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平和人権/アジア

平和人権/アジア2013/07/25

アジア農村部での水の問題 未来の水利用におけるNGOの役割1回目


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バングラデシュに設置した緩速ろ過の簡易水道

 日本の水の問題をあげてください、と言われたら、皆さんは何を思いますか? 「塩素くさいくらいしか思い浮かばない。。。そんなのはたぶん贅沢な要求で、問題とは言えないですね。直接飲める水道が全国に普及していてありがたいですね。」 で終わってしまう方が多いのではないでしょうか。私もそんな一人でした。

アジア農村部での水の問題

 私が、アジア砒素ネットワーク(AAN)のスタッフとなったのは、2002年のことです。AANは、アジア農村部の飲料水源である手押しポンプ式管井戸から砒素が出る問題に対応する活動をしています。私が参加した2002年当時、JICAとパートナーを組んで、砒素汚染のある郡での水供給事業をバングラデシュで進めていました。それまでAANは砒素被害のひどい村を見つけては、代替水源を作るスタイルを取っていましたので、初めて面的拡大に挑戦する事業でした。当時のメンバーは、「良い水を届けられれば砒素問題は解決する」と信じ、技術開発と代替水源の普及に主眼をおいて対策を進めていました。

 しかし、水供給は技術以外のところで難航します。作ってもすぐに使われなくなってしまうのです。必要に迫られ、徐々に、コミュニティ強化、行政支援、健康被害状況の把握、水文地質分野の事前適性調査の導入等、総合的対策に幅を広げ、その成果は政府との連携によって他の地域にも活用されるようになりました。また、同じ問題を抱えるインド・ネパールでも同様の手法を用いた砒素対策事業がAANのメンバーによって開始されました。2013年2月、この3ヶ国が集まって、活動の振り返りのためのワークショップ(*1)をしました。その結果、水供給を阻むものとして、3ヶ国に同様の課題があることを確認することができました。

1.慢性中毒への住民の意識 

 インドのUP州では砒素汚染のある地域すべてに代替水源が政府によって配布されましたが、使っていない人もいます。感染症予防のための行動は浸透していますが、飲料水に含まれる砒素によって数年後に癌を含む慢性疾患にかかることを説明しても、行動につながりにくいことが課題です。

2.役割を果たせない行政 

 3ヶ国とも政府は砒素対策を進めていますが、行政の様々な事情から、全住民への安全な水供給という責務を履行できない状態が続いています。

3.社会・経済的な問題 

 水道があっても利用者になれない住民がでているのは、カースト・宗教の違い、経済的問題、居住地の違いが関係しています。政府計画では住民数などを元に線引きをしますが、性差、宗教の差、経済状況等に配慮した水源計画・ルール作りの支援も求められます。

4.届かない適正技術 

 家庭用フィルター、コミュニティ型設備、簡易水道など、代替水源技術はほぼ確立されていますが、適切な水源を選択、導入、維持管理、水質検査をするシステムが整わず、適正技術が住民の手に届かない問題が残されています。

5.将来世代との格差 

もう一つの着目点は「将来世代との間の公正」。ガンジス流域では、人口増加・都市化に伴う生活用水の需要増加に加え、農業用・工業用の水使用が原因し、地下水枯渇が深刻化しています。地下水の収支を見据えた水利用計画を立てなければ、将来世代に地下水資源を残せなくなることが危惧されます。

 以上の共通課題が浮かび上がりました。(次回に続く)(石山民子)