平和人権/アジア
平和人権/アジア2020/07/01ツイート
【街の灯トーク#2】より厳しい人たちへ届くように〜南アジアでの経験から〜④
5Gでは移らない:正しい情報を伝えるために活躍するコミュニティラジオ
寺西 では、後半はコミュニティラジオを通じた情報発信について小松さんからお話を伺いたいと思います。 コミュニティラジオは一般によく聞かれているのですか。
小松 そうですね、ネパール、バングラデシュともにラジオはよく聞かれています。特にネパールではコミュニティラジオが発達していて、各地方に必ずコミュニティラジオ局があります。FM放送ですね。読み書きができない人や、テレビや新聞にもアクセスのない人が多くいますので、ラジオは大切な情報源です。今は携帯電話があれば、ラジオという機械がなくても聞くことができます。そういう中、コミュニティラジオのネットワークでアマルク(AMARC)という組織が、アジア・太平洋地域のコミュニティラジオを通じてのCOVID-19のキャンペーンを提案してきて、一緒にやろうということになりました。私たちは、その中でネパール・バングラデシュで活動しているコミュニティラジオへの協力をしています。
寺西 このキャンペーンには、13カ国50局が参加しているそうですが、例えば、ネパールには何局あるのですか。
小松 正確な数字は把握していないのですが、200局くらいのラジオ局があると思います。
寺西 それは使っている言語も違うのですか。
小松 特にネパールは多民族国家なので、言葉も文化も違う人が暮らしているため、地域によってそれぞれの民族の言葉で放送しています。このキャンペーンでも、伝えるメッセージは同じですけれども、それぞれの方言や民族の言葉で情報を伝えようとしています。
寺西 100以上の数があると聞くと、きめ細やかな情報が入ってくるというイメージがありますね。実際にはどんな情報を発信しているのですか。
小松 アマルクが作っているウェブサイトをご覧いただければと思いますが、ウイルスについての情報だけでなく、間違った情報もいろいろあるけれど、本当はこうなんだよというのを伝えています。
たとえば、にんにくを食べると感染しないとか。これはネパールに限ったことではなくて、WHOが発信している情報のひとつです。こういった情報がぱっと広がることがあって。
寺西 勝井さん、こういった噂を聞いたことがありますか?
勝井 にんにく、もしくはウコンを食べましょうというのを、ある村で村長さんが公式に発表したというのは聞いています。
寺西 体に悪いものではないけれど、予防にはなりそうにないですね。他にどんなものがありましたか。
小松 蚊がコロナウイルスを媒介するとか。5Gが感染を広げるとか。これはちょうど5Gのサービスが始まったところだったというタイミングもあったと思います。こんないろんな流言飛語が広がって、それは違うんだよと伝えていきました。
寺西 COVID自体の知識も、噂で伝わるよりは、一様に統一した情報が伝わることが大切ですよね。あとはどんなメッセージが?
小松 ラジオでは、長いものより短い30秒とか1分とか短いメッセージを繰り返し流すことで正しい情報を伝えていこうとしています。たとえば、コミュニティヘルスワーカーと呼ばれる保健の知識を普及させるためのボランティアが、自分自身をどう感染症から守るかということ。あるいは差別偏見をなくそうということ。また感染拡大時期にはどうしても人権が侵害されることが起きるので、それをいかに守るか。また、隔離状態に置かれる人が出てくる中で、性暴力が発生する危険性があるのをいかに防ぐのかといったことを、テーマごとにメッセージを作って、それぞれの言葉で伝えています。
寺西 大切な仕事ですが、ラジオ局自体の運営も大変ですよね。日本では番組をつくれず、再放送を増やしてつないでいる感じがありますが、みなさん放送局に集まって番組を作っていらっしゃるのですか。
小松 全員が同じように出勤するのは難しいので、スタッフの数を制限しながら活動していますし、それぞれのラジオ局の経営も厳しくなっていると聞きます。というのはラジオ局は、番組を作って放送し、そのスポンサーからの収入が主な収益源になるため、番組自体を新たに作るのがストップすると収入が絶たれていくからです。このキャンペーンも番組を作っていくのと同時に、我々が資金を提供して番組を放送してもらっているので、ラジオ局の経営の助けになっている面もあります。
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