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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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国際協力の現場から

国際協力の現場から2018/07/06

FRJ:難民の日を迎えて


 6月20日は国連が定めた世界難民の日でした。
それに合わせて、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が、昨年1年間の世界の統計(グローバル・トレンズ2017)を発表したので、日本の状況と合わせてご紹介したいと思います。

 2017年末時点で、紛争や暴力、迫害により、世界中で避難を余儀なくされた人の数は6850万人で、その数は5年連続で増加しました。うち2017年に新たに、もしくは、再び移動を強いられた人は1620万人で、この全体数の増加について、UNHCRは、そのほとんどが開発途上国で発生しており、中でも、コンゴ民主共和国の危機、南スーダンの紛争、ミャンマーからバングラデシュへのロヒンギャ難民の移動が大きく影響していると指摘しています。

 6850万人のうち、他国に逃れた難民の数は2450万人に上り、UNHCR統計史上、単年で最大の増加となりました。2450万人の5分の1強の549万人がUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の保護を受けているパレスチナ難民です。残り1990万人が、UNHCRの支援対象にある難民ですが、そのうち3分の2は、シリア、アフガニスタン、南スーダン、ミャンマー、ソマリアの5カ国からの難民です。一方、6850万人のうち、庇護申請者は30万人増えて310万人、国内で移動を強いられている国内避難民は30万人減少して4000万人でした。

 命や安全が脅かされている人々に対して、世界は有効な解決策を打ち出すことができているのでしょうか。2017年、約500万人が帰還しましたが、かえってより厳しい、不安定な状況に陥ってしまった人もいるとUNHCRは指摘しています。他国に逃れ、帰還の目処が立たない難民については、最初に避難した国や、そこから移動して第三国での保護が必要ですが、大量の難民を受け入れている国は決して多くはありません。第三国に定住できた難民の数も、2016年に比べ40%減り、2017年は約10万人です。

 また、難民の約85%は、開発途上国に受け入れられています。トルコは、350万人で、その多くがシリア難民です。レバノンでは2016年に引き続き、人口の6人1人が難民という状況です。難民認定申請数も、その半数は開発途上国で行われたものです。多くの難民は隣国に逃れるのがやっとであり、経済的に決して豊かでなく、社会資源も限られているそうした国々での受け入れは、限界に達しています。

 2017年、日本では、19,629人が新たに難民認定申請を行いました。最初の1次審査で不認定となり、不服申し立てをした人は8,530人に上り、いずれの数も増加しました。一方、手続きを経て、難民として認定された人は20人で、2016年から8人減、人道配慮による在留特別許可を受けた人も45人で、2016年から42人減りました。第三国定住難民は、マレーシアから29人のミャンマー難民を受け入れ、これに加えて、国際協力機構(JICA)の技術協力制度や文部科学 省の国費外国人留学制度枠を活用したシリア人留学生数十名とその家族の受け入れが新たに進められました。シリア人留学生の数は5カ年で150人が予定されています。

 難民の受け入れについて、各国の足並みが分かれています。入国管理政策や国境管理が強化される中で、行き場をなくし、必要な支援や保護が受けられない人々がいます。UNHCRは、「2017年は難民の強制的な帰還、政治利用、責任転嫁などの事象が確認されており、不当に収容されたり、就労の機会を奪われたり、また、『難民』という言葉の使用さえ認められていない国もあることが確認されている」と指摘しています。

 多くを失いながらも、恐怖や困難を乗り越え、新しい場所で生活を立て直し、生き抜いてきた人々、生きようとしている人々がいます。難民について知り、考え、共に生きることは、今、私たちにとってどのような意味を持つのでしょうか。なんみんフォーラムでは、7月28日(土)に、映画『father カンボジアへ幸せを届けた ゴッちゃん神父の物語』の上映会を都内で企画しています。ぜひこの機会に、皆様のご来場をお待ちしております。(なんみんフォーラム事務局 檜山怜美)