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国際協力の現場から

国際協力の現場から2017/12/19

JCBL : オタワ条約成立20年を迎えて-地雷問題の今-


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義足工房が再開した。(KNHWO提供)

オタワ条約成立20年を迎えて-地雷問題の今-

 1997年に対人地雷全面禁止条約(通称オタワ条約)が成立してから20年が経ちました。今回はオタワ条約成立から20年を迎えた地雷問題の今をお伝えします。

 その前に・・・JCBLのミャンマーでの地雷被害者支援を冒頭でお伝えさせてください。

 ミャンマーでの地雷被害者支援 ―クラウドファンディングを開始―
 JCBLが2017年度からミャンマーでの地雷被害者支援を始めたことは前回もお伝えしましたが、今回、この活動の資金調達活動としてクラウドファンディング(https://readyfor.jp/projects/jcbl-myanmar)を12月15日に始めました!

 協働団体の一つKNHWO(Karenni National Health Worker Oganization)の義足工房は、JCBLの支援を受けて11月に再開しました。義足を手にした被害者に話を聞いてみました。

義足を手にするUSawKaDoMhuさん

義足工房が再開した。(KNHWO提供)

義足工房が再開した。(KNHWO提供)

 1989年、陸軍のポーター(荷物運び)に従事させられていた時、地雷の被害にあい、片足を失いました。その後の人生は困難を極めました。私には7人子どもがいて、1人は障害を持っています。私が働けない間は妻と村人たちが生活を支えてくれました。村人は私たち家族のために月に25チャット(3円)ずつ寄付してくれました。本当に情けない気持ちでした。あれから28年、ようやく義足を手にしました。嬉しい気持ちでいっぱいです。これから何ができるか分かりませんが、今はとにかくこれまでお世話になった周囲の人たちに恩返しがしたい。そう思っています。

 地雷の被害は被害者自身だけでなく、家族やコミュニティにも及ぶことを痛感せずにはいられません。JCBLは義足の支援を単なるチャリティとしてではなく、支援を通じて、オタワ条約未加盟のミャンマーが条約に参加するようにプッシュしていきたいと考えています。

 この活動にぜひ力を貸してください。インターネットで簡単に寄付ができます。手続きをJCBL事務局が代理で行なうことも可能です。お気軽に事務局までお問い合わせください。

 クラウドファンディングはこちらをクリック
 JCBL事務局 電話:03-3834-4340 メール

 さて、ここでオタワ条約20年の話に戻します。冒頭お伝えした通り、今年オタワ条約が成立して20年が経ちました。政府軍による地雷の使用例は極めて少なくなりましたが、武力紛争によって地雷や不発弾による被害者は依然として生まれています。先日発表された最新の報告書『ランドマインモニター2017(注1)』を見ながら、現在の地雷問題や今後の課題についてご報告します。
 (注1) ランドマインモニター(Landmine Monitor Report)は、地雷禁止国際キャンペーン(ICBL)が毎年発表している地雷にまつわる情報をまとめた報告書。ランドマインモニター2017は、第16回締約国会議(12月18日~21日・オーストリア・ウィーン)の開催に先立ち、12月14日に発表された

2016年も被害者が増加-多くの市民、子どもが被害に-
 2016年に確認された被害者数は8,605人で、うち少なくとも2,089人が死亡しました。これは1999年に9,228人の被害者を記録して以降、もっとも多い人数です。被害者の78%が市民です。さらに、子どもの被害者数は、1999年に統計を開始して以来、過去最多となっています。

the-monitor.org/LM17

the-monitor.org/LM17

 

地雷対策支援の増加
 一方で、前向きな動きもみられました。2015年までは徐々に減少していた国際的ドナーからの地雷対策支援が増加しました。地雷除去、被害者支援、回避教育、保有地雷の廃棄、モニタリングとアドボカシーに対する支援です。さらに地雷被害国自身も自国のプログラムに支出しました。この結果、2016年に地雷対策に使われた資金の合計は全世界で約5億6,450万ドルに上り、2015年から4,000万ドルの増加となりました。

地雷対策支援額の推移(出典:ランドマインモニター2017)

地雷対策支援額の推移(出典:ランドマインモニター2017)

 地雷対策支援額の推移(出典:ランドマインモニター2017)

継続して行われている地雷除去活動
 2016年は170㎢の地雷原が安全な土地になり、2015年から大幅な増加となる232,000個の地雷が処理されました。また、2017年には、アルジェリアとモザンビークが地雷原の除去を終わらせました。全世界で地雷があると考えられる61の国と地域のうち、33がオタワ条約の締約国となっており、10年以内に除去を終わらせることが求められています。この中で除去期限内に除去を終わらせる見込みがあるのは4カ国のみ(チリ、コンゴ民主共和国、モーリタニア、ペルー)です。

地図上で赤色の濃い地域が特に汚染度が高い。緑色は除去が完了した地域。灰色はデータが得られていない地域。(出典:ランドマインモニター2017)

地図上で赤色の濃い地域が特に汚染度が高い。緑色は除去が完了した地域。灰色はデータが得られていない地域。(出典:ランドマインモニター2017)

 

非締約国による地雷の使用
 最近では新たに地雷が使用された例はほとんどありませんが、オタワ条約の非締約国であるミャンマーとシリアでは2016年10月から2017年10月の間に政府軍が地雷を使用しました。ミャンマー政府軍は対人地雷を過去20年間使用し続け、シリア政府軍は2012年から使用しています。政府軍ではなく非国家主体が簡易手製地雷を含む対人地雷を使用した国は9カ国(アフガニスタン、インド、イラク、ミャンマー、ナイジェリア、パキスタン、シリア、ウクライナ、イエメン)に上ります。「イスラム国(IS)」による簡易手製地雷の使用により、新たな被害者と地雷原が生まれています。

今後の課題
 JCBL代表の清水俊弘は「昨年に続き犠牲者が増えていることを深刻に受け止め、【新たな犠牲者0】に向けて、再び国際的な政治的意志を喚起する必要がある」と指摘します。現在、オーストリアのウィーンでは第16回オタワ条約締約国会議が開催されています。会議の内容などはJCBLホームページおよびニュースレターなどで報告していきます。

 ランドマインモニター2017の詳しい情報については、下記サイトをご参照ください。
Landmine Monitor 2017 landing page, including new maps