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平和人権/アジア

平和人権/アジア2019/03/26

ミャンマー訪問記3:ミャンマーで感じる時間の流れ方


ティラワ経済特区を囲む道路沿いで働く人たち

●マイクロ・ファイナンスの課題 
18burma8 ティラワの近くで、Sayadaw U Sandawara師という僧侶に会った。彼は、近隣の地域で長年にわたり、マイクロ・ファイナンスのプロジェクトに取り組んできている。その実績を買われて、ティラワのZone Aにおける生計復興事業(IRP)、つまりマイクロファイナンスに関わるようになったそうだ。
 彼は、ティラワの移転住民には、マイクロファイナンス事業は時期尚早という意見のようだ。住民が融資を得て事業を始められるほど、生活環境が整っていないというのが理由。共有地の課題もその1つだろう。
 U Sandawara師は、これまでにマイクロファイナンス事業を他地域で行って一定の成果をあげたというが、地域開発の視点が欠けている場合や、借りられるからと言って上限いっぱい不要なまでに借りる人が出た場合は、失敗する可能性があると指摘された。土地を失い、それまでの生計手段を失った人たちは、1日でも早く収入を得る手段を確保したいだろう。しかし、それができるためにも、ただ単にプログラムを作るだけではなく、それが実践できるような環境が整うこと、つまり補償がされることは重要なのだ。

●ズレを感じる
 ティラワ経済特区、2400ヘクタールという広大な土地の上に造られつつある。工事が終了したところ、今工事中、まだ手つかずの土地とあるが、それにしても広い。取り囲むようにできた道路では、地元の人らしき労働者が働いていた。
 たぶん、それまで行き来できた場所が分断され、大回りをしないとたどり着けなくなったんじゃないかなとか、農業が中心だったのが賃金労働に変わることで、生活スタイルも変わっていくんだろうなとか、あの地域で起きつつある変化の大きさを想像すると、思考が止まりそうになる。私も田舎育ちだから、町に工場ができ、整備された道路が通ると、わくわくしたことを覚えている。しかし、今の故郷が経済的に潤っているかといえば、決してそんなことはない。雇用先があるのは重要だが、それだけでは地域は息づかない。そして、ティラワは広大過ぎる。広大過ぎて、大切なものを分断し、見えなくさせているような気がした。
 それまでの時間の流れ方と、経済特区での時間の流れ方の間には、大きなズレがあるんじゃないだろうか。
 そこにミャンマーの企業が参加すれば、また違った風景になってみえてくるかもしれない。そして、そこでつくられたものが、地域やミャンマー国内で消費されるものであれば、感じたズレも小さくなるかもしれない。(M)