平和人権/アジア
平和人権/アジア2026/08/01ツイート
「こんにちは」の挨拶が平和への第一歩~韓国NGOの30年
日本の国際協力のNGOが北朝鮮との関わりを持ったのは、1995年に朝鮮半島を襲った大雨洪水被害への人道支援が発端でした。北朝鮮ではその後、農地からの収穫が見込めず、飢餓が発生するといった状況が報じられました。
韓国においても、敵対し憎悪の対象である「北韓」であろうと、そこに暮らす人びとの基本的な生存権は守られなければならないと、立ち上がった人たちがいました。当時設立されたNGOは次々と30周年を迎えています。
アーユスが参加する「KOREAこどもキャンペーン」が長年パートナー関係にある(社)オリニオッケドンム(肩を組み合う仲間、の意)もそのひとつです。
当時の韓国社会では支援をする以前に、北朝鮮は「敵ではない、いつかは出会う未来のともだち」が暮らす場所だと知らせることから始める必要があり、キャンペーン「アンニョン、チングヤ(こんにちは、おともだち)」を展開、子どもたちが「友人に挨拶をおくる」絵を2万枚も集めたといいます。大人たちは、政治的な先入観で線引きをしない子どもたちから、平和や共存を学びました。
この6月、30周年を迎えて記念式典が開催され、KOREAこどもキャンペーンも参加しました。
会場となったソウル・汝矣島(ヨイド)の国会議員会館では、絵画展Drawing Hopeが同時開催され、分断と対立を乗り越えたいと願う、世界各地から集まった絵が120点ほど並びました。この絵画展は既に賛同者たちによってアメリカや北アイルランド、南アフリカなどで開催されてきましたが、今回新たにパレスチナやスリランカ、アルメニア、リトアニアなどからも作品が寄せられ、更に広がりを見せていました。
各地から参加したDrawing Hopeの参加メンバーは、国会議員やメディアを含めた来場者に、絵を描いた子どもたちの背景を説明。紛争、内戦、移民排斥…厳しい分断や対立を経験しているからこそ、「希望」を描き(Draw)・引き寄せたい(Draw)と願うその熱量に、私たちも圧倒されました。
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国会議事堂脇にある議員会館での展示会。ここで30周年記念式典も開かれた |
Drawing Hopeに参加するコロンビアのメンバーが、記者に絵の作者のことを説明している |
いま韓国では、決して良好とはいえない南北関係をどう改善していくかが大きな課題です。2023年に朝鮮民主主義人民共和国は、二つの国家を主張し、「統一」に関する憲法の規定を削除する改定をおこないました。これに対して現韓国政府は当面、平和共存のための対話を再開できるよう進める意向です。
では、市民団体はどのような道を模索しているのでしょうか。
過去30年、南北の対話を深化させようとする道のりは平たんではありませんでした。オリニオッケドンムも関係の良好なときには頻繁に訪朝し、物資支援だけでなく栄養改善の施設や病院を建設し、医師の研修をおこなったりもしました。一方で、いったん関係が悪化すると支援予定だった貴重な医薬品が港に留め置かれ、泣く泣く処分せざるをえないような状況に追い込まれることもありました。
しかしどんな難しいときにも、オリニオッケドンムは平和の種を蒔き続けました。韓国の学校で平和学習の出張授業をたゆまずおこない、分断が日常化した現状をフィールドワークなどで把握しながら、対立と分断の現状を「なんとか改善しなくては」と考える仲間を育て、繋いできたのです。
それは、参加する人たちに希望を与える取り組みでもあります。
だからこそ、Drawing Hopeへの賛同が世界に広がっているのでしょう。
30周年の式典のなかでは表彰があり、ミシェル・ウィンドロップ在韓アイルランド大使が「平和賞」を受賞しました。北アイルランド紛争と和平プロセスを経験した当事者として、朝鮮半島の対立解消を心から願い、Drawing Hopeに深く共感する協力者です。彼女の尽力もあり、昨年11月にはNY国連本部での展示が実現しました。
また式典の最後には、3名の協力者が舞台にあがり「未来の夢」を語りました。Drawing Hope展がピョンヤンで開催される、という夢が舞台上で紹介されたときには、会場に大きな共感が生まれました。
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初の「オッケドンム平和賞」の受賞にあたり、舞台で挨拶をするウィンドロップ駐韓アイルランド大使(左) |
「ニューヨークの国連本部で飾られた私の自画像が、ピョンヤンでも展示されることが私の夢です」と語る子ども(中央) |
いま、分断と対立に満ちた世界のなかで、私たちは不信感ばかりを募らせがちです。
しかし、初めて知り合う人、敵ではないかと思っていた人と挨拶を交わすだけで、私たちの心には、わずかであっても温かさと安心が灯るのではないでしょうか。
原点であった「アンニョン、チングヤ」のフレーズは、30年を経てますます厳しくなっているこの時代を切り拓く原動力にもなりうると感じました。(〒)









