交流ができることを肌で実感したことと思います。このともだち展の交流は小さいものかもしれませんが、過去に絵画交流に参加した人がまた会いたくてやってくるような心と心の通い合った交流が15年以上も続けられていることに大きな意味があります。現在はなかなか互いの国を気軽に訪問できるようになっていませんが、いつかは自由に何の気兼ねもなく交流できる日を夢見ながら、このともだち展はさらに続いていくことになるでしょう。

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