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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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平和人権/アジア

平和人権/アジア2025/11/20

企業は慣習林を破壊し、私たちをゆっくりと殺している


企業は慣習林を破壊することで、私たちをゆっくりと殺している
「紙製品を取り扱う日本企業に対する調達方針の策定と人権DDの実施に向けた働きかけ」アーユスがソーシャルチェンジ支援事業で協力している事業の中間報告より

住民の断りもなく、慣習林が伐採されている。
以前から農地として使っているところで育てているトウモロコシが荒らされた。
集水域となる森が破壊されてしまったことで、住民たちが生活のために利用している川の水が濁るようになってしまった。
先祖の墓地がある場所も、企業がセキュリティゲートを設けたことによりアクセスすることができなくなってしまった。
集水域となる森が破壊されてしまったことで、住民たちが生活のために利用している川の水が濁るようになってしまった。

●事業の背景

住民たちが慣習的に利用してきた森が破壊されユーカリが植えられた

 日本は「紙」を通じてインドネシアと深い関係を持っていることをご存知でしょうか? 私たちが普段から使っているコピー用紙(印刷・情報用紙)やトイレットペーパーやティッシュペーパーなど(衛生用紙)が製品としてインドネシアから輸入されています。
 特にコピー用紙については、日本で生産されているものも含めおよそ3枚に1枚がインドネシア産です。インドネシア産コピー用紙のほとんどは、同国の二大製紙企業であるAPP(エイピーピー)社とAPRIL(エイプリル)社が生産しています。これらの企業は、長年にわたり天然林の破壊や土地紛争などの深刻な環境・人権問題を引き起こしてきたとして、国際社会から避難を浴びてきたという過去を持っています。
 JATANでは、これまでにこれらの企業とつながりを持つ日本企業に対して、現地での問題解決に向けた対話・提言を行ってきました。しかし、現在に至るまで大きな状況の改善にはつながっていません。最近では、これらの企業によるポジティブな取り組み(例えば「植林を通じた森の再生プロジェクト」や、独立した第三者機関による「認証制度」の取得など)ばかりが強調される一方で、現地での問題が不可視化されつつあることをわたしたちとしては懸念しています。
 ソーシャルチェンジ支援の事業では、これらの紙製品を取り扱っている日本企業を対象に、情報提供や公開アンケート調査を計画しています。この働きかけを通じて、対象とする日本企業が現地での問題を認識し、紙製品の調達方針を作成したり、リスク評価を実施したりすることで、サプライヤー企業に対して問題の解決に向けたプレッシャーとなる仕組みが構築されることを目指しています。

JATANの取り組み

 この8月には、ターゲットとしている二大製紙企業の一つであるエイプリル社の実態を確認するため、インドネシアの北スマトラ州を訪問しました。エイプリル社は、2015年に「持続可能な森林管理方針(SFMP 2.0)」を発表し、森林破壊の停止や地域コミュニティとの土地紛争の解決などを約束しています。しかし、現地での聞き取り調査を通じて、同社と資本的にあるグループ企業であるトバ・パルプ・レスタリ(TPL)社が、現在も多くの地域で先住民族の慣習地に対する権利侵害を続けている実態が明らかとなりました。
 詳しい状況はこちらからご覧ください。
  https://jatan.org/archives/11207
 直近の活動としては、これらの現地企業から紙製品を購入している可能性のある日本企業に対して、調達状況や問題への対応状況を把握するためのアンケート調査を計画しています。また、日本企業への情報提供の一環として、現地で問題解決に取り組むNGOを招へいし、企業向けセミナーを開催する予定です。これらの取り組みを通じて、日本企業にインドネシア産の紙製品が抱える環境・人権リスクを正しく認識してもらい、責任ある調達に向けた方針の採用を促すことを目指しています。
 企業への働きかけと並行して、より多くの方にこの問題を知っていただくため、特設ページ「メイド・イン・インドネシアの真実ー熱帯林を破壊してつくられる紙製品ー」を作成しました。インドネシアの紙パルプ産業がこれまでに引き起こしてきた森林破壊や人権侵害の歴史についてわかりやすくまとめています。ぜひ、一度ご覧いただければ幸いです。
 https://paper.jatan.org/