文字サイズ

特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

会員になるには

平和人権/アジア

平和人権/アジア2015/09/15

平壌で絵画交流と日朝大学生交流を実施


 2015年8月21日から29日まで、「南北コリアと日本のともだち展」(以下、ともだち展)の訪問団の一員として平壌を訪問しました。今回は、8月20日に軍事境界線付近で銃撃戦が起こったのをきっかけに朝鮮半島の南北間で緊張が高まる中での訪問となりました。平壌に到着早々、受け入れ団体から、軍事境界線に接する前線地帯で8月21日より準戦時体制に入ったことが伝えられ、所作行動に充分に気をつけるようにとの注意喚起があったことから訪問メンバーに緊張が走りました。

CIMG1554 のコピー 2    CIMG1630 のコピー 2

CIMG1489 のコピー 2    CIMG1514 のコピー 2

 今回の訪問の主な目的は、小学校での絵画交流と日朝大学生交流を成功裏に終えること。先行きが不透明な中での訪問スタートとなりましたが、受け入れ団体の寛大な配慮から、全体を通して訪問の目的はほぼ達成されることとなり、結果的には相互にとって良い交流の機会になったと思います。

 絵画交流は、「ともだち展」と15年以上の交流がある平壌市大同江区域にあるルンラ小学校で行われ、ともだち展関係者の指導のもと、同じ時期に訪問した日本の朝鮮学校の生徒とルンラ小の生徒が一緒に等身大の自画像を描きました。民族衣装のチマチョゴリを着た姿や、赤いスカーフを巻いた制服に国旗が描かれるなど、それぞれに特色のある自画像が描かれ、全員の前で披露されました。また日本に住む子どもたちが描いた絵にルンラ小の生徒たちがメッセージを書く時間も設けられ、一所懸命にメッセージを書く姿がとても印象的でした。この絵画交流は、同じく「ともだち展」と親交のあるチャンギョン小学校でも行われ、こうした絵画とメッセージは、来年2月に東京都内で開催される絵画展をはじめ、大阪や福岡等で行われるイベントでも展示される予定です。

CIMG1955 のコピー 2    CIMG1938 のコピー 2

 一方、日朝大学生交流は今回で4回目を迎えましたが、毎年交流の時間が増やされ、今年は3日間にまたがる充実したプログラムとなりました。日本人学生7名と交流したのは、平壌外国語大学で日本語を学ぶ上級生の学生11名。そのうち2名は訪問団の通訳として期間中ずっと同行してくれました。

 1日目の平壌外国語大学の訪問では、日本から持っていった日本語教育の教材や日本の大学生が朝鮮の大学生に読んで欲しいと選んだ書籍が寄贈され、1人ひとりが対面で自己紹介をしていく時間が設けられ、互いの距離が一気に縮まることとなりました。平壌外大の学生は日本語を何年間も勉強しながら日本人と会うのが初めてで、最初は緊張した面持ちでしたが、互いの大学生活の様子や趣味等を語り合うなど次第に打ち解けた様子が見られました。

CIMG1665 のコピー 2     CIMG1697 のコピー 2

 2日目は一緒にバスに乗って平壌市内の観光名所を巡るというツアー。朝鮮の歴史的な建造物やミニチュア等が展示された民俗公園を散策して歴史について語り合い、平壌名物の冷麺を食べながら食文化の談義を行い、地下鉄に乗車して平壌の交通事情などについて話しました。運動センターでは、一緒にトレーニングマシンを試したり、卓球で親睦を図るなど、交流を深めました。

CIMG1803 のコピー 2    CIMG1854 のコピー 2

 最終日は、平壌の郊外にある名勝竜岳山へのピクニック。初めはなだらかな坂道の連続で余裕をもって頂上に着けると思いきや、途中から断崖絶壁に設けられた急勾配の階段を上ることになり、日朝の学生が一緒に手を取り合いながら頂上を目指すことに。登り切ったときにはある種の達成感や連帯感のようなものが芽生え、互いの頑張りを讃え合うような光景が見られました。そして、頂上にて一緒に昼食を取り、その後日朝の大学生が入り交じったワークショップを実施。互いに相手に対してイメージ通りだった点と異なった点について話し、今後の日朝大学生交流をより良いものにするために何が必要かについて様々な意見を出し合いました。

CIMG2084 のコピー 2    CIMG2087 のコピー 2

 イメージ通りだった点については、双方から礼儀正しさや親切であること、相手をよく理解したいと思っていることなどが挙げられました。イメージと違っていたことは、日本の学生からは、朝鮮の学生が日本のアニメについて詳しく知っているのに驚いたとの声があった一方、朝鮮の学生から、日本の学生が思った以上にスポーツが下手で踊りも上手くないとの意見が出たのには、日本の学生は苦笑するしかありませんでした(卓球だけで判断されたのはどうかと思いますが・・・)。

 日朝の大学生交流をより良いものにするために必要なこととしては、以下の点が挙げられました。①学生がもっと勉強して相手の文化、歴史、慣習等について知ること、②今回の交流で経験したことを自国のより多くの人に伝えること、③相手の文化を体験する時間を持つこと、④身近な話をして互いの共通性に着目すること。他には、もっと交流の時間を増やして、例えば平壌以外の場所を訪問してみるとか、一緒にキャンプをしてはどうかといった意見も出されました。

 今回の大学生交流では、朝鮮の学生が一生懸命日本語で議論してくれたことに対し、日本の学生は時折相手の日本語を直してあげながら議論がスムーズに進むように気を配ったり、朝鮮語の歌を覚えて披露するなど、互いに相手の立場を尊重しながらできる限りのことをしようと努力していた点で大きな意味があると思いました。また、日本の学生が交流に参加した1人ひとりの学生に対するメッセージカードを用意し、朝鮮の学生に対するプレゼントや色紙などを準備して交流に臨んだのに対し、朝鮮の学生も自分たちで撮った写真を焼き増しして日本の学生たちにプレゼントするなど、思わぬ形で双方向のやりとりがありました。これはこれまでの大学生交流にはなかったことで、これまでの交流の積み重ねが生んだ成果であると思いました。日朝関係は政治的には厳しい状況が続いていますが、双方の大学生にとってかけがえのない同世代の友人を得たことは大きな財産であり、今後の両国の未来に向けて大きな希望になったと思います。

 「南北コリアと日本のともだち展」の訪朝は15回以上を数えます。その間、日朝関係が悪化しても継続して日本人の訪問を受け入れています。一方、日本は朝鮮の人たちの入国を認めていません。真の交流は、両国の人たちが何の制限もなく自由に互いの国を訪問しあい、交流できることから始まります。両国間には様々な問題が山積していますが、こうした問題の解決に向けては、まずは会って相手の立場を理解・尊重しながら対話を始めるというのが前提であると考えます。

 「ともだち展」は市民が行う小さな交流に過ぎませんが、15年以上にわたって地道に継続してきたこの取り組みは、両国間にまたがる巨大な「不信」という壁に小さな風穴を通して、それがいつの日か突き崩す原動力になるものと確信します。将来両国の関係が改善され発展する時代へと移行したときに、両国の市民同士が不遇の時代にも関わらず、それを乗り越えて友情を温め続けたエピソードとして長く語り継がれていくことになるでしょう。

 今回の訪問に参加した日本の大学生が今後の人生においてこの経験をどのように活かしていくのか、とても楽しみです。そして、この活動に少しでも多くの市民が参加できるように呼びかけ、活動をさらに盛り上げていきたいと考えています。

CIMG1543 のコピー 2   CIMG1896 のコピー 2