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国際協力の現場から

国際協力の現場から2014/03/25

ACCESS:母親たちを支えるフェアトレード


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バザー開始前、商品の数を数えたり、おつりの準備をする生産者の女性た

母親たちを支えるフェアトレード

 2月20日から3月13日まで、フィリピンに行って来ました。今回、特に印象に残っているのは、2009年からアクセスのフェアトレード商品生産プロジェクトに参加している女性、マリリンさん(37歳)です。フィリピン人には珍しい切れ長の目をした笑顔が魅力的なお母さん。いつも冗談で場を明るくしてくれ、話し合いにも積極的に参加する頼りになる存在です。

 農漁村ペレーズで生まれ育った彼女は、小学校卒業後に両親を失い、姉に支えられて生きてきました。10代後半で結婚して以降も生活は苦しく、以前は小さい子どもと夫を地元に残し、100キロ以上離れたマニラで住み込みの家政婦として働いていました。まとまった休暇がとれた時にしか家族に会えない、とても辛い日々だったそうです。

 そんな中、地元に、ココナッツ殻を使って手作り雑貨を生産するフェアトレードグループがあることを知ります。彼女は試しに研修生となり、みるみるうちに技術を身につけて、正規メンバーとして力を発揮するようになりました。今では、マリリンさん抜きでの活動は考えられないくらい、頼りになる存在です。「家族と一緒に暮らせて、自分も働いて収入を得られる。今の生活はとても充実しています。」と話していました。

 ペレーズを含むフィリピンの農村の多くは、ココナツを燻して乾燥させた「コプラ」という製品を作るのが主要な産業の1つです。しかし、多くの農民は自分の土地を持っていません。地主から借りた土地でコプラを作り、仲買人に安い値段で売ったあと、売上金の6割程度を地主に収めます。小作人として働ける場合はまだ良いほうで、漁に出る以外に定まった仕事がない人もたくさんいます。

 アクセスのフェアトレード事業は、そうした家庭の主婦たちに、働いて副収入を得る機会を提供しようと始まりました。しかし、日本で販売できる商品の数に限りがあるため、生産者の数をなかなか増やすことができず、現在のメンバーは5人だけです。

 今後の課題は、日本での売り上げを伸ばして生産者数を増やすこと、そして生産者グループを協同組合として自立できるようにしていくことです。小学校中退や小学校卒業レベルのお母さんたちですが、経営やデザイン開発、販路開拓などの実務経験を少しずつつんでもらい、NGOの支援なしでも自ら経営し、助け合いながら生活を改善できるようになって欲しいと思っています。

 家族と離れ離れに暮らさなくてもよいように、地域の同じような境遇の女性たちとつながり、母親としての悩みや苦労をわかちあいながら、支えあっていけるように。今年は、現地でフェアトレード事業担当の日本人スタッフを採用し、事業に込めた願いの実現に向けて新たな一歩を踏み出す予定です。(野田沙良)