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国際協力の現場から

国際協力の現場から2022/01/07

「脱軍備・平和レポート」12号を発行(ピースデポ)


 ピースデポは脱軍備・平和レポートを2カ月ごとに発行していますが、12号では12月に行われた国連総会第1委員会での核軍縮の議論を報告しました。今年の「核兵器のない世界に向けた共同の行動方針と未来志向の対話」(日本決議)は、NPT再検討会議で積み重ねられた合意の履行を軽視するもので、その意味で2017年以降の大きく後退した日本決議を踏襲したものでした。2017年の日本決議が多くの批判を受けたことで政府は若干の修正をしつつ、2019 年にその名称を変え、内容も大幅に変化させてきた経緯があります。以下に、その変遷をいくつかの例で見てみましょう。 

今年の日本決議は、前文4 節で 1995年、2000年、そして2010年のNPT再検討会議の「各最終文書に盛り込まれた誓約履行の重要性を再確認」しています。この点について2016年の決議では、前文ではなく主文3節において「1995年再検討・延長会議及び2000年、2010年再検討会議の最終文書で合意された諸措置を履行することを求める」としていました。

2000年のNPT再検討会議では、NAC諸国の努力により、核兵器国も巻き込んで「核兵器の完全廃棄への核兵器保有国の明確な約束」という文言が最終文書に盛り込まれました。日本は、この点を重視し、2016年決議では、主文第2節で「全てのNPT 締約国が第6条の下で誓約している核軍縮につながるよう、保有核兵器の全面的廃絶を達成するとした、核兵器国による明確な約束を再確認する」と明記していました。ところが、2017年決議から、NPT合意の文言をそのまま引用することを止めてしまいました。その点では今年の日本決議も同じです。しかし、先にみたように前文4節で「2000年合意履行の重要性を再確認」しており、まったく無視しているわけでもありません。また主文 1 節では「NPTの全締約国が…同条約の第6条を含むあらゆる側面における完全かつ着実な履行に尽力していることを再確認する」と第6条履行の重要性に触れています。

2000年のNPT最終文書には、加盟国は「安全保障政策における核兵器の役割を低減する」との合意が含まれていますが、今年を含めて決議のタイトルを変更した2019 年以降、日本決議に、この文言は存在しなくなっています 。2016年決議では、主文13節で「加盟国が、核兵器の役割や重要性の一層の低減のために、軍事・安全保障上の概念、ドクトリン、政策を継続的に見直していくことを求める」としていました。そして2017年、2018年決議では文脈を捻じ曲げつつも該当箇所を残していましたが、2019年から削除されるという経過をたどっています。最後に、2010年のNPT再検討会議合意では「核兵器のいかなる使用による壊滅的で非人道的な結末に対する深い懸念」を表明していましたが、日本はこの点でも、2017年以降「核兵器使用による壊滅的な人道上の結末を認識し」という文言を使い、表現が後退しています。

以上のように、脱軍備・平和レポート12号の発行過程で、核軍縮に向けた日本の姿勢が弱まっていることを学びました。

ドゥブルー達郎