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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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国際協力の現場から

国際協力の現場から2021/02/04

2020年11-12月活動報告(ピースデポ)


 会員向け情報誌『脱軍備・平和レポート』第6号を発行したほか、朝鮮半島の非核化合意履行監視プロジェクトで記事1本を発行しました。また、来年発刊予定の資料年鑑の作成に向けての準備や、団体ウェブページの更新作業を続けました。

 

『脱軍備・平和レポート』第6号の発行

 『脱軍備・平和レポート』第6号を12月1日に発行した。第6号では、10月24日に核兵器廃絶を目指す市民社会が熱望してきた核兵器禁止条約(TPNW)が来年1月に発効することが確定したことを受け、「核兵器禁止条約発効と核軍縮の今後」を特集した。

 特集ではまず、TPNWの特徴や成立の背景を解説した。TPNW は前文と全21 条から成り立っており、前文では「全廃こそが核兵器が二度と使われないことを保証する唯一の方法だ」とうたい、核兵器を非人道的で国際法上違法であると見なしている。米露英仏中の5 か国の核保有を認めている核不拡散条約(NPT)とは異なり、核兵器そのものを違法としている点や、核兵器を国家の安全保障の視点ではなく、被害を受ける人間の視点から見つめ直す「人道的アプローチ」と呼ばれる戦略を基に、核兵器の非人道性を強調する点に特徴がある。

 TPNW を推進する勢力の念頭には、すでに成立している生物・化学兵器や対人地雷、クラスター爆弾の禁止条約がある。これらの条約はそれぞれ、生物・化学兵器や対人地雷、クラスター爆弾は非人道兵器であり、違法であるという国際的な規範を形成することに寄与した。TPNW も発効することによって、条約に加盟しない核兵器保有国に対しても、核兵器を政治的・道徳的に使いにくくさせる効果が期待できる。

TPNW には、1970 年に発効し、核軍縮の基礎となってきたNPT の欠点を改め、補完するための役割がある。、NPT は5 か国だけに核保有を認める「不平等条約」であることから、核兵器国が条約第6条の定める核軍縮交渉義務を誠実に果たすことが条約の正当性を支える鍵となる。ところが、これまで核兵器国は核軍縮交渉を誠実に実行してきたとは言えず、多くの非核兵器国は不満を募らせてきた。米露は急激な核軍縮は安全保障を損なうとして、段階的に核軍縮を進める「ステップ・バイ・ステップ・アプローチ」を主張してきた。だがこのアプローチには、核軍縮に向けた時間軸や期限が定められていないという問題がある。そこで非核保有国が核保有国抜きでも核兵器を禁止してしまおうと提案したのがTPNW である。遅々として進まない段階的アプローチよりも核兵器の違法化を先行させることで、核使用を封じ、核保有国に対して「違法な核兵器をなぜ持ち続けるのか」と迫る戦略だ。

条約成立のもう一つの背景として、2010 年NPT 再検討会議での合意を基礎に、核兵器を安全保障の視点ではなく、被害を受ける人間の視点からとらえる「人道的アプローチ」の考えが非核保有国の間に広がったことがある。TPNW が前文で「ヒバクシャ」という言葉を使用し、彼らの苦痛に触れて核兵器の非人道性を強調していることは、人道的アプローチの広がりを象徴している。

 一方、 核保有国はTPNW に対して明確に反対の姿勢を示し、署名の意思がないことを明言している。さらに米国の「核の傘」に依存する日本や韓国、NATO 加盟国もTPNWに反対し、署名していない。日本政府はTPNW について、「核兵器廃絶という目標は共有している」ものの、「TPNW は日本のアプローチとは異なる」とする立場を取り続けている。

TPNW の発効が決まった今も、条約に参加する核保有国は1 か国もない。だが条約を後ろ盾に核兵器は違法であるという認識が広がれば、核保有国を核廃絶に向かわせる力となる。核保有国への圧力を強めるためにも、条約を支持する批准国や国際NGO は、次の目標として国連加盟国の半数を超える100 か国・地域による批准を目指している。

 特集と合わせた資料として、ピースデポが10月2日に外務省へ提出した要請書および、第75回国連総会における「日本決議」と「NAC決議」の翻訳を掲載した。

 第6号では特集の他に、時事トピックスとして米露の新START交渉、北朝鮮の労働党創建75周年行事、自衛隊と米軍の共同演習などを紹介したほか、平和に関する映画作品の紹介やピースデポ特別顧問のエッセイを掲載した。

 

 

朝鮮半島の非核化合意履行監視プロジェクト

 監視報告27号「市民の力で動けぬ政府を動かし、まずは朝鮮戦争を終結させよう」を発行した。27号ではまず、自衛と経済発展のための戦争抑止力として核兵器の保有を正当化する北朝鮮が、米国の脅威がなくなることを条件に核兵器を放棄する用意があることを繰り返し表明してきたことを確認し、核兵器のない朝鮮半島を実現するためには、米国の脅威や敵視政策の撤回が不可欠の条件となることを指摘した。そのうえで韓国の文在寅大統領が「終戦宣言こそが、朝鮮半島の完全な非核化と恒久的平和体制の扉を開く」と呼びかけていることや、韓国の350以上の市民団体が呼びかけている「朝鮮半島平和宣言」への署名運動を紹介し、国境を越えて協力する市民社会の声を、朝鮮戦争終結を決断するよう米国政府や他の関係国政府に届けることを訴えた。

 以上の監視報告は、以下のブログで読むことができる。

 https://nonukes-northeast-asia-peacedepot.blogspot.com/ 

 

その他

  • 4月に開始した交代制の在宅勤務体制を継続している。
  • 来年出版予定の年鑑書籍『ピース・アルマナック2021』に向け、掲載資料の準備などを進めた。
  • ホームページの改修に向け、業者との調整を継続した。