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平和人権/アジア

平和人権/アジア2014/10/14

平壌で絵画展と大学生交流が行われました


 2014年8月18日から26日まで、「南北コリアと日本のともだち展」(以下、ともだち展)の訪問団の一員として平壌を訪問しました。今回の目的は、2006年以来、8年ぶりに子どもの絵の展示会を行うこと。そして、3年連続となる日本と平壌の大学生との交流で一つの成果物を作るということ。いずれも日本側からの強い働きかけや、受け入れていただいた現地関係者のご尽力のお陰で無事に成功裏に終わることができました。

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 絵画展の舞台となったのは、平壌市大同江区域にあるルンラ小学校。この小学校と「ともだち展」とは15年以上の交流があり、これまでも絵画の共同製作やワークショップの実施でご協力をいただいてきました。8月25日と26日に開催された「朝・日子ども絵画展」は、ルンラ小学校の他、同じく「ともだち展」と親交のあるチャンギョン小学校、日本の子どもたち、在日コリアンの子どもたちの絵、約100点が展示され、多くの来場者が詰めかけ、平壌の主要なテレビ局や新聞社などからも大勢の取材が訪れるなど、大いに盛り上がりました。絵を見るだけでなく、絵を描いた人のメッセージを読み、その人に対するメッセージを一生懸命に書く光景が繰り広げられ、国や民族の違いを乗り越えた心温まる交流のひとときを過ごすことになりました。

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 さらに、驚いたことは、日本の訪問団の通訳として期間中同行してくれていた平壌外国語大学日本語学科の女子学生が、実はルンラ小学校の卒業生で、しかも10年程前に「ともだち展」に参加して絵を描いたことがあるという事実が分かったこと。彼女は、「ともだち展」に参加したことで日本に興味を持ち、日本語を学ぶために平壌外国語大学日本語学科に進学したそうです。偶然にも、「ともだち展」の地道な交流の活動がこのように実を結んでいたことが分かり、関係者一同にとって最高の喜びとなりました。

 一方の大学生交流はというと、こちらは平壌外国語大学から積極的な協力が得られ、日本側から6名、平壌外国語大学からは日本語学科の12名の学生が参加しました。交流は日本語で行われ、平壌市内の名所を一緒に訪れながら、互いの家族のことや学生生活について聞いたり、勉強の内容や将来の夢を語り合ったり、各々が交流を楽しんでいた様子でした。そして、日朝の学生が協力して『私たちの平壌』という冊子が完成しました。その内容は、訪問した平壌の名所をそれぞれの切り口から写真付きで紹介したもので、普通のガイドブックにはない学生ならではの視点も盛り込まれていました。これは日本の学生が日本からデジカメ、パソコン、プリンターを持参し、夜を徹して編集作業を行ったために帰国までに仕上げることができたという労作でした。さらに、別に作られた色紙には今回の大学生交流の実現に努力した関係者への感謝のメッセージも綴られていました。

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 平壌外国語大学の学生からは、「日本にも懐かしい人がいると思うと嬉しい」「いろいろと違う面もあるけれど、似た面もあると思うので、向き合っていこうと思う」という前向きな感想が寄せられました。日本語を学びながら、初めて日本人と会って話したという学生が多かったのですが、今回の交流を通して、日本に対する親近感が増した、日本との距離が縮まったと感じた学生が多かったものと思われます。それに対して、日本から参加した学生は、学生同士の交流を楽しんだものの、同時に違和感を覚えたという人がいました。それはいくら交流を積み重ねても埋められない溝みたいなもの、政治的なことや歴史的なことにまで容易に踏み込んで聞くことができないというある種の壁を感じたからのように思われます。訪問団の団長が帰路の振り返りで述べられた「国際理解とは違いを知ること」「その違いを超えることは容易ではないことを理解すること」をまさに実感した学生たち。日朝交流の難しさを肌で感じた学生たちの顔つきが出発前とは見違えるほど逞しく変わっていました。

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 10年ぶりという日朝政府間協議が断続的に行われている状況の中での訪問となりましたが、平壌側は好意的に受け入れてくれているとの印象で、絵画展を現地メディアが大々的に報道したことからも、日本との関係改善に前向きであるとの姿勢が顕著に感じられる訪問となりました。これまで「ともだち展」は政治状況に左右されながらも、絵画を通じての市民レベルでの地道な交流を続けてきましたが、こうした地道な取り組みが間違っていないこと、その積み重ねが平壌側関係者との厚い信頼関係となり、今回の絵画展実現にもつながっていることを強く感じました。それぞれの考えは違っていても、絵画交流を通じて日朝関係がより平和で友好的なものになることを強く願っていることには変わりないと思います。

 この「ともだち展」に参加した子どもたち、さらに日朝大学生交流に参加した大学生たちがこの経験を今後の人生に於いてどのように活かしていくのか。今からとても楽しみです。