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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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平和人権/アジア

平和人権/アジア2020/07/01

【街の灯トーク#2】より厳しい人たちへ届くように〜南アジアでの経験から〜⑤


だからこそ続けたい:今ある課題は、コロナ禍の前からあること。

寺西 今後、このコミュニティラジオのネットワークでの活動を広げていく予定はありますか。

小松豊明さん。背景にあるカラフルな布は、ネパールのミティラーアートというもの

小松 このコミュニティラジオのキャンペーンは、最初は数カ国で始めたのですが、すでに13カ国に広がっています。今後も広がっていくと思いますし、伝えていく内容も、時間が経つと必要な情報も変わっていきますので、新たな情報を伝えて続けていく予定です。
 それから我々としては、ネパールでは洪水対策、それ以外にも児童労働をなくそうという活動を、そしてバングラデシュではサイクロンの事業など、いろんな活動をやっていて、それぞれの現場で課題が大きくなっています。
 今、さらに実施を検討していることがいくつかあって、例えばネパールだと、ストリートチルドレンや児童労働の現場にいる子どもたち、あるいはその家族を対象にした食料配給も行なおうとしています。
 また、バングラデシュの教育活動の現場では、学校からドロップアウトしてしまう先住民の子どもたちを対象にした活動をしているのですが、今回のことをきっかけに生活も厳しくなっていく中で、学校が再開されたあとも、子どもたちが学校に来なくなってしまうんではないかという懸念があります。そういった子どもたちに対する教育支援も予定しています。
 それから、バングラデシュの貧困世帯や障害者がいる家庭への現金支給。今日はあまり話していないのですが、バングラデシュは、感染者数がものすごい勢いで増えています。6月7日の時点で6万人を超えています。一日1000人を超える感染者が確認されているためになかなかスタッフも自由に動けず、広く食料配給も難しい状況があるので、たとえば携帯のアプリを使用した送金システムを活用して現金を送ろうと、いろいろ工夫を凝らしながら活動を考えています。
 それからもうひとつ、帰国した人たちの収容施設に関する課題が増えてくるだろうということで、こういうことへの対策も検討しているところです。

寺西 課題がまだ山積みですが、日本の中でも大変だ大変だと、自分の身の回りのことばかり気にするようになっているなかで、こうやって続けてきたネパールやバングラデシュなど、海外での活動について訴えていく苦労はありますよね。

小松 日本でも同様の課題が浮上してきていますが、コロナの問題が発生する前からあった課題がさらに顕著に現れてきているのが、ネパールやバングラデシュの貧困層が直面していることです。我々が普段からやってきたことも、今だからこそ継続していかないといけないし、新たに発生した課題についても対応しないといけない。今だからこそ海外協力が必要なんだと訴えています。

寺西 国際協力の団体はどこも大変で、外に出られないし、帰ってくることもできずにいます。勝井さんは帰って来られないほうの立場ですが、現場になかなか出られない苦労や、もどかしさを感じることはありますか。

ネパールから参加してくださった、勝井裕美さん。ネット環境が不安定な中、お話くださいました。

勝井 特に隔離施設の様子などは、現場のスタッフに聞いても、なんていうのかな、彼らもどの視点で何をどうみるべきか、ポイントを掴みきれずにいます。ネパール政府もしっかりした隔離施設の方針を示せていないなか手探りでやっているので、何が問題になっていくのか、今後どうなっていくのか読むのがすごく難しいと思うんですね。私自身、現場でわかること感じられること、その場で集められる情報がとても多いので、それができないのはすごくもどかしい。ただ、一方で毎日うちのスタッフとオンラインで会議して情報を共有しあえること自体は、思ったよりもできていると思います。

寺西 そういう手段がネパールの中でも活用できているのはすごくよかったですよね。
 では、質問をいくつか受けていきたいと思います。

(質問)新型コロナウイルスの状況下で、国際NGOだからできることはどのような活動でしょうか。逆に国際NGOでは活動が難しいことはありますでしょうか?また、他の国際NGOでネパールでの緊急救援などを実施しているところはありますか?

勝井 様々な世界の情報を提供できるのは、とても大きいと思います。ただ一方で、ネパールはNGOの活動を政府が管理したがる国でもあって、自由に自分たちがしたい支援をすることはできません。食料配布にせよ、医療物資の配布にせよ、すべてネパール政府の許可を得て自治体とコーディネートする、もしくは自治体や地方の病院に寄付をしなさいといったルールがあります。
 ただ、それをするには一定程度の資金が必要です。それほど大きくない国際NGOは、普段であれば人によるソフトの支援をするところですが、今回はそれができないのでなかなか動けていない印象があります。

(質問)日本国内の事業(広報やクラフトリンクをなど)への影響はどのようなものがありますか?

小松 ひとつ大きいのは、「ステナイ生活」という名前で、はがき、切手、古本、CDなど家庭でいらなくなったものを集めて換金して、活動資金にして役立てるという事業を進められずにいることです。おかげさまで物は届くのですが、その仕分け作業に参加してくださるたくさんのボランティアの人たちに事務所に来てもらえません。ハガキを郵便局に持ち込んで切手に替えることも、郵便局が不要不急なものは持ってこないようにと強い指示を出していて持ち込みもできない。作業が滞っています。
 また、寄付や助成金も我々の活動資金の重要な部分ですが、それらにも影響が少し出てきていて、財政上の厳しさも出てきています。

寺西 これからやらなくてはいけないことは多いので、がんばりたいところですね。緊急救援募金はこれからも集めていかなくてはいけませんね。

小松 そうですね、先程申し上げたように、これからやらなきゃいけないこと、計画していることがあるので、緊急救援募金を募っています。シャプラニールと検索していただければ、すぐにたどり着けると思いますので、ぜひご協力ください。

寺西 シャプラニールさんのウェブサイト、ぜひご覧ください。勝井さんもブログにいろいろ書いていらっしゃいます。
では、お二人から最後に一言ずつお願いします。

小松 今だからこそ海外協力が必要ということを、いま一度皆さんにお伝えしていきたいと思います。ぜひ周りの人にも、今日聞いたお話をしていただければと思います。

寺西 国際協力NGO同士でも意見交換しながら、どうやって今まで自分たちが取り組んできたことに関心を持ち続けてもらうか、世界的な問題でもあるので日本のことだけでなく、海外との関係も考えながら過ごすための連携も考えていきたいですよね。

勝井 本当に。ネパールにいて、現場になかなか行けなくて、でも何かしたくて、本当にしたくて、でもお金がないからできないというのは、本当に悔しくて悔しくてたまらないんです。私ができることなんて本当に少なくて、こうやってみなさんにお願いすることくらいしかできなくて歯がゆいのですが、それでもお願いさせてください。

寺西 本日はほんとうにありがとうございました。一時間という短い時間でしたけれど、ご参加いただいたみなさんも、ありがとうございました。