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国際協力の現場から

国際協力の現場から2019/06/20

ピースデポ:NPT再検討会議の準備委員会に参加


各国代表に向けて、韓国のNGO「参与連帯(PSPD)」の代表者が発言している。2019年5月1日、ニューヨーク国連本部信託統治理事会会議場。

各国代表に向けて韓国NGO「参与連帯(PSPD)」の代表者が発言している。2019年5月1日、ニューヨーク国連本部信託統治理事会会議場。

 

 2019年4月29日から5月10日にかけて、2020年NPT(核不拡散条約)再検討会議に向けた第3回準備委員会がアメリカのニューヨーク国連本部で開かれました。ピースデポからは研究員の平井(筆者)がこの一部(5月1日~5日)と各国政府やNGOのサイドイベントに参加しました。

 今回は私にとって初めての渡米と国連の会議への参加でした。往路の飛行機では緊張であまり眠れず、現地の空港に到着してからホテルに着くまでに少し道に迷ったりして、不安でいっぱいの初日でした。

 不安な気持ちでスタートしたニューヨーク滞在でしたが、電車で迷った時、近くの女性に助けを求めると、快く助けてくれて、「一人旅は不安ですよね」と声をかけてくれたり、その周りの乗客も電車の乗り換えについて教えくれたりして、ニューヨークの人々に大いに助けられた滞在でした。

 国連本部は、私のようなNGO参加者だけではなく、観光客も多く来場していました。本部内にある各国の政府代表が座るフロアに一般参加者が自由に出入りすることもでき、市民との間に壁がなく、開放的な印象を受けました。会議では、米国がイランとロシアに向けて批判的な発言をし、イランとロシアが米国へ批判で返し、米国がまた応戦するというような、国際社会での国同士のぶつかり合いの現場を直接見られ、貴重な経験をすることができたと思います。

超党派の議員連盟である「核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)」が国連本部内で開いたサイドイベントの様子。2019年5月1日、国連本部第3会議室。

超党派の議員連盟である「核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)」が国連本部内で開いたサイドイベントの様子。2019年5月1日、国連本部第3会議室。

以下にNPT(核不拡散条約)と今回の準備委員会の内容を紹介します。

 そもそもNPT(核不拡散条約)とはどういうものでしょうか。NPTは68年7月1日に署名開放され、70年3月5日に発効しました。日本は70年2月に署名、76年6月に批准しています。核軍縮、核不拡散、原子力の平和的利用がNPTの3本柱です。条約ができた時点で既に核兵器を保有していた米、露、英、仏、中の5か国を「核兵器国」と定め、「核兵器国」以外への核兵器の拡散を防止することが目的ですが、各締約国が誠実に核軍縮交渉を行う義務を規定(第6条)していることも重要です。条約は95年5月、無期限延長が決定されました。

 NPTは5年に1度、再検討会議を行い、間に通常3回の準備委員会を開催します。NPT再検討会議は、加盟国の代表がNPTの条項に照らして現状を協議し、改善策を議論する会議です。

 2020年再検討会議第3回準備委員会は、2019年4月29日午前10時(現地時間)、マレーシアのサイード・モハマド・ハスリン・アイディ大使を議長として開幕しました(ピースデポ発行:『核兵器・核実験モニター569号』に関連記事掲載。http://www.peacedepot.org/nmtr/569cover/)。会場は国連本部内の信託統治理事会会議場で、政府関係者が討議する会場の後方上階に設置された席で一般の参加者が傍聴できるようになっています。(写真参照)

 今回は2020年NPT再検討会議に向けた最後の準備委員会でした。NPTは2020年に条約発効50周年、無期限延長25周年を迎えます。さらに、2020年はヒロシマ・ナガサキから75年を迎える年でもあります。2015年に行われた前回の再検討会議では、核保有国と非核保有国の協議が決裂し、最終文書の採択に至らないまま閉会となりました。2020年の再検討会議を成功させるために、今回は重要な準備委員会でした。

 議長が提案した2020年再検討会議に向けた勧告案を巡り多くの議論がなされましたが、核兵器国と非核兵器国の溝は埋まることなく、勧告の合意に至らないまま閉会しました。特に、米国は、核軍縮へ向けての安全保障環境を整えることを優先させる新イニシアチブ(「核軍縮のための環境を創る」)を提案し、議長案に強い拒否の意を示しました。また、日本を含む多くの同盟国が米国側につき、2020年NPT再検討会議への不安が残ったままとなってしまいました。

 このままでは、NPT第6条を根拠に核軍縮を推進していくという道が困難に直面する危険があります。2020年NPT再検討会議までの残された時間で、1995年以来、蓄積されてきたNPT合意の履行を求めていく努力の強化が不可欠です。とりわけ唯一の戦争被爆国である日本は、核兵器の役割を減じ、核兵器依存政策から脱する道を歩む選択をし、2020年再検討会議に臨むことが強く求められています。