文字サイズ

特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

会員になるには

平和人権/アジア

平和人権/アジア2014/02/26

タイスタディツアー:タイに原発?


639x424

原発建設予定地と思われているところ。住民が知らない間に地質調査が行われていた。

タイスタディツアー:原発建設予定地を訪ねて

 2月16日の夜から21日の朝にかけて、タイへスタディツアーに行ってきました。今回は開発が地域に与えた影響と、地域によるHIV陽性者のケアと予防活動を学ぶことが主な目的。ここでは、なんと原発建設が予定されている地域を訪問した時の報告をお届けします。案内は、メコン・ウォッチの木口由香さん。メコン・ウォッチは昨年、福島の農家の方をタイに招聘し、原発が与える影響に関するシンポジウムを開催しています。

 タイ国のウボンラチャタニ県は、タイの中でも最も東に位置している県です。ラオスとカンボジアと接する場所でもあり、ベトナム戦争時代は反共政策の前線でもありました。

 この地域は、タイの中でも比較的貧しい地域ということもあり、住民の大半は農民、しかし農業だけでは生活が成り立たなくなり、多くはバンコクなどに出稼ぎに行っています。

 出稼ぎが多くなった背景には、不必要な開発の影響がありますが、これはパクムンダムの影響を受けた漁民たちの話をご参照ください。

 現在、ウボン県には原発建設の話が持ち上がっています。シリントンダムという大きな人工湖の傍が予定地で、そこから1キロほど離れた近くの村を訪ねました。

thaist2 最近は、タイの村を訪ねても、かなりコンクリートの家が増えた印象がありますが、この村は、高床式の家が多く、庭先には鶏が餌を求めて歩き回るという、数十年前のタイの村の印象を残していました。これから実をつけるマンゴーの木の下で、数人の男性からお話を伺いました。
 この村の住民の中には、シリントンダムが建設された時に移転してきた方もいます。今はダム湖での漁業や農業で生計を立てている人が多いそうです。ただ、やはり若い人たちの多くはバンコクなどに出稼ぎに行っています。

 2010年に原発建設の話が盛り上がり、既にその時から反対運動は続いています。でもやはり反対運動が決定的になったのは、2011年の福島第一原発の事故が起きてからとのこと。安全だから近くにあっても問題はないと言われ、また原発ができれば地元に仕事ができるとも言われていたそうです。周辺地域には振興金が配られるとも言われていましたが、住民が恩恵を受けることはなく、一部の権力者のみが推進にまわっている。日本の原発立地地域/予定地で耳にした話と同じような話を聞きました。

 反対運動の中心メンバーの1人Aさん(41歳)は、今の暮らしが経済的に十分とは言わないけれど、小さい時から住んで居るこの村から他の場所に行きたいとは思わないとのこと。またAさんは、原発ができれば仕事が増えると言われているが、小学校四年までしか終えてない村人にできる仕事が原発にはないだろうと思っているとも語っていました。彼らの技術力がどうかはわかりませんが、開発する側の甘言に翻弄されず、客観的に現状を判断している姿は素晴らしい感じたものです。

 私が、実家がやはり原発の近くにあるけれど、そのお陰で町が潤った印象はない、むしろ一度造ったために造り続けなくてはいけない、稼働させなくてはいけなくなっていると伝えたところ、やはりそうか・・・と。
 タイのこの地域の農民たちは、これまでダム開発などで移転を余儀なくされ、仕事を奪われ、政策に翻弄され続けてきた経験があるために、これ以上の新しい開発は不要だという気持ちを強く抱いています。最後は、タイ人、日本人共に「一度造ったら続けなくてはいけないから、とにかく造らない。造らないで済むように手を取り合おう」と連帯の気持ちを交わし合い、村を後にしました。(枝木)

639x424

自然豊かなタイの森。伺った時は乾期だったために乾いた印象でしたが、雨期になるとキノコや森の恵を豊富に頂戴できます。